最高の婚約者【千文字作文】
俺の元婚約者は最高の女性だった。
優しくて、可憐で、所作も美しく、才女だった。
いずれは公爵家を継ぎ、女公爵となることが決まっていた。
俺はそんな彼女の支えとなるのを期待されていた。
でも、当時の俺は不満を持っていた。
どうして俺が婿養子になるのではなく、彼女が女公爵になってそれを支える立場にならないといけないのかと。
強欲で、傲慢で、貪欲だった俺は…彼女への当てつけに浮気をした。
が、俺は彼女の実家に最初から信用されていなかったらしい。
結婚前に素行調査をされて、あっさり浮気がバレた。
相手はうちの屋敷で働いていたメイド。
その後は色々大変だった。
メイドは多額の慰謝料を払わされ、娼館で働くこととなり。
俺は両家の両親に詰られた。
うちの親が精一杯の賠償金と慰謝料を用意してなんとか向こうに矛を収めてもらって、醜聞にはなったもののなんとかそれで済んだが両親はそれで倒れた。
両親から爵位を継いだ兄は、侯爵として領地領民を守りつつ両親を癒そうと頑張った。
俺はそんな兄に絶縁宣言され家を出された。
だが、それ以上に俺を苦しめるのは。
二進も三進もいかなくなり、寮付きの肉体労働での労働生活をせざるを得ない状況よりよほど辛いのは。
『それでも、私は本当に心から貴方を愛しています。どうか、お元気で』
最後に聞いた、彼女からの別れの言葉だった。
彼女はあんなに最低な俺を、それでも愛してくれていた。
彼女は最後まで俺を口汚く罵ることなどなく、愛を口にした。
いっそ責めて欲しかった。
憎んで欲しかった。
でも彼女は最後まで俺を愛していた。
償いたくても償えない罪悪感、自責の念、そんなものばかりが今でも頭を悩ませる。
どうしたら、俺は彼女から解放されるんだろう。
彼女の最後の別れの言葉は、俺にとって一生つきまとう呪いになった。
「お嬢様、何故最後にあんなことを言ったのです?」
「本心だからよ?」
「お嬢様は優しすぎます」
侍女がプンスカ怒るけれど、仕方がないと思う。
彼を愛しているのは本当だし、だからこそ彼に一生私を忘れないで欲しかった。
きっと私の言葉は彼にとって消えない呪いになる。
そうであってほしいと願って言ったこと。
まあでも。
「私も次の恋を探さなきゃ」
「きっと御当主様が良い相手を見つけてくださいますよ」
「そうね。ふふ、楽しみ」
幸せになって、あの恋はもう忘れよう。
彼には自分の犯した過ちは、忘れさせないけれど。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました!
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