君の欠片を拾い集めて
舞い散る桜の夜
涙する僕に君は
艶やかに目を細めて
「満開だけが
花の華ではない」と
流れ落ちる流星の夜
見惚れる僕に君は
意地悪に目を細めて
「星が落つるは死の証
次はきっと私の番」と
消えてしまうことはない
鮮明に思い出せる
この記憶は永遠と
封じ込めてでも守ると
誓ったはずの君の姿さえ
僕はもう思い出せなくて
絵画や本に思いを馳せ
涙する僕に君は
艶やかに目を細めて
「まだ元気なうちに
私を見て私に触れて」と
降り積もる雪の白
目を逸らせぬ僕に君は
後ろから抱き締めて
「ありがとう」なんて
何よりも意地悪な言葉
去りゆく優しさはいらない
消えてしまえばいいのに
もう思い出したくもない
この記憶は過去のもの
いつかの僕といつかの君が
以前紡いだ物語
本に思いを馳せた
読書に耽っていた
そうすれば思い出も
物語として愛せる気がして
舞い散る桜の夜
涙ながら僕は君に
「満開だけが
花の華ではありませんね」と