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カチコミ

 こんな夜更けになっても執務机に向かって書き物をしている男が居た。

 誰に見られているでもないのに折り目正しく服を着込み、姿勢良く椅子に座っている。


 ここは子爵の邸宅だ。


 俺も今回ばかりは侵入に苦労すると思ったんだが、守備隊の連中は皆でゆったりと火を囲って酒宴をしていやがったからな。

 クルアンの家の柵は冬の積雪に備えて高く作られているとはいえ、雪かきもしていないから楽に超えて来れた。最近見直してた所だってのに、怠慢が過ぎるんじゃないですかねえ。


 ガラス窓を叩いてやれば、訝し気にこちらを向いた子爵が眉を寄せ、机の上にあるベルへ手を伸ばす。

 そいつを鳴らされるより早く言ってやった。


「娘を取り戻したくはないのか」


 動きが止まる。

 窓越しだって声は届くからな。

 どこまで響いたかは知らないが、子爵も気が変わったのか、ベルを置いて窓の鍵を開けてくれた。


「よお」


「随分と非礼な訪問だな、冒険者」


 中々に強い敵意だ。

 悪くない。


「育ちが悪くてな。ついでに言うが、いい加減御宅の警備を見直した方がいいぞ。聖都の政敵が今の内にって消しに来たら、多分その日の内にアンタは死ぬ」

「キサマがそれでないという保証がどこにある」

「ンなことしたらマリエッタが悲しむだろ」


 娘の名を出しただけで野郎の顔が変わった。

 やっぱりな。


 けど優しくなんてしてやらねえぞ。


 今日はそんなことの為に来たんじゃないんだからな。


「誘拐犯が俺に何の用だ。いやそうか、金を要求しに来たんだな。幾ら欲しい? 金目的で動く冒険者らしい卑しさだが、大人しく差し出すのなら――――」

「随分と饒舌だな、子爵。俺は似たようなのを何度も見たことがあるよ。余裕がない奴ほど攻撃的になる。まるで、獣みたいにな」


 黙り込む、が、表情は一層険しくなった。

 それでも冷静さを保ち続ける男は、静かに息を抜いて己を整える。


「何の用だ」


 淡々と言葉を投げかけてきた。

 夜半の侵入者に対して、随分な度胸だ。


 なるほど聖都での政争って奴も楽なもんじゃなかったんだろう。


「ご機嫌如何かと思ってな」


 だが駄目だ。

 お利巧なテメエに用はねえ。


 だってそうだろう?


 テメエはそうやって、これまでも、妻を見送り、長男を見送り、マリエッタを見送って来た。

 お上品に。

 貴族様らしく堂々と振舞って。

 周囲の声にも動じず、私は盤石ですって顔をしてきやがったんだろう?


 貴族社会ってのがどんなもんかは知らないけどよ、それで手放された家族が何を思ったか、ちったあ考えてみろってんだ。


 なあオイ!!


