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恋情照明ラブレター

作者: タルト
掲載日:2026/03/18

開いてくださりありがとうございます。


久方ぶりの投稿となりました。


強い感情の揺らぎを楽しんでいただけたらと思います。


評価・感想お待ちしています。

ブックマーク、いいねも是非お願いします。


3/19 追記

ジャンルを現代恋愛から、文芸の純文学に変更しました。

現代恋愛の読者の方が予想する恋愛の要素と、実際の内容とが合致していない、という懸念があったため、より適切と思われるジャンルに変更する運びになりました。

ご承知おきください。

手紙

 ごめんなさい。

 ごめんなさい。

 こんな彼女でごめんなさい。

 蔑んでください。見捨ててください。

 このまま私を忘れてください。


 浮気を疑ってごめんなさい。

 したくない、って私が言ったこと、忘れていました。

 どうしてしてくれないんだろう、って、友達に相談したのは本当です。

 浮気してるから、私とする必要ないんじゃない? って言われたことも本当です。

 だけどあなたは潔白でした。

 間違っていたのは私の方でした。

 決めつけてしまってごめんなさい。

 早合点した私が悪いです。

 相談する前に言えばよかった。

 あなたに直接聞けばよかった。

 それで済んだ話だったのに。

 後悔しかないよ。


 どうして怒ってくれなかったの?

 私を咎めてくれなかったの?

 怒られた方が、ずっとずっと楽だった。

 謝りたかったのに、抱き締められたら、言葉が出なかった。

 直接言えなくてごめんなさい。


 私、謝ることばかりで、何にもお返しできてない。

 最近ずっと、そればかり考えてる。

 嫌で嫌で仕方ないのに、全然頭から離れてくれない。

 あなたの心配を踏みにじってるのは、分かってる。

 分かってるのに、止まれないの。どうしようもなく溢れてきちゃうの。

 私、どうすれば良かった?

 どうなったら良かった?

 何をすれば、正解に気付けたんだろう。どこで間違えたんだろう。


 告白します。

 私は、あなたが好きなわけじゃなかったです。最初の頃は。

 告白してくれたとき、私は一度断りました。

 保留ですらないお断りを、その場でしました。

 だけど、次の日になってOKしました。

 たぶん、ずっと不思議に思ってるよね。

 告白された後、家に帰ったら、お母さんが化粧水を投げてきたの。

 店が混んでて並ばされた、とか喚いてたから、完全な八つ当たり。

 それで、私、寂しくなって、心の穴を埋めたくなって、半分投げやりで、OKすることにしたんだ。

 誰でも良かった。あなたである必要なんて、どこにもなかった。

 あのときの私の一番近くにいたのが、たまたまあなただった。

 本当にそれだけなんだ。

 何々が秀でているから、とか、どこどこが好き、とか、そんなの一切考えてなかった。

 ただ手を伸ばして届く位置にいただけ。

 改めて書くと、酷いね。

 失望した? 失望してくれたなら、書いた甲斐がある、かな、たぶん……。


 OKした理由、本当は、書かないつもりでした。

 だけど、書き始めた日の私と、昨日の私と、今日の私と、なんだか全部違うみたいなの。

 分かってくれるかな。伝わるかな。

 別人、ってほどじゃないけど、でも、一緒じゃないんだ。

 纏まってない、って言う方が近い……と思うんだけど、自信はないです。ごめんなさい。


 浮気されたと思ったとき、どうしてあんなに悲しくなったんだろう。

 さっきちょっと考えて、答えが出ました。

 きっと私は、お母さんと同じになるのが、嫌だったんだと思う。

 言ったことあったっけ。

 うちね、私の実のお父さんとは、結婚してないの。

 お母さんが私を妊娠したのが分かると、速攻浮気して、そのままどっか行っちゃったみたい。

 それでも、お母さんは諦めきれなくて、私を産めば戻ってくると信じて、産むことにしたらしいよ。

 笑っちゃうよね。

 お母さん、今も昔も、全然現実見てなくて、夢の世界にいるみたいなの。

 それで、新しく夢に出てきた王子様と出会って、私の弟を妊娠したから、結婚したんだって。

 重いよね、楽しくないよね、笑えないよね。

 ごめんなさい。


 昨日の続き。

 私ね、弟が可愛いって、あんまり思ってないんだ。

 いい子なのは分かってるよ?

 だけど、だけどね、私と弟は、違うんだよ、絶対、違う。

 私、いい子って言われるの、嫌いなんだ。

 言ったことあったかな。まあ、それはいっか。

 いい子って言葉は、呪いなんだ。

 いい子でい続けさせるための、お願いの力が籠った、強くて苦しい鎖。

 だけど、私、ずっといい子でいたでしょ?

 何でだと思う?

 答えは、それ以外は私じゃないから。

 いい子の鎖がなくなったら、私は誰からも見て貰えない。

 あなたが私に告白した理由、ちゃんと覚えてる。

「いつも勉強頑張ってるの、凄いなって思ってて、気付いたら好きになりました」

 真面目な顔で言われたから、私も真面目な顔をした……つもりだけど、もしかしたら顔に出てたかも。

 また話が逸れちゃった。

 とにかく、これで、断った理由は分かったでしょ?

