彼女は、疑問を持つ。
かなりのお久しぶり投稿です
彼女は恋愛をすることが出来ない。③
彼女は、疑問を持つ。
しばらく、いや、ここ数週間の出来事は謎しかない。
元々大した悩みとか、とくにはなかった。…たぶん。
でもこれは気になる。
坂島という同じ学部の、うーん、性格は明るいほう。男女問わず気兼ねなく接するし、世話焼きな部分もあったりする。
でもちょっと自分とは真逆な雰囲気があるような気がする。
あと
その坂島の彼女。
ものすごくにがて。
自分より可愛くて、女の子らしくて、気配りもできそうな感じ。
誰もが羨むような理想の子。
ものすごくもやっとする。
なんとも言えないけど、とにかくなんだか苦手である。
ーーーーーー……
夏休みに入る直前、自動車の免許を取りに通い始める。
大学の近くではなく、比較的安い地方の、地元の教習所。
AT限定を取ろうと思ったけれど先日の乗せてもらったスポーツカーの衝撃が忘れられず、MTに挑戦しようと…したけど…
うまく、ギヤのチェンジが出来ない。
あいつ、どうやってあんなに素早い動作ができるんだろう…本当に初心者なのかなぁ
ある日朝一の学科を終えて近くのコンビニへ行こうと足を運んでいると反対車線から見たことのある黒いスポーツカーを見かけた。
『…、同じだ』
思い浮かべたのはその同じ車に乗る先日の友人。
とんでもない速さで、駆け抜ける、その表情と運転に目を奪われた。
それと、先日の、帰り際の出来事がちらつく。
…なんて思っていると車の窓が開く
「橘じゃん」
「坂島?」
まさかの本人登場に自分の今思っていることを隠すのに慌てた。
目的のコンビニは目の前にあった。
「教習所通ってたのか、知らなかった」
「あー、えー…うんまだ2週間ぐらいだけど…」
言葉に詰まる
思うように言葉が出ない
「MT取るの?」
「そ、うだよ」
じと、と鞄から見える教習本を見る坂島。
思わず引き気味で遠ざけるように
「ごっ…ごめん、次…教習あるから」
「おう、がんばれよ」
その言われる一言一言に不思議と謎を感じる。
なんなんだろうこれ。
「…はぁ」
何を”気にしている”のか、あんな感じの悪い…
「教習…、まだ時間あるのに」
もやもやと心に引っかかるような
初夏の日差しが余計に眩しくてしょうがない
ーーーーーーーーーー…・
あれから二週間、大学に向かう
寮からの道のりが重い
「はぁ…」
心苦しい
「…か、…晴加!」
「!な、名取か~…びっくりさせないでよ」
後ろからポンッと肩をたたいて呼んできたのは大学に入ってからの友人。
名取さくらという…顔つきは女の子みたいだがれっきとした男性…
すると名取は鞄から忙しなくなにかを取りだした
「ほら、これあげるから元気出しなよ!なにで悩んでるんか知らねーけどよ~」
キラキラとした丸い飴が渡された
名取はよくこういったお菓子を鞄に忍び込ませては私や、友人、先輩、道行く子供にまで渡している
笑っては「あげるよ!」、この人柄が彼のいいところである
自分にはないとても明るい奴だった
「…ありがとう名取」
しみじみとここ最近のことを思うと明るさが身に染みて元気になれる
「そいや今日の授業特別講師だってよ」
「今日…ってなんだっけ」
世間話をしながら、教室へ向かう
昨日からのもや、としたものは少し気になるけど
気にしてたら、しょうがないのかな…