「女に逃げられ、息子に逃げられ、挙句娘に逃げられて、一人ぼっちになった子爵様のご心境って奴に興味が湧いたんだよ」


 右肩が浮く。

 それでも身体は留まった。


 が、


「マリエッタは今日、泣いてたぜ」


 笑いながら言ってやった途端、男は拳を振り上げて殴り掛かって来た。


「娘に何をした!!」


 左頬へきっちり決まる。

 防がなかったからな。

 だってのに次の左拳は中途半端で、距離が詰まり過ぎているから殴るというよりも押すみたいになっちまってる。


「……自分で考えてみな」

「っ、この……っ、クズが!!」


 胸倉を掴んで一発。

 二発目を受けてから、また寄り過ぎてた馬鹿に頭突きをかます。


 派手に転んだ野郎を見下ろしながら笑ってやった。


「どぉした玉無し野郎ォ……!! そんなだから女に逃げられる」

「キサマに何が分かる!!」

「分かるかよ貴族の考えなんざ!!」


 胸倉掴んで引き起こし、腕を折り畳んで横殴りにする。


 倒れるかと思ったが、机にしがみ付く様にして耐えてきた。


「家族の誰か一人にでもソイツを話してみたことがあるのかよテメエは!!」

「家長がそんな情けない姿を見せられるか!!」

「信条は結構だがなっ、それでこのザマかよ!!」


 殴り掛かってくる。

 へろへろだ。

 だが押し付けられた拳は身体ごとの重みを伴い、こっちの身を圧してきた。


「好き勝手に生きて責任も負わない無頼気取りがッ、偉そうに説教をするな!!」


「っははー!! なんだよしかめっ面以外に良い顔出来るじゃねえかっ! だが腰が入ってねえな!!」


 腹に一発。

 だが身を離すより先に子爵が突っ込んできて鼻先に頭突きを貰った。


 調子付いて腕を振ってくるので、そいつも貰っておく。


 再び胸倉を掴んで、更に一発。


 流石に男の腕力だ。少々ふら付きながらも身を立てて、子爵の頭を掴んで振り回す。派手に転がっていった。


「グランドーレ家とやらもコレで終いだなァ! おサムい人生だ。女にゃ逃げられ、長男からもそっぽ向かれた。なあオイ子爵さまあ!?」


 立ち上がろうとして、崩れる。

 が、まだ立とうとする。


 寄っていって、しゃがみ込んだ。


 睨む目はまだ生きている。


 ほくそ笑んだ。


「貰いもんの皮を剥いだらこんなもんかよ? あぁ、それならそれでマリエッタにもこう伝えてやるよ。お前の親父はこの期に及んで体裁にしがみ付いて、目の前で煽り散らかしてる卑しい男一人どうにも出来ない腰抜けだったってなあ」


「っ、っっああああああ!!」


 頭突きをしてきた。

 が、身を引いて避ける。


 そこへ子爵が覆い被さって来た。


 馬乗りになって顔面を殴りつけてくる。

 一発、二発。三発目で息があがって、間が出来た所で殴り返す。

 綺麗に入った。


 だからよ、いい加減防御するってのを覚えろよ。

 今までの全部、綺麗に入り過ぎてんだろうが。


「お前にっ、っ、お前に何が、何が分かる!!」

「おう言ってみろよ、このへたれ野郎っ!!」


 胸倉へ伸びてきた手すら震えて、なのに目だけは一向に火が消えず、腫れてきた瞼に邪魔されながらも睨み付けてくる。


「私の大事な娘を返せェ……!!」

「だったらテメエで取り返しに来いって最初から言ってんだろうが!!」


 思いっきり身体を突き飛ばし、ぶつかった本棚からどさどさと本が落ちてくる。

 指が引っ掛かって、上等そうな服の襟が派手に伸びた。


「なンだテメエッ、端から諦めてやがったのか!! どうせ今回も無理だァ!? 妻が駄目で、兄も駄目だったから、それで娘も諦めてクソみてえな冒険者に丸投げしやがったのかテメエは!!」


「ならどうすれば良かったんだ!!」


 投げ付けられた本のしょぼいことよ。

 そんなの、今日のマリエッタの雪玉のが威力あったぜ、お父さんよお!!


「俺が何の策も講じずにきたとでも言うのか!! ふざけるな!! それでも駄目だったんだよ!!」

「なんでその中にっ、ごく普通に家族と話をするってのが入ってないんだよ!! 何度も言わすなッ、テメエはマリエッタを諦めたんだろうが!!」

「攫ったキサマがそれを言うのか!!」

「ああ言ってやるさ!! ほんの最近出会ったばかりだがなあっ、テメエよりよっぽどアイツに寄り添って話をしてきたぜ!! なあっ、マリエッタは泣いてたんだよっ! 父親を一人にしちまったって、ずっと後悔してたんだよ!! なのにテメエは自分守ってだんまりかよォ……!!」