 あなたが好きになったのは、『いい子』の私だったから。


 昨日の文を読み返したら、吐き気がしました。

 とっ散らかる、っていう言葉は、このためにあるのかも、って思ったくらい。

 直すつもりはないけど、分かりづらいだろうから、改めて書きます。

 私は、弟を可愛いと思っていません。

 理由は、たぶん、弟にはお父さんがいて、私にはいないから。

 羨ましい。妬ましい。

 どっちなの? って聞かれたら、後者の方が強い、かな。

 私はお姉ちゃんだし、お父さんも、本当のお父さんじゃない。

 それが分かっているので、家族単位の決め事は、なるべく遠慮するようにしてました。

 でも、弟はそんな事情は知らないので、何でもお構いなし。

 お父さんにおねだりしているのを見る度に、狂いそうにな

 狂いそうになってました。

 狂ってはない、よね? 大丈夫だよね?

 書いていて、自分で不安になってきちゃった。

 駄目駄目、今日こそ書ききらないと。

 ごめんなさい、続けます。

 弟には、全力でぶつかってもいい相手がいる。

 その事実が、私にとっては、すごく高い壁に見えるんです。

 私には越えられない壁の向こうで、弟はいつも笑ってる。

 それが私には、辛くて、すごく、辛くて、羨ましくて、どうすればいいのかも、わからなくて。

 お姉ちゃんだから、って、我慢しなきゃ、って、自分を偽っても、やっぱり弟は、可愛いと思えなかった。

 そんな自分が、嫌でした。

 性格悪いな、って、自分でも思います。

 あなたは、たぶん、それは違うよ、って、言ってくれると思います。

 これを話せば、それさえできれば、少しくらいは、楽になれたのかな。

 でも、私には、話す勇気が出ませんでした。

 違う、って言われないのが、怖かったんです。

 あなたを信じているはずなのに、それでも私は、踏み出せなかったんです。


 ごめんなさい。

 昨日、辛くなって、途中で手が動かなくなりました。

 昨日みたいに書けるか、自信ないけど、とりあえず頑張ります。

 私は、彼女失格だと思います。

 ずっとあなたに、嘘をついていました。

 信じてる、なんて口ばっかりで、心の底から信じてるわけじゃなかったみたいです。

 ごめんなさい。

 この流れで信じて貰えるか、分からないけど、言わせてください。

 私、自分でも、あなたを信じられないことが、すっごく悔しいし、悲しい。

 きっと、また嘘ついてる、って、言いたくなるよね。

 でも、本当にそう思ってるの。

 あなたを信じてたかった。ずっとずっと信じてたかった。

 そのはずなの。

 ごめんなさい、本当にごめんなさい。

 支離滅裂でごめんなさい。

 もう私、全部ぐちゃぐちゃで、言いたいことも、言いたくないことも、言わないでおくつもりだったことも、わかんなくなってる。

 傷つけてたら、ごめんなさい。

 傷ついてるよね。

 それでも、きっとあなたは、私に優しくしてくれる。

 私の帰る場所のままでいてくれる。

 ありがとう。

 でもね、今の私にとっては、それが辛いんだ。

 どうしてなんだろう。

 やっぱり、責められたいのかな。

 否定されたいのかな。

 何でなんだろう。何で?


 あなたを信じてる、ってこと、どうすれば、証明できるでしょうか?

 幾ら考えても、全く分からなかったです。

 ごめんなさい。


 ひとつ、聞いてもいい?

 私って、本当にあなたの彼女?

 ううん、それより、あなたって、実在してる?

 記憶を頼るなら、ちゃんと実在してるはずだけど……。

 ごめんね、ちょっとだけ、心配になっちゃった。


 私は、どうすれば、あなたの彼女になれますか?

 どうすれば、自分はあなたに相応しいって、胸を張って言えるようになれますか?

 失格じゃない彼女になるには? 何時間考えても、自力では駄目でした。

 いい子止めたいなんて、思わなければよかった。

 それさえなければ、今頃、あなたの隣で笑えてたはず。なのに……

 

 でも、私、欲張りだから、どの道駄目だったかも。

 実は、最近ね、あなたのこと、結構好きだなって思ってたんだ。

 ううん、思えるようになった、の方が近いのかな。自信ないし、違ってたらごめんなさい。

 それでね、好きになれた理由なんだけど、間違いないのは、あなたがちゃんと傍にいてくれたから。

 ふらふらしないで、じっと私の隣にいてくれたから、私も安心できるようになっていったの。

 でも、それが駄目だったのかな。

 あなたなら大丈夫かな、って気持ちが、いつのまにか、本当の自分を見て欲しい、って願望に置き換わってた。

『自分を見せてもいい相手』のはずだったのに、私を見てくれないのが、段々不安になってきたの。

 別に、あなたは悪くないんだよ?

