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絵本より、世界一幸せな魔女さまへ  作者: 早乙女 仲人
ああ、なんて夢見がちな女の子!
4/15

痛がりたい

少女の持つ黒髪は特別()でした。


他の村人たちは皆、色とりどりの美しい髪を持っているのに、少女だけが、単調でした。


まるで、全てを染め上げて(飲み込んで)しまいそうな恐ろしさがあったのです。


村人たちは、極力少女には関わろうとはしませんでした。


____触れては何が起こるか分からない。


それが、村人たちの見解でした。


『触らぬ神に祟りなし』という言葉があるように、少女に触れたら最後なのです。


しかし、子供は違います。


子供というのは無邪気で無辜で、愛らしく、可愛らしい。


____それ故に、時に酷く残虐で、無情です。


子供は言います。


「変な髪!」


「呪われてるみたい」


「こわーい!」


「近寄らないで!」


「『魔女』みたい!」


言葉とは時にナイフになります。


子供たちの言葉は、確かに、少女の心をゆっくりと呑み込む毒となりました。


子供たちは少女に向かって、悪意のない石を投げつけていました。


少女は、泣くことすらも出来ませんでした。

心はもう、とうの昔に凍りついてしまっていたのです。


村人たちは、少女を助ける気はありません。


勿論、少女を拾った旅人でさえ、少女から目を逸らしました。

元より、少女に利用価値があると考えたため拾っただけなので。


それでも、少女は。


「ねぇ、お父さん。血、出たの。」


旅人(お義父さん)に声をかけます。


「手当、してくれる?」


潤んだ瞳で己を見つめる(助けを求める)子供を、誰が無下にできるでしょうか。


旅人は、まだ人の心を捨てた訳ではありません。


旅人は、結局中途半端だったのです。


「……痛いかい?」


少女の骨のように細い腕に出来た真っ赤な傷を手当しながら、旅人は尋ねます。


少女は、ニッコリ笑った後、いっそ不気味なほど子供らしい声で言うのです。


「とっても!痛いよ」


旅人は、罪悪感が多少なりともあるため、気がつくことはありませんでしたが、少女はあまりにも不気味でした。


あまりにも、冷静だったのです。

真っ黒(緑色)宝石(無機質)が埋め込まれたようなその瞳で、旅人を静かに見詰めています。


しかし、それも一瞬で、「気の所為だったか」と錯覚してしまうほど、少女は苦痛で顔を歪めています。


だから、旅人(無知で愚かな者)は気が付きません。


その少女の異常性に。


だから旅人(中途半端な者)は気が付きません。


村で起こっている無邪気な暴力(虐め)にも。


気がつくことは、とうにありませんでした。


だから、少女は笑うのです。


だから、少女は傷を見せ、痛い痛いと言う(泣く)のです。


不器用な少女の、たったひとつの小さなSOS(助けを求める声)にも、誰も気が付くことが出来ませんでした。


_____ただ、一人の男の人(王子様)を除いては

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