「俺は……ッ、俺はァ……!!」


 あぁ言ってみろよ。

 どう足掻いたって失敗を積み重ねてきた事実の変わらない今を踏まえて、必死に利口なおつむを回して、単純な言葉一つを吐き出せばいい。


 ごめんなさい、でも。

 悪かった、でも。

 戻って来てくれ、でもいい。


 なんでも。


 お前が今一番求めてるものを現す言葉があれば、マリエッタは戻るのを躊躇わない。


「…………っ、ぁ……っっ、~~!!」


 だけどクソ親父は結局、そこへ辿り着くより前に力尽きた。

 顎が動かず、身体を起こしていることも出来ずにひっくり返る。


 ただ、かろうじて動く右手を、駄々を捏ねるみてえに床へ打ち付け、泣くみたいに唸り続けた。


    ※   ※   ※


 多分よ、一番拙い状態になってるのは父親の方だと思った。

 妻に逃げられ、長男に逃げられ、娘にも逃げられて。

 父親って生き物が耐えられるのかってよ。


 まだまだ所帯も持っちゃいない俺でも、そこはなんとなくわかったよ。


 荒っぽいのは勘弁してくれ。

 生憎と俺は本当に、お上品な解決方法ってのが分からないんでな。


「…………マリエッタを傷付けたら殺す」


「散々ボコられて、さっきまで気絶してやがった奴の第一声がそれかよ」


「黙れ。この俺にここまでやった奴は初めてだ。政争に敗れた時も、報復を恐れた連中はあの手この手で遠回しに嫌がらせをしてきただけだったからな」


「聖都ってのはお上品だな」


「っは! それは皮肉か、冒険者」


 そりゃそうだろう、と言葉を投げて、俺も痛む身体をどうにか伸ばした。

 休めはしたが、痛みはある。

 運動不足の中年オヤジ相手とはいえ、痛えもんは痛えんだよ。


「ロンド=グラースだ」


「今更なんだ。依頼を出した時点でその程度は調べてある」


「お前の名前は」


「依頼書も読めんのか」


「知らねえよ、俺はお前に聞いてんだ。まだ一度もちゃんと名乗られてねえ。それとも何か、吟遊詩人の詩みたいに、名乗るの禁止されてたりするのかよ」


 音に聞こえし大英雄、自ら名乗るまでもなく、誰もがその面貌に言葉を揃える、ってな。


 実際聖都じゃそれが通ったのかもしれねえな。

 けどここはクルアン。


 政争渦巻く西方諸国とは違い、腕っぷしで成り上がる冒険者の町だ。


「…………ユスタークだ。ユスターク=グランドーレ」


「お上品な名前だな」


「それは皮肉だな、ロンド=グラース」


「どっちでもねえよ。普通にそう思っただけだ」


 けどまあ、聖都風吹かせてる奴にはそう聞こえるのかもな。

 ひっくり返ったままのユスタークが息をつくと、今更滑り落ちてきた分厚い本が腹に当たってむせる。


「はははっ! 本にやられてやがるっ」


「っ、ごほっ、ごほっ! ~~、笑うなロンド=グラースッ」


「で? お前はどうしたいんだよ、ユスターク=グランドーレ」


 言葉を投げたら野郎はまただんまり。

 けど探している素振りはあったから、立ち上がって執務机の椅子に座った。


 見た目は相応に小綺麗だが、硬くてゆったりとは座れない。

 本当に執務する為の椅子なんだな。


「なあ」


 机の書類には目もくれず、俺は崩れた本棚を眺めた。

 文字は分かるが、俺が見た事も考えた事もないような単語が山ほど並んでいる。

 これを全部読破してるってんなら、相当なもんだ。


「…………なんだ」


 いささか鬱陶しそうに応じてくる奴に言ってやる。


「お前がまだ明確な言葉を作れないなら、良い機会だと思えばいい」


 蝋燭灯かりが目元で揺れる。

 そういえばよく落ちて火事にならなかったな。

 途中からすっかり忘れてたよ。


「何の話だ」

「今やお前は独り身だ。妻はまあ、勝手に生きるだろうし、長男もそう。娘は、まだ俺の方で預かっててやってもいい。挙句にお前、ははっ、政争にも敗れて聖都に戻れないでいるんだろ」