 私が勝手に怖がって、外せる鎖を外さずに、それでも自分を見つけて欲しいって、一方的に求めてただけ。

 言えばよかったのに、馬鹿だよね。笑っていいよ。

 むしろ、笑って。私と一緒に、笑って。笑って。


 付き合って三ヶ月の記念日に言ってくれたよね。

「笑ってるの見れて良かった」って。

 私ね、嬉しかったんだ。

 誰かと一緒に、何でもない日を、大事な日としてお祝いできたのが。

 誕生日とか、ハロウィンとか、クリスマスとか、そういうのじゃない、普通の日。

 それが、三ヶ月、六ヶ月、一年、二年って、段々積み重なっていくの。

 これって、すっごく素敵だと思うんだ。

 どうかな、分かってくれるかな?

 そうだったら……嬉しいな。

 ごめんね、話が逸れちゃった。

 やっぱり私って、ダメダメだ。

 ……あはは。

 

 ごめんなさい。

 笑ってる顔、見せたいのに、上手く笑えなくてごめんなさい。

 嬉しいときに、嬉しいって、ちゃんと言えなくてごめんなさい。

 ごめんなさい、って、そればっかりで、ごめんなさい。

 ありがとう、って言いたいこと、たくさんあるはずなのに、謝りたいことばっかり浮かんできちゃう。

 お願い、私、今だけは、ありがとうって言わせて。お願い……。


 三ヶ月の日に、一緒にケーキ買いに行ってくれてありがとう。

 自分の食べたいものを、ちゃんと考えて選ぶの、すごく楽しかった。

 あのとき、時間かかっちゃったのに、待っててくれてありがとう。

 いっぱいいっぱいで、色んなこと伝え忘れてたんだなって、絶賛反省中。

 もし今、あなたが隣にいたら、ちゃんと伝えられるのにな。

 人がいないのが寂しいなんて思ったの、これが初めて。

 そう思える相手が、あなたでよかった、って言ったら、信じてくれる?

 今の私は、信用ないから、やっぱりダメかな。ダメだよね?

 それでも……それでも、信じてもいい?

 私、今度こそ、信じてみたいの。

 まだ間に合う? やっぱりダメかな。ダメなんだろうな、たぶん。

 もう、また弱気になってる。頑張れ、私。

 

 宣言します。

 これを一通り書き終えて、それでもこの気持ちが残ってたら、私はもう一度、あなたを信じます。

 間に合わなかったら、きっぱり諦める。けど、その前に諦めるのだけは、したくない。


 私から、お願いがあります。

 私のせいで出来ず終いの半年記念日、今度は私の部屋でお祝いしませんか?

 もしダメなら、私と別れてください。

 次は、私の方から告白します。

 この半年と少しで知った、あなたの良いところを添えて、好きだ、って、ちゃんと言います。

 お断りするなら、遠慮なくしてください。誓ってあなたを恨みません。

 だけど、もし今も、私に対して良いな、って思える部分があったなら、OKしてくれたら、嬉しいです。

 もしかしたら、勢い余ってキスしちゃうかも?

 嬉しすぎて、恥ずかしさなんて忘れちゃいそう。

 それならそれで、素敵……なのかな。自信ないな、やっぱり。


 そうだ。

 元々、半年記念日は、キスするつもりだったから、来てくれるなら、そのつもりでお願いします。

 きっと、手を繋いだときより、ドキドキするよね?

 ケーキ買っただけでもすごかったのに、あれ以上なんて、どうなっちゃうんだろう。

 ……でも、そういう特別が、この先の日常に溶け合っていく、そんな未来だったらいいな。


 そういえば、いつの間にか、私が私に戻ってるね。

 八岐大蛇みたいになってたのに、不思議だな。

 むしろ、八岐大蛇みたいになる方が変わってるのか。たぶん、そうだよね。

 改めて、この度は、色々と振り回してごめんなさい。

 こんな私ですが、今後ともあなたの彼女でいられたら……あと、更にその先まで、隣にいさせてくれたら、すごくすごく嬉しいです。



 これで最後。

 まだ私は、彼を信じたいと思ってる。良かったぁ。

 それじゃ、いってきます。

 手紙は、成功したら封印、失敗したら、後日渡す。


 

 今度こそ、最後の追伸。

 八岐大蛇は、手紙ごと封印です。

 お疲れ様でした、私たち。

最後までお読みくださりありがとうございました。


今作は、私の作品中でも、際立って胸に迫るものになったように感じます。

ふと聞こえてきた少女の胸臆の声を、衝動的に書きつけたのですが、書き上げるまでの三時間半は、激情の奔流に息が詰まるばかりでした。

私自身、彼女の心の行く末や選ぶ道など、その一切が分かりませんでした。

ですが、結果的には、自分の望む未来を見つけられたようで良かったです。


願わくば、彼女の想いが、読者の方にも響くものでありますように。



つい長くなってしまいましたが、この辺りで区切ろうと思います。

重ね重ねになりますが、評価・感想、ブックマーク、いいねをいただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
最後までドキドキしながら読めました。 エンディングは結構好みで面白かったです。
2026/03/18 19:41 マンゴーバナナ
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