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下弦の盃(さかづき)  作者: 朝海
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最終章「独白~それぞれの未来へ~」

 澪

 今だから話そう。

 俺はお前と比べられるのが嫌だった。

 両親に似て甘いお前が嫌いだった。

 いい子ぶっているお前が気に食わなかった。

 だがな。

 いくら、説得をしても俺の考えは変わらない。

 変える気はない。

 どちらにしろ、お前の人生はお前のものだ。

 好きにすればいい。

 俺からは以上だ。

                   本橋要


 澪

 体の調子はどうだ?

 無理をしていないか?

 無茶をするところがあるから、従兄妹として心配だ。

 つらい時はつらいと言ってくれ。

 心が苦しい時はきちんと休んでほしい。

 きっと、お前の思いを受け入れてくれる人が出てくるはずだ。

 理解をしてくれる人がいるはずだ。

 抱きしめてくれる人がいすはず。

 その人に精一杯甘えてくれ。

 困らせるぐらい我儘を言ってみるのもいいだろう。

 それが、私の願いだ。

                   菊池那智


 澪様

 あなたにもう一度、力を貸してほしいと言われた時は、私は嬉しかったです。

 私を忘れずに覚えておいてくれたことに、感謝しかありません。

 それに、私がいなくても涼、文、須田さんは目を見張るほど成長していました。

 流石、澪様です。

 今後、あの子たちが道を踏み外すことはありません。

 まっすぐ、前を見据えています。

 未来を見つめています。

 三人はまだ若いです。

 悩むこともあるでしょうが、そこは私が手を差し伸べたいと思います。

 どうか、澪様の人生が幸せであることを心から願っています。

                      島本瞬


 ねぇ、澪様。

 今、あなたはどこで何をしていますか?

 元気でいますか?

 体調はどうですか?

 私は現在、澪様が手続してくれた施設ではなく、別の福祉施設で働いています。

 少しでも、澪様から卒業できるようにと。

 あなたは、両親がいない私たちに、生きることの強さを教えてくれました。

 生きることの大切さを気づかせてくれました。

 執事としては至らぬところがあったかもしれませんが、澪様の傍にいられたことは私たちの誇りです。

 次、もし、会うことがあればお土産話を楽しみにしております。

                    野田文


  澪様

 あなたがいなくなって数年の時が過ぎました。

 今、どこで何をしているなど私は聞きません。

 あなたは空っぽだった私の心を埋めてくれました。

 初めて会った時、傍にいるならこの人だと直感で思いました。

 あの時の私は澪様の圧倒的な姿に引き付けられました。

 澪様には人を引き付ける力があります。

 だから、自然と人が集まるのでしょう。

 慕われるのでしょう。

 澪様に主に選んだこと間違いではなかったと思います。

 妹共々、感謝しかありません。

 ありがとうございました。

 いつか、またどこかで会えることを楽しみにしております。

                    野田涼



 澪様

 私、須田あかりは大学を出て友達と一緒に企業を立ち上げました。

 子供向けの玩具の販売と製造をしています。

 あの頼りなくて守ってもらってばかりだった私が社長ですよ?

 ふふ、意外でしょう?

 今の仕事は忙しいですけれど楽しいです。

 毎日、充実しています。

 私は極道の世界は、残酷で冷酷な場所だと思っていました。

 でも、澪様みたいな人たちもいるのだと知りました。

 武器を持たず人を殺さないというやり方も手段なのだと分かりました。

 歳を取り仕事をリタイアしたら、私は微力ながら白蘭会の意思を引き継いでいきたいと思います。

 これからも、澪様に恥じぬように生きていきたいと思います。

 胸を張って前に進んでいこうと思います。

 こんな私に希望をくれてありがとうございました。

                   須田あかり


 いつか、道が再び交わるまで。

 あなたが本当の笑顔で割られる日が来るまで。

 私たちは澪様がただいまと言える場所を作って待っております。

 再会を心待ちにしております。

 それは、文、涼、あかり、那智がまた澪に会えると信じて心の中でかけた言葉でもあった。

 五人の耳にはあの時と変わらず、白蘭会の――本橋家の家紋が光っていた。


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