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後日、勇者パーティと合流。そして……。
「置いていかれてしまいましたね……」
「ナルちゃん! 見て見て! 珍しい薬草がたくさん生えてるよ!」
その辺の草花にいちいち立ち止まる教授を見かねて、パーティ御一行は先に行ってしまわれた。
「もう〜、教授のせいですからね」
監督責任として、俺も一緒に残り、教授の気が済むまで待っていた。
そうしていると──
「きゃあああああああ!!!!」
──冒頭に戻る、というわけだ。
「ガァウ──!!」
命の燈が吹き消されるのを感じた瞬間、
「フラッシュ!!」
バチンッ!!
魔物の眼前一センチのところで、小さく、しかし、力強い閃光が瞬いた。
「ナルちゃんたち、大丈夫〜? あの魔物は獰猛だからね〜」
「教授!!」
この人をこんなに待ち望んだことが今まであっただろうか。
「ウガァッ!!」
魔物は目を開けなくなっていた。
当たり前だ。あんな至近距離で光を食らったら。
「クゥン、クゥン……!」
情けない声を出して、草むらへと逃げて行った。
「た、助かっ……」
「助かりましたわ! 命の恩人ですわ!! ぜひお名前を教えてくださいませ!!」
青髪の少女は、教授に食ってかかる勢いで、感謝を述べた。
おいおい、さすがの教授も引いちゃうんじゃ……。
「いいえ、名乗るほどの者ではございません……」
カッコつけてる!!
普段のヘニョヘニョした喋り方はどこいったんだ!
「まぁ……! なんてスマートなお方……!」
ポッと頬を赤らめる少女。頬の赤が青髪によく映える。
──はっ!
俺は気づいた。
これは、この女の子が仲間に加わって、ゆくゆくは、教授が美少女ハーレムを作るパターンでは?
今後も美少女が次々に現れては、仲間になっていく流れでは?
絶対そうだ!
だって、異世界転生って大体そうだもん!
「もしかしたら俺にもワンチャン……」
教授の魅力に寄ってきた美少女が、俺の魅力に惹かれる可能性も……!
「ん? どうしたのナルちゃん? わんちゃん?」
「いや!! なんでもないです!! あはは」
「?」
なんとか教授を誤魔化しているとき、
「おい! メル! どこだ!」
若い男の声が、遠くから聞こえた。
俺と教授が反応するよりも一瞬早く、少女が声の方向へ振り向く。
「お兄様!!」
「メル!!」
どうやら少女はメルというらしい。
木の影から、少女と同じ青髪を持つ青年が出てきた。
俺の世界でいう高校生くらいだろうか。
確かに、メルと雰囲気が似ている。身長はそんなに高くないが、整った顔立ちをしていた。
妹が美少女なら、兄も美少年ってか……。
ん? 兄?
あっ、こいつが友達のいない例の兄貴か!
「心配したんだぞ! 木の実を取ってくると言って、全然帰ってこないじゃないか!」
「それが道中で魔物に襲われてしまいましたの……!」
「何!? 怪我は!?」
「大丈夫ですわ! この方たちが助けてくださいましたんですの!」
メル、ちゃん……と呼ぶのはセクハラにならないだろうか。
メルちゃんは俺と教授を手のひらで指し示す。
「オレからもお礼を言わせてほしい。妹を助けてくれてありがとう」
メルちゃんの兄貴は、堅苦しい口調で直角のお辞儀をした。
ここは教授が何か言う前に、俺が先手を打つ!
「いえいえ、頭をあげてください……! 当然のことをしたまでですから……」
得意の営業スマイル、炸裂!
ほら、これが大人の余裕ってもんだ。
きっと、メルちゃんも俺に憧れの眼差しを……。
「なんと、慈悲深い……!」
やばい、兄貴の目がキラキラしてきた。
若者に尊敬を向けられること自体、悪い気はしないが、ちょっと思ってたんと違うぞ。
「では、俺たちは魔王討伐に行く途中ですので、これで……」
俺はサッパリ別れを告げる。
そうしたらきっと、メルちゃんが「お待ちくださいまし!」と言ってくれるに違いない。
しかし、俺の予想は外れた。
「待て!!」
そう叫んだのは、兄貴のほうだった。
だから、お前じゃないって。
「オレは剣士だ! 魔王討伐、ぜひオレも参加させて欲しい! これ以上、妹を傷つける存在を野放しにするわけにはいかないんだ!」
どん、と自身の胸を叩く兄貴。
「お兄様……!」
顔の前で手を組んで、兄貴を心配そうに見つめるメルちゃん。
「なんて妹思いなお兄ちゃんなんだ〜!!」
そして、俺の後ろで感動に打ちひしがれる教授。
兄妹愛に胸を打たれてしまったらしい。
「一緒に討伐しに行こう〜! 一人より二人! 二人より三人だからね〜!」
「感謝する! よろしく頼む!」
ガシィッ!
教授とメルの兄貴は固い握手を交わした。
「お兄様……ついにお友達が……」
パチパチと小さく拍手するメルちゃん。
兄貴が戦地に赴く心配よりも、俺たちに受け入れられるかどうかを心配していたらしい。
こうして、美少女ではなく、その兄貴がパーティに加わることになった。
異世界転生って、こんな男だらけだっけ……?
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