世界一の、王子様!
少女は夢を見ておりました。
優しい母と、少し不器用な父に頭を撫でられて、くすぐったくて、少女は笑います。
そんな少女を、母と父は愛おしそうに見下ろして、そして、甘い甘い言葉を吐くことを。
「可愛い可愛い、私の子」
「可愛い可愛い、俺たちの子」
そう、言われることを。
少女はずっと夢を見ておりました。
そんな日が、来ることはありませんでしたが。
―――――
遠くの方から、馬車が揺れる音がします。
遠くの方から、馬の足音が聞こえます。
村にいる子供たちは無邪気に遊ぶ笑い声が聞こえてきます。
少女は、耳を塞いで、目を固く閉ざします。
少女にとって、村にいる子供たちの声はあまりにも、幼くて可愛らしくて元気で楽しそうな声だったのです。
そんな時でした。コンコン、と窓がノックされたのです。
少女はゆっくりと瞼を開けました。そして、微かな欠伸を零しながら、窓の方に視線をやります。
そして、目をぱぁっと、まるで太陽のように輝かせたのです!
そこには、王子様が立っておりました。
太陽に照らされ、キラキラと輝く金色の美しい髪と、まるで海を閉じ込めたような青い瞳。
ああ、まさに世界一の、王子様!
王子様はうっそりと微笑ます。
少女は、飛び出さんと言わんばかりに窓を開けました。
王子様は、確かにそこにおりました。
少女は、幸せそうに微笑みました。
王子様は、そんな少女に手を差し伸べます。
少女は、その手を取りました。
王子様は、少女に笑いかけました。
「迎えに来ました、私の愛しい人よ」
少女は、照れたように笑いました。
「もう、遅いですよ。私の王子様!」
王子様は、くすくすと笑みをこぼしました。
「申し訳ありません」
おひめさまもつられて、くすくすと笑みをこぼしました。
「まっていました。ずっと」
おうじさまは、おひめさまの手をとると、キスをおとしました。
「わたしの おひめさま、さあ いきましょう」
それから、その むらで おひめさまの すがたを みたものは とうとう おりませんでした。
____ところで、貴方はどうして閉じようとしているのでしょうか?
まだ、終わってはいませんよ。
夢は、まだ覚めません!