表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

彼女は頭を抱える。

数年ぶりの投稿になってしまいました………読んでいただければ幸いです。


彼女は恋愛をすることができない。④




免許を取得するために、教習所へ通い始め、いよいよ大詰めで大学での通学にも慣れてきた。

今日は教習が無いため朝から大学の講義に出ていた。


外は暑い。夏らしい陽気をしているが、講義の教室は涼しく、多くの学生が黒板とノートに向かう。

カリカリ、と響く中で先生の講義をぼうっと聞き流すような感じになっていた。


そうなったのは数刻前。

ふと、この間、坂島から抱きつかれた(?)ことを思い出した。

それから、教習に通い始めの頃に素っ気なく会話をしてしまったこと。


あれは…何のつもりだったのだろうか?

というか、自分て結構嫌な奴かもしれない??


晴加はただただ、不思議だったが嫌な気はしなかった。………はずだ。友人だから。

でも、と考える。


抱きつかれ事件(仮)から素っ気ない会話事件(仮)の流れには友人だろうと相手は怒ってるのではないか……?

気にしてないのか、よく分からない。

前者の事件(仮)はあの後、離れて「じゃあ」と言い残し自分の部屋へ戻って行った。



手の持つペンを回しながら、頭をかかえた。

ノートの板書に追いついてないことにハッとして急いでペンを走らせた。

しかし、頭の中はこの間のことでいっぱいだった。


かろうじて、同じアパートとはいえ坂島、そしてその彼女にはここしばらく会っていない。それが救いだ。

どんな顔していいか分からないからだ。

特に、彼女のほうは。


女の嫉妬が怖いことはなんとなく分かっていたので、あの出来事が目撃されていないことを願うばかりだ。

一度とはいえ彼女に会っているので何か嫉妬で後ろから刺されてもおかしくないのでは……とゾッとした。


ここまで晴加が同性である坂島の彼女、安里に気をつけているのにも理由がある。


それは晴加が中学生の頃、同級生の女子から所謂いじめの標的にされたことがあったからだ。

当時から中性的で少し男勝りであった為か、男子の友人が多く、女子から密かに人気のあった男子とも中が良かった。

そのせいもあってか、気に食わない女子達が晴加に対して陰湿ないじめを強いた。


靴が無い、と思ったら流し台に水浸しになっていたり

筆箱や教科書がボロボロになって机に入っていたり

通学用の雨具がプールに捨ててあったり………

思い出したらキリが無いほどのこと。


当時、仲の良かった人気の男子には迷惑掛けれないとも思って何も言わなかった。

唯一、小学生の頃から一緒だった男子の友人にはぽろっと愚痴をこぼした事があったが、誰にも相談出来なかった。


…………なので女子、の嫉妬にはなんとなく、身構えるものがあった。



はぁ……とため息をつく。

結局、板書は追いつかずじまいになってしまった。

授業は真面目に聞くタイプのはずだったが、と思いながらもやはり頭に出てくるのは坂島。

頭をガシガシ、とかきつつも、なかなか答えという答えが出てこないのだ。


学生は勉強!と気合いを入れ直して足を向かわせたのは大学のカフェエリア。

しかし、思いがけない人物ーーーー、坂島の彼女を見つけてしまった。


「うっ……わ……どうしよう」


思わず隠れる晴加。ここを利用するか少し迷う、が、足が自然と逃走してしまった。


向かったのは先程の講義のあった教室。


「………橘?」

「わあああああ!!!!」


今度は頭を抱えている案件の本人、坂島に会ってしまった。


「びっくりした…どうした?」


目をぽかんとさせ、晴加を心配する。


「あ……いや、その、なんも?!」


不自然に慌てて返事をしてしまったことを悔いる。


「橘、教習はどう?順調?」

「えっ……あぁ…あと卒検前の実技とをやれば終わる……」

「そっか、免許取れたら地元まで遊びに行こうぜ」


笑う坂島に対し、晴加は直前まで考えていた事件(仮)のことに関しては特に何もないようで安堵した。


ただ、抱きついてきた理由については聞きづらかった。が。


「…さ、坂島この間の……その車の帰りのこと…………」


「……………あ……………」


少しの沈黙から、再び目を向けて問うのだ。


「………嫌だった?」


「え………?」


「抱きつかれたの、嫌だった?」


目を疑うような、表情をしていた。

それは果たして自分に向けていい表情なのか?

晴加はまたしても坂島からの"行動"に思わず呆けてしまった。


分からない、なんて返したらいいのか。


「………い、嫌だなぁなんてそんな」


分からないけど。


無理やり笑ってみせる。


「そっか」


それだけを言い残し、坂島はふっと柔らかく笑い去っていった。


ぺたん……………


「えっ……?どういうこと?」


またしても、晴加は彼に対して頭を抱えるようになるのだ。


だが、晴加はよく分からないまま、その場に座り込んでしまった。




つづく。

最後の投稿から数年経ってしまいました。

今後は少しずつ進めていこうと思います。


主人公の晴加は実は結構臆病な面もあり、自己評価も低く見ています。そんな晴加にまだ謎多き坂島。

果たしてどうなるのやら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