ケルさんのご飯係⑥
ブー!ブー!ブー!ブー!ブー!ブー!ブー!ブー!ブー!
今日も朝から豪快にスマホのバイブが鳴り響いた。
しかも、何となくだが嫌な感じがする。
「(……メールじゃないな……電話か……)」
モゾモゾと布団から起き上がりスマホを操作したショウ。
電話の相手はショウの姉だ。
「…もしもし……姉ちゃん……?」
「おっはよーう♪調子はどうー?元気ー?」
ショウの寝ぼけた声とは違い、姉の声は元気いっぱい。
「元気って………昨日、連絡したばっかだろ…?」
「うん。知ってる(笑)」
「(このアマ………)」
少しだけ姉に殺意がめばえたショウに関係なく姉は話を続けた。
「ケルのご飯、完了したみたいねー!ありがとう!!」
「良いよ……それが僕の仕事なんだし………」
「ま・あ・ね!……ってもうハムラビノートが無くなるって書いてあったから明日か明後日には届く様にするから!」
「了解。今のノートが終わったら、また姉ちゃんの方に送るよ」
ー・ハムラビノート・ー
ショウの姉が作った怪物(本人いわく可愛いペット)・ケルさんが食べた人間の名前と罪状を記入するノートの事だ。
ショウは「ケルさんのご飯記録」っと呼んでいる。
「ありがとうー!!ノートあると裁判無しで地獄行きの人間が解るから、凄い楽なんだよねー♪」
ショウの姉の言った通り、ただケルの食事内容を記入するだけではない。
ハムラビノートに記入された名前の人間が死ぬと裁判無しで地獄に連れて行くことができる。
地獄に連れて行かれた人間は未来永劫、終る事の無い苦しみが与えられる。
「(この世でも苦しんで、あの世でも苦しむ……ご愁傷さまだなぁ…)」
など考えていたショウの耳に信じられない言葉が届いた。
「じゃあ!ノート着払いでくるから、お金用意してねー!!」
「……え?…着払いなの?」
「嘘だよー(笑)」
あははは♪っと笑っている姉にショウは静かに怒り始めた。
「姉ちゃん。本当にあの世から、この世で着払いは止めて。いくら掛かるか知ってる?」
「そんなに怒らないでよー!とりあえず、また連絡するからー!風邪引くんじゃないわよー♪じゃあねー♪」
一方的に電話を切った姉。まだ言い足りない…など思ったが、再び電話する気持ちになどなれず、ショウは大きなため息をついた。
「(まぁ……姉ちゃんのおかげで自由な生活が出来てるわけだし……)」
「わぶぅ!わぶぅ!!」
ケージの中でケルが暴れていたのにショウは気がついた。
今日も早くご飯をよこせっと訴えているケル。
「はいはい。今ご飯用意しますよー」
ケルに声をかけ何時も通り、ご飯準備を始めるショウ。
「はい。食べてね」
「がふぅ!わぶぅ!!」
今朝は素直にケルはご飯を食べ始めた。
ショウは何気なくテレビをつけると昨日、タチバナ先生に詰め寄られ泣きそうになっていた女性リポーターが写っていた。
よく見ると昨夜ケルさんがご飯食べた公園だ。
ー・今朝早く、この公園に成年の男性が倒れているのが発見されました・ー
ー・男性に外傷はありませんが体の機能がほぼ失われ、発見された当初、意味の解らない事を叫んで錯乱状態だったとの事です・ー
ー・なお、倒れていた男性は鋭利なナイフを所持していた事もあり、女子高生連続切りつけ事件の犯人の可能性が高いと警察で発表されました。また詳しい情報が入り次第、お伝えします・ー
「警察も相手が意味が解らない事ばっかり言っているから大変だろうなぁー」
興味を無くし番組をショウの好きな「簡単★クッキング!」に変え自分の朝ご飯の準備を始めるショウだった。
「今日は昨日のチーズ麻婆豆腐トーストとバナナヨーグルトだな………」




