エピソード3
この国の辺境のむらの市場では活気が漂っていた。
「人参、人参が売ってるよ〜!」
「朝どれの卵はいかが〜」
そんな声が漂うところに一人の少女がいた。
「リンちゃん!」と言われて振り向いた少女は、
普通の茶髪の目の色だけ緑色の少女だ。
新しいポーションができたよ!と言うように、
話しかけた女性に微笑む。
「そうかい。りんちゃんのポーションは高く売れるからね。
こっちもガッポガッポで儲けが出るよ。」と言って、
笑い返す。
「リンちゃんはすごい薬師だったんだろうねえ。記憶がないってもったいない。
リンちゃんは可愛いのに結婚しないのかい?」というと、
リンと言う少女は
首を振り、悲しそうな顔に一瞬なり、笑って、
店で用意をする。
アリサは彼女を見て、微笑ましく思った。
アリサが彼女を見つけたのは少し遠いところに薬草を取りに行った時。
一人の少女が道で倒れていたのだ。
死んでいるのかと一瞬思ったが、
彼女は水をあげると、元気になった。
彼女に名前を聞いたが、彼女は答えない。
なにかおかしいと思うと、彼女は言った。
自分が誰でどんな人なのか思い出せないと。
どうやってここまで来たのかわからないと。
そんな彼女を捨てておくことができず、
家まで連れて帰ってきたのだ。
約一年半前の出来事である。
リンは私が名付けた。
可愛らしく、でも芯のある彼女にぴったりだから。
そんな彼女だったが、記憶が無くなる前、薬師のしごとをしていたのではないかと推測をしている。
ポーションづくりや、薬づくりが得意だったからだ。
彼女に記憶を取り戻させてあげたい反面、取り戻させたくない気持ちが交差する。
取り戻してしまったら、もう、この楽しい生活も終わりを告げる気がするから。
そんな生活も終わりが近づいて来ているということを知らずに。
「アリサじゃねえか。そういえば聞いたか?」
話の発端は近くで農家を営んでいるベンからだった。
「なにかあるの?」ときくと、
「この国の貴族様が来るらしい。」
「なんで?」と聞くと、
「ダンジョン調査かね?あとは農村調査だろ。」と言った。
まあ、そんな偉い人が来ても俺らには関係ないがな。とガハガハ笑っていた。




