表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄のおつかい  作者: 坂町 東
戦いの爪痕
17/21

17

太陽が丁度、真上に着た辺りで、エイラたちは帰路に着いた。


 ヘレナとは、森を出た辺りで分かれた。リネットたちも、このまま石切場を尋ねるということで、その場で解散となった。妖精は、なぜか森の出口まで付いてきて、森を出る直前で、ジルクニフと話をしていた。援けてもらった、お礼として何かを受け取ったようだった。

「何をもらったの?」


 だだっ広い、田畑の間を歩きながら尋ねた。ジルクニフは、礼の品を手のひらに載せて、エイラの前に差し出した。一見は、花びらのようだ。青色で、表面は少し艶々している。


「なにこれ?」

「さあな」

「妖精は何かいってなかったの?使い方とか、なんのためのものなのか、とか」

「肌身離さず、持っているようにと言われた」

「お守りみたいなものかな?」

「さあな」


 ジルクニフはそれを懐に仕舞った。


「ところでさ、ジルって、何者?」

「どこにでもいる、普通の一般人だ」

「そんなわけないでしょ~。ターナー中佐と知り合いで、同時詠唱ができて、銃弾を受けてもなぜか無傷。これだけで、既に普通の人じゃないもん」


 茶化すように言うと、ジルクニフは少し早足になって、

「ただの、ちっぽけな人間さ」


「じゃあさ、なんで「おつかい」みたいなことやってるのか位は教えてくれない?」

 エイラは、ジルクニフのやっていることを「おつかい」と名付けていた。これが最もしっくりくる呼び方だったからだ。


「友人の頼みなんだ」

「友人って?ターナー中尉?」

「いや、別人だ」

「でも、変わった頼み事だね。その……ニーラ人の助けになってやってくれ、みたいな感じでしょ?」

「いや、少し違う。ニーラ人に限ったことではない」

「そうなの?」

「はっきりと頼まれたわけではないんだ。だから、そいつの望みがこれで正しいのか、分からない。だから、俺は俺にできることをすると決めた」

「なんかさ、ジルって時々、要領を得ないこと言うよね。回りくどいっていうか、抽象的っていうかさ。そういうの、やめたほうが良いよ。面倒くさいから」

「お前は、その率直すぎる発言を直すべきだ」

「欠点だと思ってないから」

「お前の直すところはまだある」

「何?」

「≪エルソレーション≫の使えない軍人は初めて見た」

「あ、あれは違うって!てんぱっててさ、初めての実戦だったし……」

「実戦が初めて?戦争には行かなかったのか?」

「私、去年までは南部に居たの。だから、前線には行ったことなくて」

「なるほど。にしても、酷い出来だった。あれで、護衛とは笑わせる。……まあ、もう終わりだがな」

「終わりって?」

「お前の、護衛任務だ」

「え?」

「ターナーから聞いてないのか?」

「うん。……でも、そうだよね。ログウッドの案内人として、私が適任だったからってだけだもんね……」


 最初は、嫌々、承諾した任務だった。護衛の対象は変人だし、何をするのかも、さっぱり分からない。でも、今は、もっと続けたいと考える自分がいた。エイラは、その気持ちに素直に従うことにした。


「ねぇ。もう少しだけ続けさせてくれないかな?」

「どうして?」

「見てみたいの。ジルが何をして、何を成すか。学べることがたくさんあると思うから」

 ジルクニフは、どこか、そっぽを向いて、

「好きにすればいい」

「え?ほんとに?いいの?」

「こっちも、護衛が何度も変わるのは目障りだからな」

 と、少し嬉しそうな声で答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