万年Dランクの俺、幻のサンドイッチをでかいトカゲ(災害級)に泥に落とされたので、キレ散らかす〜食い物以外はやるから俺を巻き込むな〜
リハビリ作品、よくあるテンプレ風です。
人間が生きるためには、寝ること、楽しむこと、
そして食べることが必要だ。
楽しむことは必須ではないかもしれない。
だが、少し位楽しみがあった方が、長い人生にハリが出るというもの。
一攫千金を夢見て、日々の糧を得るため、
そして今日を生きるために、人々は迷宮に潜る。
冒険者ギルドが発行する探求者証には、実力に応じて『F』から『S』までのランクが刻まれる。
中央値である『D』ランク――それこそが、俺、ロイドが現在籍を置いているランクだ。
だけど、そんなことはどうでもいい。
FランクだろうとSランクだろうと、人間等しく腹は減るのだから。
(それに……)
迷宮の安全な中層、誰も来ない隠し通路の突き当たり。
俺は岩に腰掛け、どんよりとした薄暗い天井を見上げた。
「これ以上ランクが上がると、国から強制徴募されるわ、新人の育成係を押し付けられるわ、貴族の派閥争いに巻き込まれるわで、ろくなことがないからな……」
誰もいない空間で、ポツリとそんな愚痴を一つ。
仕切り直すように、俺は懐から包みを取り出す。自分でもわかるほどニヤケてしまう。
中身は、ギルドの食堂で一日に3個しか販売されない幻の一品――『マーラおばちゃんの特製サンド(厚切りベーコンと特製マヨネーズ和え)』。
これを手に入れるために、今朝はどれほど苦労したことか。
「いただきます――」
幸福を噛み締めるべく口を大きく開けた、まさにその瞬間だった。
「いやあああ! 来ないでえええ!」
「クソッ、なんでこんな中層に『暴虐の黒死竜』なんてネームドがいるんだよ!」
爆音と共に隠し通路の壁が崩壊し、派手な甲冑を着た若い男女三人組が転がり込んできた。
確かギルドが最近売り出し中のエリート新人パーティ『純白の剣』の面々だったかな? ハゲが言ってたな。
彼らの方がランクも上だったはずだが、実力が伴っていないのか?。必死の形相で涙目になりながら逃げてきている。
そして、彼らの背後から姿を現したのは、禍々しい漆黒の鱗に覆われ、周囲の岩石を視線だけで腐食させる巨大なトカゲ。
ネームドモンスター――Sランク相当の災害級指定個体だった。
(げっ、ネームド!? 巻き込まれる前に一刻も早く退避――)
俺は面倒事の気配を感じて、瞬時に撤退の判断を下す。とりあえず奴の瘴気に巻き込まれる前にステップを踏んでその場を離れる。
しかし、予想よりデカい個体だった為、風圧と激しい振動を思った以上に受けてしまう。
一瞬の油断だった。
俺の手から『今朝の努力の結晶』が滑り落ちる。
サンドイッチは、デス・バジリスクの瘴気で毒化した泥の中へと、無惨にポチャンと落ちていった。
「あ」
思考と時が止まる。
今朝、眠い目を擦り必死で起きて並んで手に入れた、奇跡の一品。
口いっぱいに広がるはずだった、ジューシーなベーコンの旨味。
それが、ただの泥水に。
「グオオオオオオーン!」
空気が震えるほどの咆哮を上げるデス・バジリスク。絶望してへたり込む少年達。
「うぁぁぁぁ!! 俺の努力がぁぁぁぁ!!」
涙目で叫ぶ俺。
俺の……今日の楽しみが、こんなトカゲごときに……。
――視界が、怒りで真っ赤に染まっていく。
「おい、トカゲ」
地獄の底から響くような声が、ダンジョン内に冷たく響いた。
デス・バジリスク――捕食者として君臨していた絶対強者が、生まれて初めての「自身より強い殺気」に、ピきりと動きを止める。
「お前、自分が何をしたか分かってるのか?」
俺は、腰の古びた短剣を握る。
~side純白の剣~
ネームド、Sランクの魔物ってだけでも無理なのに、よりにもよって絶望の化身、
俺達は油断も慢心もしていなかったと思う、
そもそも中階層にこんな化け物が居たことなんて1度だってなかった。
幼なじみ達で必死で頑張った、
頑張って頑張ってようやく掴んだBランク
(こんな形で俺達は終わるのか?)
絶望に染まる身体にムチを打って必死に逃げる、今まで中階層でも来た事ない何も無い場所に辿り着いていた、そこに居た1人の冒険者、確か(食の冒険者)とか言われてたDランクのロイドさんって方だったと思う。
(なんで!?こんな所に人が!?)
ロイドさんの手にはマーラおばちゃんの特製サンドが握られていた、
(ロイドさん、すいません!!)
