理想は降ってくる
あれから数日が経ちました。
少女は、ぼんやりと家の外を窓越しに眺めておりました。
思いを馳せているのはただ一人。
きらきらと、まるで太陽の光に祝福されているような輝きを放つ金色を靡かせる王子様。
(早く会いたいなぁ)
少女は、王子に返しそびれたハンカチに指を滑らせます。
そっと、少女は目を伏せました。
不意に、外から呼び声がしました。
少女は思わず窓を開けました。
その瞬間、少女の額に石が勢いよくぶつかりました。
少女はその衝撃で少しよろけます。
いつもの、あの子供たちの声が酷く頭に反響していました。
「化け物は出てくるな!」
少女は窓を勢いよく閉め、そのまま壁を背に座り込みます。
___ああ、なんてこと!
少女は思わず爪を噛みます。
あんな無知で愚かな子供たちの笑い声と王子様を間違えるなんて!
少女は激しく後悔しました。
少女は、小さく小さく呟きました。
「違った、みたい」
ぎらぎらと、憎しみが籠った瞳でした。
ふっと、少女は表情を和らげ、にんまりと口を吊り上げると旅人の元へとスキップ混じりに歩きました。
「ねぇ、お父さん!いつ王子様は来るのかな?」
きらきらと、無邪気に目を輝かせて尋ねました。
____額から、少量の血を流しながら。
旅人は、そんな少女にも目もくれずに本を読んでいました。
そして、少々面倒くさそうにこう返します。
「……さぁな。来ないかもな」
少女は直ぐにそれを否定します。
「ううん。絶対に来てくれるの」
恐ろしいほどに、瞳をキラキラさせていました。
少女は、くるくると、まるでダンスを踊るかのように回ります。
____ああ、これはきっと、今まで頑張ってきた私へのご褒美なんだわ!
少女は言います
「だから、神様が私の王子様に出会わせてくれたんだわ!」
少女は、無邪気に笑います。
少女は、信じてやみません。
これから、幸せになることを。
これから、幸福で幸運が続くことを。
少女は、疑うことなく信じ続けておりました。