表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/57

一話め。始まりは罰ゲーム

騒がしい教室の中。

今は休み時間。

高校生という職業柄、俺達は狭い教室という四角に詰め込まれて、何時間も固い椅子に座っている。

それで綺麗な姉ちゃんが目の前で踊っているって言うなら、喜んで何時間もいるんだけど。

何が有難いのか全く解らん様な、ご鞭撻を大人達から聞かされる。

円の面積だとか式の展開だとか、一体何の役に立つのやら。

そんな退屈を吹き飛ばすように休み時間は仲間達と思いっきり遊ぶ。

教室の、それぞれの仲間達が好きなように大きな声で笑い、騒ぐ。

俺が一番好きな時間で、一番楽しい空間。

そんな楽しい中で、たった一人だけ。

笑顔を見せていない少女が居たのに気付いたのは。


小さな悪ふざけがきっかけだった


ババ抜き。

机を三つ程合体させ、大きなテーブルを作り、真ん中には既に歴戦の勇士達が旅立ったのを示すであろう無造作に積まれたトランプの束。

ゲームは既に山場へと向かっていた。


罰ゲームを目の前にしての緊張感……たまらない。


五人の内、三人は既に上がり、ニヤニヤと上から目線でこちらを伺っている。

残るは俺を入れて二人。

目の前の野郎は残り一枚。

俺の持つのは残り二枚。

片方は嘲笑うかのように笑うピエロのジョーカー。

 片方はあらま可愛らしいハートのカード。

 まるで愛を示すかのように……そう。ラブアンドピース!


 信じるゼッ!ブラザァー!!

 なんてトランプに熱い思いを託す。

 兄弟なんて別にいないんだけども。


 特に根拠も無く、対峙する悪友にニヤッと笑って見せる。


 すると悪友も同じようにニヤッと笑う。

 多分こいつも根拠は無いんだろう。

 悪友が手を伸ばす。

 罰ゲームはどちらに転ぶのか。

 右の希望か左の絶望か。

 緊張感に背筋をゾクゾクさせてくれる。


 さぁ来いよ馬鹿野郎。

 たまんねぇ緊張感に、もっと俺を楽しませろよ!!


 男が手に取ったのは







 俺の愛する希望だった。



 残ったのは嘲笑うかのように俺を見上げるジョーカー。




 や、負けるとは思わんかった……。

 四つん這いで落ち込んでいる俺に対し、その周りをグルグルと回っている悪友達。

「ばっつげーむ! ばっつげーむ! ばっつげーむ! ばっつげーむ!」

 高らかな声を挙げながら腹の立つ踊りを見せて来る。

 っく! 殺したい!

 ばっつげーむ!のリズムに合わせて「カモン!」とか「イエ!」とか合いの手を入れてる奴を特に殺したい!


 しかしここは男として堂々と罰ゲームを受けよう。


「さァ! 煮るなり焼くなり好きにしやがれ! 俺は逃げも隠れもしない!」


「……エムだ、こいつエムだ……」

 堂々と男らしさを見せたのに妙な空気が流れたのは何故。

 悪友達は俺を横目にあーでもない、こーでもない、とどんな罰ゲームにするか話し合っている。

 俺は黙って悪友達を遠くから眺める。

 ホントなら俺もあの輪に入って如何に苦しむかというギリギリの罰ゲームを考えていたのに……。

 残念な気持ちをため息に乗せる。

 しかし、こんな日常が嫌いじゃない。


「よし! 決定!!」

 集団の一人が大声を出した。

 それと同時に他の悪友も悪い笑みを俺に向ける。

 さァ! どんな罰ゲームでもきやがれこのヤロー!!

 笑いの神と言われた俺が無様に貴様らの期待に答えてやろう!!


 大声を張り上げた悪友が人差し指を大げさに、びしぃっ! と突きだした。

 その指先の先は俺を通り越して後ろを指していた。

 釣られて振り返った先に。

 一人の少女が居た。

 騒がしい教室の中、一人静かに椅子に座るショートカットの少女。

 窓際という位置を見せつけるかのように窓を開け、風を浴びていた。

 窓を一人占めしているようで少しムカツク、そして何よりも暗そうな表情に苦手さを思わせた。

 彼女は一週間前に転校してきた少女だ。

 越してきて緊張して誰とも触れ合えていない、というより自分から孤立している感じだ。

 意識して居なければ気づかないような影の薄さを感じる彼女を。


 不覚にも指を指されなければ転校してきた事すら思い出さなかったであろう程だ。



 そんな彼女を指差して一体何のつもりだ?


