二話め。目覚めと共に見た悪友が最悪なわけで
「おい、オーイ、起きろー」
誰だ俺を起こそうとする奴は。
大切な睡眠時間を取らないとお肌に悪いゼ?
「てめ、女にノックアウトされてんじゃねーよ」
呆れた声に俺は寝ぼけながら答える。
「ウルセー……俺の眠気を妨げるならお前をノックアウトしてやろーか、今の俺の幸せを味合わせる為に眠らせてやろーか」
「おまっ……結構元気じゃん!」
呆れた声すらも鬱陶しく思い、寝返りをうって声とは別の方を向いた。
「俺の下半身はいつも元気だこのヤロー」
「嫌、お前の下半身が元気なのはおかしい……」
なぜおかしいんだ? 俺の息子は毎日文字通りピンピンして……そういや何か痛いような。
しかし、その痛みよりも眠気が勝っていた。
「……」
それ以上男は何も言ってくる様子は無い。
全く、誰か知らねーが眠りを妨げやがって……。
手を頭の後ろで組んで枕にしながら再び安らかな眠りにつこうと。
した瞬間だった。
腹部に強烈な痛み。
「うぉぶほぁ!?」
面白い声が出た。
「やっと起きたかこの野郎」
「ぐぅぉぁぁぁぁぁああああ!!」
俺に何かしたであろう男が平静な様子で何か言っているが良く聞こえては居ない。
叫び声を挙げながらその場をゴロゴロと転げまわる。
マジ余裕無し。
慌てて起き上がり、お腹に乗った物を見た。
レンガ。
「てててててテメェ! 俺のプニプニお腹に何て事しやがんだ!!」
「ッフ! 毎日鍛えて無いからそうなんだYO!」
そう言ってのけたのは、美しいポージングを決めて筋肉を強調している悪友の一人だった。
何で上半身裸なんだコイツは。
「……あれ?」
俺は小さな声を挙げた。
教室の床で眠っていたようだ。
「やっと目覚めたか、世話やかすんじゃねーよ」
上半身裸の悪友が新たなポーズに切り替えながら、呆れた声を漏らす。
「……覚えてる」
鮮明になってきた。
そうだ、俺は素晴らしいボケを殺され、あの女に大事なマイサン!(下半身)を攻撃されたんだ!!
「男の弱点を狙うとは末恐ろしい女だぜ……」
「嫌、お前の筋肉も恐ろしいわ」
これ見よがしに筋肉を強調する友人は筋トレマニア。
筋肉をこよなく愛する悪友は高校生とは思えない美しい肉体をしていた。
しかしムキムキ過ぎてぶっちゃけキモイ。
「ッフ……俺の筋肉の恐ろしさわ誰よりも俺が知っているさ……」
やだこの子、自分に酔ってるわキモ!
「後お前はポージング決めながらじゃないと喋れないの?」
悪友は2、3秒に一回くらいの割合でポーズをかえている。
一分くらい見てたらコイツの全てが見れるんじゃないか?
「悪いな、これが俺のアイデンティティー!」
そう言いながら友人は背筋を見せ付けてくる。
「……」
若干引いた。
「……触っても、良いんだZE?」
あらこの子、俺が筋肉に見惚れてると思ってるわウザ!
「筋肉馬鹿、お前はちょっと黙っとけ」
そう言ってくれたのは別の悪友、髪を掻き揚げる仕草が素敵過ぎる言うなればイケメン野郎。
ムキムキ悪友が少し唇を尖らせる。
「ウルセー俺はお前にもっと腹筋を鍛えて欲しくてだな……」
「俺はお前なんかの体はいらねェ!!」
拙劣な俺の叫びは察して欲しい。
「オーライ、てめーの気持ちは解ったから立てオラ」
イケメンは俺に手を貸して立ち上がらせてくれる。
「で、どーすんだよ?」
筋肉野郎が立ち上がった俺に疑問符をブツける。
「どーするって何がだよ」
未だに筋肉を見せ付けている馬鹿に不振な目を向けながら疑問符を疑問符で返す。
「罰ゲームに決まってんだろーが」
答えたのは筋肉野郎では無くイケメン野郎だった。
あ? 罰ゲームが何だよ。
「提案したのは俺らだけどよ、ありゃ一筋縄じゃいかねーよ」
それに同調するように筋肉野郎もウンウンと頷いていた。
「あの女、俺の筋肉にも反応しねーんだよ」
「嫌、お前の筋肉はどうでも良い」
俺の変わりにイケメンが瞬時に突っ込みを入れてくれた。
ボケ側としてはあまり突っ込みを入れたくないので助かる。
……つまりこいつ等が言ってるのは罰ゲームを止めようか? という話。
実行できないのでは罰ゲームにならねーし、所詮遊び程度の罰ゲームだ、態々やる必要は無い。
そんな風に言ってる感じだ。
だけどよ。
俺は意味深にニヤッと笑ってみせる。
「この罰ゲーム最後までやらせて貰うぜ!」
イケメンと筋肉は少し不思議そうな表情をする。
「気に入ったぜ笑わない女」
イケメンと筋肉は俺の言葉に今度は呆れた表情を見せる。
一度気になったら俺は止まらない。
それが解ってる悪友達も無理に止めようとする気は無いらしい。
待ってろよ無愛想女め。
その鬱陶しい無表情面を最高の笑みに変えてやる。
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