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彼女は恋愛をまだ知らない。

彼女は恋愛をすることができない。①




昔から「男だ」「女じゃない」と言われてきたもんだから心のどこかで自分でもそう思ってた


性格上、だけではなく外見も女に見えない


いくらスカートやワンピースを着る習慣があっても、女に見られない




橘 晴加。


はるか、なんて大層な女らしい名前もこれじゃあ台無し。


つくづく思うが、なんで男に生まれなかったのだろう。


ウチは女ばっかの4人姉妹で、私は3番目。

姉はデザイナーと看護師で2人とも結婚を控え、妹は彼氏持ちの高校生。


そういうなかで自分は工学系の高校を卒業し、工学部の大学生。

周りは男しかいない。


なぜ私だけこうなったのかいまだによく分からない。

母はいたって普通の専業主婦だし、父は少し偉いIT企業のサラリーマン。





…………………


大学へ進学してしばらく経ったころ。


「あ、」


「あ」


大学のオープンキャンパスのときに少し話した男子と再会した。


たまたま同じ工学部でたまたま同じ講義を受けていた。


ちなみに名前は知らない。



「あれだよな、オープンキャンパスのときに喋った」

「そう。」

「名前、聞いてなかった」

「…橘 晴加で、す」


「俺、坂島 寿弥。よろしく」


こういう改まった自己紹介なんて何年ぶりにしただろうか。


焦げ茶色に染めた、流行りでもない普通の短髪にそれなりに整った顔立ちの坂島という男はたぶんモテるんだろうなと思った。


自分のなかではそういうモテるだのモテないだの、考えたことがなかった。

いや、かっこいいとかかわいいとか思うことはあるけども恋愛対象としてでは考えたことはない。



講義を終え、時刻は昼すぎを指していた。

特に大した話はせず、坂島とは別れて昼をどうするかと学生食堂に向かう。


最近の学生食堂はなんて豪華なんだと思うほどの品揃えに値段もリーズナブル。

券売機で券を買い、カウンターで注文する方式。


「あ、橘じゃん」


呼ばれて振り返ると先ほどの坂島がいた。

ーーーと、誰だこの可愛らしい女の子は?


「っ、ああ坂島、だっけ」


なにか引っかかるような重い気分だった。


「なんだよ酷いな名前ちゃんと言っただろー」

「………寿弥、」


なんか睨まれたような気するけど……

なんだろう。


「こいつ、彼女の桐野 安理。教育学部の2年で」

「へぇ、可愛い彼女連れてねぇ〜なかなかやるじゃないですか」


桐野安理と紹介された彼女からまだ少し冷たい視線がくる。

とりあえず。


「工学部の橘 晴加です」

「……女?」

「?あぁ、一応な。男に見えるだろ?」


………やばいこれは


「まぁいいや邪魔しちゃ悪いだろうし、じゃーね」


颯爽と注文した定食を受け取り、その場を去った。



まだ、まだ、重いような気分が抜けなかった。





それをなにか、と知るのはまだ先の話である。

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