「皮肉か」


 いいや、本気さ。


「今なら何やらかしたって、被害を受けるのはテメエだけだ。どうだ、身軽だろう? やりたいことは何でも出来る。おまけに金も権力も手元にあるんだ、男なら夢の一つ二つは描いてみようぜ」


 そいつが聖都へ復帰することでも、ここでやり直すってことでもいい。

 少なくともマリエッタはアンタを見捨ててない。

 家族抱えて生きていくのだって立派な人生だと思うさ。


 望むか、望まないか、それだけで満足出来ないかはあるだろうけどな。


 あぁ本当に今回は好き勝手言っている。

 テメエの事棚上げして。

 でもさ、スカっとしたろ。

 万能薬みたいに掲げるつもりはねえが、うっ憤溜まってるなら喧嘩の一つくらいしてみてもいいもんさ。それが出来る相手さえ居るならな。


「そういうキサマには何がある。キサマの事は調べたぞ。グランドシルバー……長年ゴールドに上がっては転落を繰り返し、情けなくもギルドにしがみ付いている経験だけは豊富な底辺冒険者」


 …………ほう。


「しかも、ははは……最近失敗した依頼でギルドからやっかまれていると来た。もう成功する余地もない限界寸前の身で、偉そうに俺へ説教とはな。あぁそうだ、女癖が悪いとも聞いた。次から次へと手を出して、その女共に守られて今のしょぼくれた地位を保っているんだとか。なんでもクルアンの内外に二十人以上もの隠し子が居るそうだな。その責任一つ取らずにふらふらしている者が家族との付き合い方に口出しをするとは、図太さだけは賞賛に値する」

「とりあえず言っておくが隠し子なんざ居ないからな!? 本当に居たらちゃんと責任は取りますぅ! つーか誰だよそんな話したの!? 濡れ衣だぞ!」

「春先にキサマから捨てられた憐れな受付嬢、と言えば分かると聞かされたが?」


 アリエルさあん!?


 お前何言っちゃってるの!? 


 そりゃあ今回の件でも相当頼っちゃってるけどっ、しかも依頼主と揉めて仕事放り投げた挙句に娘へ無理矢理依頼元を切り替えたと言い張って子爵令嬢を拠点へ連れ込んだりしてるけどっ、貴方様の回してくれたギルド設立へ向けた関係作りの計画をポイしちゃったのもたしかだけどさあ!?


「正直どこまで話が真実かは疑っていたが、その反応を見るにかなりの割合で当たっているらしいな。なんだ? 最近パーティを設立する際、ギルドの有望なパーティから次々と引き抜きを行って、平気な顔をしているとかいうのも本当か?」


「ぐっ、ぬ、うぅ……!!」


 プリエラもエレーナも自分から望んで出てきたんだ俺じゃない。

 まあエレーナに関してはゼルディスと特に話しちゃいないが……いずれリディアとかもこっちに引っ張って来たいと思ってるのも事実だが…………いや別に害意はないよ、結果的に他所から人が移ってくるってだけで。

 ほら、最近は外パーティで見習い上がりの連中も育成してる。

 俺、ギルドに貢献してる。


 …………よな?


「そんな男の元に娘が走った父親の気持ちがキサマには分からんだろうな。女を侍らせ、次々と手に入れては捨ててきたような奴に……所帯を持って踏ん張る男の気持ちが分かるか」


 それは正直すみません分かりませんとしか。

 くそう、コイツ言い合いになった途端に勢い付きやがって……。


 あぁ分かったよ、二回戦はテメエの勝ちだ。

 俺の負けだよっ!


「全く冒険者という生き物は……あのゼルディスとかいう男のみならず、上にも下にもそんな輩が蔓延っているのか」


 ………………なんかとんでもない所から飛び火してるのな。


 もしかして聖都の貴族が冒険者嫌ってるのって、ゼルディスがあっちで女を食いまくったせいじゃないだろうな?