必死で逃げたとは言え関係の無い冒険者を巻き込んでしまう事に罪悪感を感じるがもう無理だ、デスバジリスクの一撃で崩れた足場に俺達は腰が抜けてしまいもう立てなくなっていた。
(俺達はここで終わりなのか)
諦めたその時だった、
俺達はデスバジリスクよりも、もっと濃く、もっと恐ろしい殺気を感じてそちらを見る。
次の瞬間、空間が爆発した。
何が起きたのか全く見えなかった。ただ、目の前が真っ白になるほどの衝撃波と、凄まじい金属音が一度だけ聞こえた。
「ギャンッ!?」
災害級と恐れられた魔物とは思えない声をあげて一瞬で十数メートル吹き飛び、壁に激突する。
その頭部には短剣が深々と突き刺さっていた。
短剣からは、一目でわかるほどに魔力が溢れ出している。
暴風のような魔力の籠った短剣を頭部に受けて無事なはずもなく、迷宮の主人、歩く絶望、迷宮の悪夢、様々な2つ名を冠した絶望の化身は、たった一人の男の一撃で、そのまま光の粒子となって消滅していった。
残されたのは、超希少な素材と巨大な漆黒の魔結晶。それらを一瞥して、すっかり地形の変わった迷宮真ん中で先程までサンドイッチを持っていた彼は天井を仰いでポツリと呟いていた。
「……俺の、サンドイッチ……」
~sideロイド~
俺は涙目でため息をつき、短剣の血を拭うと、『純白の剣』の3人に振り向いた。
彼らは完全に腰が抜けており、開いた口が塞がらない様子で俺を見上げている。
「あ、の……今のは、一体……?」
「おい、お前ら」
「ひゃいっ!」
俺は懐からメモ帳を毟り取り、ペンでサラサラと奴への用件を書きなぐる。それをリーダーらしき少年に押し付けた。
そして、トカゲが残した、自身の武器防具の補強に使えそうな素材だけを素早く自分の素材バッグに押し込む。
魔結晶? めんどくさい物はノーサンキューだ。目の前の生贄――期待の新人達に押し付ける。
「この魔結晶は全部お前らにやる。だからギルドに帰ったら、『自分たちが偶然、誰かが倒した後のネームドの死体を見つけた』って報告しろ。この手紙をギルドマスターのハンスに直接渡せばいい、処理してくれるから。いいな? 絶対に俺の名前を出すなよ。出したら……」
俺がスッと指をさす。
その方向には、毒沼に沈み、もはや原型を留めていない――サンドイッチであったろうモノがドロドロに溶けていく光景があった。
「次はお前らがあのサンドイッチと同じ運命を辿る事になる」
「は、 はいぃぃぃ!」
食い物を奪われた恨みから怒っていた俺の表情は相当怖かったのか、はたまた殺気に当てられたのかは分からないが、彼らは涙目でコクコクと激しく頷いていた。
~sideハンス~
私は、目の前の非現実的な光景を、聞きたくない話に耳を傾けながら、『純白の剣』が持ち帰った災害級の魔結晶、そしてあの馬鹿が渡したであろう一通の手紙を前にして、深いため息をつきながら天を仰いでいた。
手紙の内容はこうだ。
『俺のサンドイッチがサンドイッチじゃ無くなった。ムカついたから狩っておいた。手柄はそこの新人にやる。俺のランクはDのまま。いいな? もし変に騒がれたり、ランクを上げようものなら、お前の秘蔵の高級酒の在処を、秘書の副ギルドマスターと奥さんにバラすからな。じゃあ後はよろしく。 ロイド』
「あの馬鹿野郎がぁぁぁーーー!!」
私は机を叩いて絶叫した。
「Sランク級のネームドを『ムカついた』の一言で狩るな! しかもこんな巨大な魔結晶を『見つけただけ』で通せるわけないだろうが! なんで!! あいつは!! いつも俺の頭皮に!! ダメージを持ってくるんだ!! もう無いんだよ!!」
悲しく光るその頭を両手で抱え、私は山積みの書類を前に再び絶叫した。
~sideロイド~
街の片隅にある、馴染みの鍛冶屋。
「おいおいロイド、こいつはデス・バジリスクの鱗じゃねえか! こんなもん、どこで手に入れやがった!」
「まぁ、ちょっとね。親方、これで俺の防具の裏地、いい感じに補強しといてよ」
「応よ! 職人魂が燃えるぜ! 最高のものに仕上げてやる!」
珍しい素材だからか、ホクホク顔の親方。
トカゲの素材も防具の強化には使えそうだったので、俺も少しは気が晴れた。
サンドイッチは失ったが、防具はタダで強化できる。結果オーライ、明日からまた平穏なDランク探求者ライフの始まりだ――。
そう思っていた。
晩御飯を普段より良い物を食べた翌朝。
俺はいつもより機嫌良くギルドに行く。
(ハゲはおそらく部屋で仕事してるから、さっさと依頼受けて迷宮に逃げ……潜ろう)
予定を決め、ギルドの入口を開け、いつものように扉をくぐり、依頼を受けようとした時だった。
「あ! ロイド師匠!!」
「お待ちしておりました、師匠!」
どうやら俺は昨日飲み過ぎたようだ。幻聴が聞こえている。昨日会った連中が、目をキラキラ輝かせながら俺の方に駆け寄ってきているように見える。きっと幻覚だ。
周囲の冒険者たちが「え? なんであいつらが、万年Dランクの(食の冒険者)を師匠って呼んでるんだ?」とざわつき始める。
「おい、名前は出すなって――」
「はい! ギルドには『誰かが倒したのを拾った』と報告しました! でも、私たちの心の中では、ロイド様が生涯の師匠です! どうか、あの神速の剣技を教えてください!」
純粋無垢な、キラキラとした視線。
このままここにいたら、目立たないどころか一瞬で注目の的になってしまう。
「……あー、悪い。用事思い出したから!」
俺は回れ右をすると、全力のトップスピードでギルドを飛び出し、そのままダンジョンへと逃げ込んだ。
「待ってください、師匠ー!」
「ロイドてめえ!! この野郎!! 今日と言う今日は覚悟しろやぁぁぁ!!」
背後から追いかけてくる新人と、ハゲの怒声を聞きながら、俺は平穏(?)を求めて、迷宮の奥深くへと逃げ、疾走する。
人間、生きるためには楽しみくらいあった方がハリが出る。しかし――。
(面倒事は求めて無いんだよぉぉぉ!!)
そんな俺の心の叫びとは裏腹に、街はさらに騒がしくなる予感を感じさせる、腹の立つ程綺麗な青空だった。
書きたいものが全く書けない、継続して書いてる人達尊敬します。




