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覚えのない罪で国外追放されたブラコン令嬢は、盲目の兄と新生活を謳歌する  作者: 朝倉 ねり


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4 父の「手切れ金」

わたくしが驚いて声をあげると、明らかに困惑していた様子のお兄様の顔がホッとゆるんだ。


「シャロン、そこにいるんだね?というか、なぜ私は外に連れてこられて……」

 早くお兄様の元へ行って差し上げたい。

 お兄様の腕を乱暴に引いている使用人の腕を切り落として、貴方の隣で「大丈夫、わたくしがいますから」と背中をさすって差し上げたい。


 自分の中でどす黒く渦巻く気持ちを、深呼吸して押さえつける。

 恐らく殺気が漏れていたからだろう、衛兵達がこちらを警戒しているのが分かる。


「おお、連れてきたか。」

 お父様が後ろをチラリと振り返って、状況を掴めず困ったように立ち尽くしているお兄様を見る。

「ふん。相変わらずの出来損ないだな。」

「あ゛?」

 まずい。思わず淑女らしからぬ声を出してしまいましたわ、オホホ。

 横にいた衛兵達がびくりと震えている。幻聴ではないかしら、ね?

「ゴホン。まぁ、その。シャロン。お前は罪人として国外追放されるから、晴れて……いや、残念なことに我がスノーリナベル伯爵家とは縁が切れるわけだが。」

「罪人!?シャロン、どういうこと……」

「黙っとれ、オルフェウス!……それでだシャロン。ワシも考えたのだ。女1人では心ぼそかろう、と。だから、お前が気にかけている兄を連れていけ。これがもう一つの手切れ金だ。」


「……!」

 息を呑んだ音は、シャロンかオルフェウス。

 どちらのものだっただろうか。


(つまり、お兄様もこれを機にわたくしと一緒に追い出して、メーニャの弟であるランドルフを合法的に時期当主にしたい、ということね。)

 なんて素晴らしいのだろう。

 シャロンは思わず漏れそうになる笑みを打ち消すのにとても苦労した。

「それはありがと……謹んで受け取らせていただきますわ。慈悲深い伯爵様に感謝を。」

「うむ。それで良い。」

 父がホクホク顔である。

 今日いっぺんに愛してもいない前妻との子2人を一気に片付けつつ、娘を第二王子妃に、息子を次期当主にできたのだから。

(お父様、ある意味で優秀……?わたくしにお兄様をくださるし。)


 ここでまさかのwin-win。

 シャロンの懸念事項は、

1.国外追放された後の生活資金をどうするか

2.置いていくことになるオルフェウスお兄様をどうにかできないか

 だったが、二つともあっさりと解決できてしまうとは。

(なんて素晴らしい取引なの……!ナイスポンコツですわ、お父様!)

 これにはシャロンもホクホク顔である。


「では、わたくしはもう行きますわ。罪人がこの国に留まっているうちは、メーニャが眠れないそうですし。お兄様はいただいていきますわね。素晴らしい手切れ金をどうもありがとうございました。では。」

「お、おう。サビシクナルノウ」

「シャロン!?」

 早口で捲し立てたわたくしは棒読みの偽善者お父様なんて放っておいて、一目散にお兄様の元へ駆け寄る。


「お兄様お兄様、後で説明いたしますから今はわたくしに着いてきてください……!」

 お兄様の腕を掴んでいた使用人の手を叩き落とし、腕に縋りついて耳元で小さく訴える。

「シャロン、……分かった。君のことを信じるから。どういう状況なのか全くわからないんだ、後で教えてくれるかい?」

「もちろんですわ!……衛兵さん!その馬車に乗ればわたくし達は国外に行けますの?」


 急に話しかけられ、驚いている衛兵。

(先ほどから思っていましたが、こんなに不意打ちに弱くて大丈夫なんでしょうか……。)

 なんとなく不安が勝つが、もうこの国とは関係がなくなるから心配するだけ無駄、と思い直す。

「あ、ああ。協力的だなぁ……。こちらとしても早く仕事を終わりたいんだ。ここから隣国との国境までは大体3時間だ。帰ってきたら真夜中になっちまう。」

 げんなりしている衛兵達を見て、彼らも苦労しているのだな……とシャロンは同情したくなってしまう。


「お兄様。これから馬車に乗ります。進行方向に向かって10歩歩いてください。……先ほど衛兵も言っていましたが、3時間ほどかかると思われますわ。その間に状況をお話いたしますから、もう少しお待ちくださいませ。あ、ここから11時方向に10歩、その後階段がございます。」

「うん。シャロン、ありがとう。」


 オルフェウスは混乱しつつも、話の展開的に自分たちはこの国から出ていくらしいということは理解できた。

 彼としても、日常的に生命の危険を感じる場所にいたいわけが無かったから、嬉しい。

(だが、シャロンはまだ17歳の少女。私も22とはいえ、盲目だ。こんな2人でいきなり、使用人もなしで生きていけるとは思えない。どうするべきか……。)

 オルフェウスは妹に支えられながら、自分にできることがないか考えを張り巡らせるのだった。

閲覧いただきありがとうございます。

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