「それで?」


 あン?


「……はぁ」


 っ、ああ分かったよ! 望みの話な! 変な方向に逸れてたから意図を取り損ねただけだよっ!!


「俺の望みは自分のギルドを設立することだ。自分の望む、自分の理想とする冒険者で居る為に。それとまあ、最近は魔境の果てまで行ってみたいって思ってるよ」


 リディアの望みだが、俺にとっての望みにもなった。

 どうだデカいだろう。


 なんて思ってユスタークを見てやったら、野郎は心底呆れた顔で、


「……………………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 なんてデカいため息を吐きやがった。


「今の自分を冷静に観察して、もう少し実現性のある望みを考えた方がいい。お前はどうせギルド設立に要する三権認可制すら知らんのだろう? っはは、王陛下も神姫も、シルバー程度のキサマには興味を持つまい。諦めて畑でも耕していろ。土塗れになって働く合間に語る分には笑えるが、そのザマで言われると頭の出来を疑う。いやなるほどコレが冒険者か、真っ当な人間には不可能な生き方だ。そうだな、古来より王は道化を脇に置くというから、たまに眺めて己の正気を確認するのも悪くない。なんだその顔は、すぐ暴力か野蛮人め、そもそもこの俺程度相手にあれだけ打ち込んでようやくという程度の奴が思い上がるな。ほうら今度は何発だ? 戦い慣れもしていない素人相手に無駄な時間を使う奴だなと呆れていたくらいだからな、そもそもその程度でパーティリーダーなど務まるのか? そうだやってみせろ、腕っぷし自慢なんだろう? せめて俺を一発で沈めてみてから大言を吐いて貰おうか、ぁあん!?」


 折角のご所望なので手加減を止めて一発綺麗に入れてやったら、白目剥いて気絶した。泡がぶくぶく口から噴き出して、あーこれは結構拙いかなと思っていた所に執事が突入してきて、これはやり過ぎだろうと叱られた。


 うん、最初の喧嘩中、ずっと扉前で待機してくれてたもんな、お前。


 ユスタークが寝てる間に一度様子を見に来て、事情を説明したらやんちゃな顔して去っていったが、まあ今回のは勢いだって、ほら。


 今日は起きそうにないので退散することにしたが、苦労人のご主人をぼこぼこにした俺を使用人の皆さまはいたくお怒りで、ひたすら冷たい視線を浴びながら屋敷を出ることになった。


    ※   ※   ※


 ついでにだけど。


「っは。馬鹿じゃねーの」


 なんだかんだ殴られて怪我してる俺を見て、プリエラはパーティの神官全員へしばらく回復するなと司令を出した。

 頑張ったのに、って落ち込んでたらエレーナがこっそり回復しに来てくれたんだが。


「なあロンド、約束は守るべきだよなあ? 例えばテメエが隠してるつもりのアダマンタイトなデカパイ話とかよお? 地下のお? あー、酒場でえ? なんだっけなあ、ロンドぉ?」


 いつの間にバレてたのか、微妙にボヤかしつつも脅してくる副リーダー様にリーダーは敗北した。

 エレーナすまん、やっぱり約束は大事だよ。

 自力で治すから。

 うん? アダマンタイトって何の話って? 俺も良く分からないよ、プリエラは酔ってるんだ。

 誤魔化したらエレーナからもそっぽを向かれて頬を摘ままれた。


 ただ。


「あ、あの……これ、傷薬です…………」


 状況が落ち付いた所を見計らって、ティアリーヌが実家謹製という薬を持ってきて塗ってくれた。なんでかマリエッタも一緒で、二人は脱がせた俺の上半身を見ながらキャーキャー言いつつ治療をしてくれて、おかげでようやく痛みが落ち付いて寝る事が出来た。


 なんでか、眠りに落ちるまでクソ子爵サマがそれ見た事かとほくそ笑んでる顔が浮かんで離れなかった。






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