 良く解らない、といった表情の俺に悪友達は同時にニヤッと笑って見せた。


「あの女を笑わせて来い!!」


「え゛」

 何と無茶な注文を……確かに罰ゲームらしいが……。

 自分でも言うのもアレだが人を笑わせるのは得意中の得意だ。

 だが明らかに普通には見えない影の薄い少女に一瞬気圧されてしまう。


 俺の焦る様子を見て悪友達は楽しそうに笑っていやがる。


「何だよ? 無理なのかァ~?」

 こんな風に言われればミスターお笑いの俺としては引き下がるわけにも行かない。


「っは! こんなの朝飯前と言わず昼飯前よ!!」

 つまりちょっと時間が掛るかも、という意味を込めたのは秘密だ。


「よし! 決まりだな!!」

 悪友達を背に、俺は女の方に向かう。

 後ろでニヤついている悪友達はどうせ無理とかほざいているかもしれないが……この一発で終わらせてやる!!


 女の机の前に行くと、ショートカットの影薄女は気付いたのか視線を俺に向けた。

 む、近くでみると意外とかわいいじゃないか……。

 ちょっと思春期っぽい思いが出てしまったが首を振って気を引き締める。


 行くぜ。

 俺の超どきゅうの一発芸!


 貴様は無表情、窓際の笑わない美少女から窓際の爆笑女へとあだ名を変えるのだ!

 特とご覧あれ! 俺の悶絶究極必殺!!。


 訝しそうな女の視線にも挫けず、俺は徐おもむろにズボンを脱ぎ出した。


 騒がしい教室が静まり帰り、俺の方に視線が集まっているのが解る。

 空気が固まるとはまさにこの事。

 後ろの悪友達のバカ笑いだけが救いである、そして原動力として俺を揺り動かす!!

 下のズボンが無ければトランクス一丁なわけだけれど、この格好で「キャー! ヤダー! 脱いでる~!」何て在り来たりの反応なぞつまらん!!

 そんな反応などされる前に俺は新たな行動に動き出す!


 未だ固まって座ったままの女の子にッグ! と、親指を立てて見せ、一言。


「下半身、始めましたッ!」


 後ろで俺の言葉に更に大爆笑している悪友達。

 ッフ! お前らの笑いなぞ無用!! 今はこの子の笑顔が欲しいのさ!!

 何てカッコいい感じを出しつつ、白い歯を女の子に向けてニカッ! と笑う。

 さァ来い! ビッグウェーブ!(笑いの波)

 どんな突っ込みでもモーマンタイ! 何を始めるの!? 何故下半身!? 何で自信満々!? どんな突っ込みでも対応してやるぜェェェ!!


 テンション高目の俺は、いつ女の子が笑いながら突っ込みをするのか待っていたのに、女の子はいつまで立っても笑い声を挙げなかった。

 いい加減笑ってくれないとズボンを穿けないんだが……いい加減に寒いんだが。


 そう思った瞬間、女の子の口が動いた。


「……気持ち悪い」


 その言葉と共に、俺の心にピシッと亀裂が入った気がした。

「……へ?」

 毀れた言葉は疑問系、まさかこんな事を言われるとは思っていなかった俺の精神的ダメージは絶大らしい。

 固まっている俺に、もうひとつのダメージが襲った。

 女の子の机が俺の股間に向けて体当たりを仕掛けてきたのだ。

 固まっている俺は当然避けれるハズも無く。

 木の堅い部分が俺の大事な所にぶち当たった。


 クリティカルヒッツ。


「っおっふっぅ!」

 変な声が出た。


 座っていた女の子が机の下側を思いっきり蹴ったのだ。

 幾ら女の子とは言え、足の力は腕の3倍、そして何より俺がトランクス一丁である事を忘れてはいけない、ダメージを4倍に加算して良いだろうか。

 いつものズボン装備であれば多少は生きながらえたというのににににに!!

 トランクスでは、ほぼすっぴんと変わりませんて!!


 固まっていた思考から1、2秒かけた復活から、猛烈に襲ってくる痛み。

 男性諸君ならこの気持ち解ってくれるだろう。


 俺はトランクス一丁のまま、その場に崩れ落ちた。


 薄れゆく意識の中、少女が俺を見下ろしているような気がした。






下記の物も宜しくね!( `・∀・´)ノヨロシク


オンラインシャッフル

http://ncode.syosetu.com/n0035dm/


暴力熱血女と貧弱毒舌男

http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/51079/


女子高生と七人のジョーカー

https://novel.syosetu.org/95041/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