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プロローグ

とある森の奥深く。

そこには恐ろしい魔女が住んでいるとされています。


曰く、魔女は髪は地面に着くほど長いらしい。


曰く、魔女の髪は恐ろしいほど真っ白らしい。


曰く、魔女のあの緑色の瞳を見た者は数日後に病で倒れる。


曰く、魔女は奇妙な力を使う。


曰く、魔女の顔は酷く醜いらしい。


曰く、魔女は冷酷無情で、人をその辺の石ころのように殺してしまうらしい。


曰く、曰く、曰く……


噂は噂を呼び、最早原型を留めていませんでした。


どんな厄災も、全て魔女のせいに出来るからです。


時に、人々は森を焼き払いました。


その時、突如として大雨が降り、森は然程焼かれることはありませんでした。


しかし、森を焼こうと提案した村人は雷に撃たれて丸焦げになってしまったのです。


村人たちは恐れ戦き、それ以降、森に入る事を固く禁じました。


村人たちは子供たちに囁きます。


「あの森へ行くと悪い魔女へ食われるぞ」


「暗い夜道をひとりで歩くと恐ろしい魔女が出る」


「時折地面が揺れるのは、魔女が怒っているから」


「魔女は恐ろしい」


「魔女は打ち倒さねばならぬ」


「魔女は醜い」


「醜いから魔女なのだ」


しかし、子供というのは好奇心旺盛です。


ある数名の子供が、森に入り、噂の正体を確かめようとしました。


他の子供たちは止めましたが、好奇心は止まりません。


ある一人の子供は言います。


「僕たちが、魔女をとっちめてやるんだ!」


一人の子供は言います。


「恐ろしい魔女め!この私が必ず倒してみせる!」


子供らしい、強気な言い分でした。


決定打は、子供たちの中でも大柄な子でした。


「お前たち、ビビってんのか?」


にやにやとして、こちらを馬鹿にしているような視線に、止めていた子供たちは嫌な気持ちになり、


「行くなら勝手に行ってろ!」


「私たちは、止めたもんね!」


「ビビって帰ってくんなよ!」


そんな言葉を、大柄な子供は一蹴し、けらけら笑いながら言います。


「居るかも分からない魔女に、お前らは怯えてろ!」


それは、他の大人たちがまだ寝ている、朝方の出来事でした。


それから、数刻が経ちます。


昼になりましたが、森へ行った子供たちの姿はありません。


大人たちは心配しましたが、こういうことは良くあるので、「暗くなったら帰ってくるだろう。」と、然程心配していませんでした。


____しかし、子供たちは夜になっても帰ってくることはありませんでした。


大人たちは、流石におかしいと思い、他の子供たちに尋ねます。


「あの家の子供は、どこへ行ったの?」


子供たちは口を固く閉ざしていましたが、ある一人の女の子が泣きながら等々白状しました。


「あの森へ、行ってしまったの。恐ろしい、魔女が居る森へ!」


大人たちは険しい表情になり、すぐさま村の屈強な男たちを集め、森へ入っていきます。


他の子供たちは、危ないからと家に返されました。


子供たちは、とても後悔しておりました。


(もっと、もっと強く止めておけばよかった)


(ムキにならずに、ちゃんと止めておけば)


_____翌朝


村は騒然となりました。


確かに、森へ入って行ってしまった子供たちは帰ってきたのですが、とうの昔に冷たくなっておりました。


子供たちは何も教えては貰えませんでした。


何を聞いても、「大丈夫」「知らなくてもいい」「森へ行くな」とばかり。


しかしながら、子供たちは、内心(アイツらの自業自得だし)と思っていた為、次第に興味を失い、彼らのことも忘れてまた元気に遊び出します。


もちろん、もう森へ行こうなどと言う子供はおりませんでした。



____「ああ、恐ろしい」


____「ああ、可哀想だ」


____「獣に引き裂かれたような傷」


____「何かに食い荒らされた跡」


____「目が真っ赤だ。泣いていたに違いがない」


____「ああ、可哀想に」


____「助けてやれなくて、すまない」


____「魔女を許すな」


____「こんな惨たらしいことをする魔女を」


____「「「「絶対に許すな」」」」



村人たちは言います。


「あの森には醜く、残酷な魔女が居るぞ」


「あの森へ入ったが最後、生きて出られた者は居ない」


「魔女を許すな」


「魔女を恨め」


「「「魔女こそが、絶対の悪である」」」




本当かどうかも、わからないのにね。




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