二人の祖父の話
これは思い入れがあるから、ちゃんと話そうと思う。怖い話じゃなくて申し訳ないけれど。
小中の頃に俺は祖父が二人亡くした。
一人は母方の祖父
家が近くて、よく遊びに行ってた。猫を飼ってたからそれ目当てもあったけど。
小学生のすぐ横に祖父の家があって、いつも冷蔵庫には三ツ矢サイダーが常備してる。
クソ暑い中で、学校帰りに行ったらいつも飲んで猫と遊んで、引っ掻かれて懐かしかったな。
確か急だった。
なんもわからないまま病院行って、亡くなって、葬式をあげて。
泣かなかったはず。というか実感がなかったのかな。物心着く前はいろいろ連れてってくれたらしい。
葬式でもボーっとしてて、正座が疲れるとか思ってた。長いお経を左耳から右耳に流して周りを観察。真剣な人、泣きそうな人、なにか考えてる人、とにかく居心地が悪かった。初めての葬式で、どうすれば理解できてなかった。でも一つだけは実感した。祖父が亡くなった。
少しでも記憶を遡ろうと遺影を見た時、祖父は笑った。
それだけ覚えてる。
あと一個、この祖父のおかげかと思うことがあって、いつだった大雨の日に急いで帰っていた。自転車で。
俺が住んでた街は、坂も曲がり角も多くて、それなりに交通量があった。
でも幼い頃の危機判断なんてたかが知れてる。
それなりのスピードで数メートルの傾斜を駆け抜けて角を曲がろうとした。
夢中になって自転車を漕いでいたから何も頭になかった。
奇しくも車でいうドリフトみたいになったけど、自転車でやると横に倒れるんだよね。
死んだと思った。
走馬灯が駆け巡るかのように視界が真っ白になった。生暖かい空気が体を包み込んで気持ちよかった。なんとなく死を受け入れたんだと思う。
でも走馬灯は見ていないし、死んでない。
気づけば、立て直して普通に自転車を漕いでいた。
家に帰って母に話したら、祖父が守ってくれたんだよって言ってくれた。
次は、中学の時
父方の祖父を亡くした話
車で30分くらい行った場所にあって、海が近かった。それもあってよく一緒に釣りに行ったな。父方の祖父は犬を飼っていて、会うたびに餌をくれってせっつかれたのはいい思い出だ。
これもあの家のせいかわからない。
前の“視界の端にいる女“の家に住んでる時だった。
さすがに、二回目で状況は理解してた。
悲しみに溢れた状況で本当嫌なんだよね。
不思議な話っていうのが、祖母から聞いた話。
祖父は亡くなる数年前から寝たきりで、祖母が面倒を見ていた。
祖父が亡くなった翌朝
寝ていた祖母が呼ばれたらしい。
「おーい、ご飯はまだかー」
って。だいぶ昔のことだから口調まではよく覚えてないけど。
この話を一緒に聞いてた父は、気のせいって言ったけど、俺は信じたかったな。
祖母も信じてたと思う。
いつも仏壇に朝食を供えていたらしい。
この話は、個人的に思い入れがあって
友達なんかにするんだけど、決まってタバコの匂いがする。
二人の祖父もヘビースモーカーだったらしいから。
俺は中学からタバコの匂いが嫌じゃないんだけど、それで俺の喫煙者なったんだけど。
たぶん爺ちゃんのせい。