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ストーリー・フェイト  作者: 白糖黒鍵
RESTART──先輩と後輩──

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狂源追想(その十五)

修正しました。

「異常事態も異常事態。とびっきりのイカれ具合だ。さあ、デッドリーベアか岩石土巨兵(グランドジャイアント)か……果たして、どっちになるんだろうな」


 と、依然余裕綽々に、何処か面白んで楽しむように。ジョニィさんがそう呟いて、そうしてその時はとうとう、遂に訪れる事となる。


 離れた木陰から俺たちが見ている最中で、デッドリーベア陣営と岩石土巨兵陣営が、相見える。


 今の今までヴィブロ平原を激走し、突き進んでいたデッドリーベアの群れがそこで止まる。


 瞬間、ヴィブロ平原全体に激震の緊張感が走り、すぐさま異様な雰囲気に包まれる。


 デッドリーベアの群れと自然系魔物(モンスター)。そして、特異個体(ユニーク)と岩石土巨兵────征く存在(モノ)と阻む存在が相対し、互いを互いに睨めつけ合っていた。


 と、そこでここまで四足歩行だったデッドリーベアの特異個体が、ゆっくりと悠然に立ち上がる。巨体も巨体────それでも、対面する岩石土巨兵の方がまだ巨大。


 見上げる特異個体。見下す岩石土巨兵。それぞれ率い、束ねる同胞たちが静かに見守る最中────その瞬間は、突然の事だった。


 岩石土巨兵が巨拳を振り上げ、その巨拳をすぐさま振り下ろす。その一撃を放つ相手は、無論特異個体。


 そしてその巨大さに些か見合わない素早さと速度で、巨拳は特異個体へと襲いかかった。


 ドゴンッ──激突の瞬間、その場が二度三度に渡って陥没し。波状の形で窪地(クレーター)は発生し。ここら一帯の大地を丸ごと揺らしてみせた。


 静寂が流れる。それは数秒、十数秒と続いた。そして──────


「ッ!」


 ──────振り下ろされた岩石土巨兵の巨拳に()()()()()()()


 それは瞬く間に腕全体にまで及んで、直後儚く、盛大に砕け散ってしまった。


 ボロボロと、ついさっきまでは腕であったはずのそれが崩れ去り、ただの岩と石と土に化していく最中。押し潰されたかに思われていた特異個体(ユニーク)は依然健在の様相で至って平然と佇んでおり。


 それから、堪らずその場から一歩引き下がった岩石土巨兵(グランドジャイアント)へ詰め寄る。


「ガアアアアアアアアッ!」


 という、雄叫びと共に。特異個体は一気に跳躍し、まるでお返しだと言わんばかりに血色の剛棘毛に包まれた巨腕を、岩石土巨兵の脳天から振り落とす。


 並の物理攻撃はおろか、魔法も受け付けない強度を誇る岩石土巨兵。しかし特異個体の鉤爪が頭頂部に触れたその瞬間、まるでボロ紙でも破り裂くかのように────容易く呆気なく、断ち砕かれて。


 そして数秒の間に、岩石土巨兵の巨体の上から下まで、特異個体の鉤爪が一気に通過した。


 岩石土巨兵は硬直していたかと思うと、不意に何か硝子(ガラス)のようなものが割れて砕け散る破砕音が儚げに響き渡り。


 直後、岩石土巨兵の全身に亀裂が走り抜け、駆け巡り、そして────瞬く間に、ただの岩と石と土の塊に化して、一気に崩れ去ってしまった。


 その塊を踏みつけ、勝利をその手に収めた特異個体が雄叫びを天に向かって響かせる。


「ガアアアアアアアアッ!!」


 瞬間、先導者(リーダー)に呼応するかのように、通常個体たちも好きに勝手に雄叫びを上げる。


 そして大した間も置かず────特異個体がその場から駆け出した。


「ガアアアアアアアアッ!」


 特異個体が岩石兵(ゴーレム)の一体に飛びかかり、巨腕を振るう。まともな抵抗すら許されず、打ち砕かれる岩石兵。


 それから特異個体は目についた岩石兵や土人形を、手当たり次第に破壊していく。そんな特異個体に続くようにして、通常個体たちも進撃を再開する。


 それは謂わば、残党狩りであった。


 束ねていた存在(モノ)を失い、ただ呆然と立ち尽くすしかできないでいる自然系魔物(モンスター)たちに、しかし特異個体率いるデッドリーベアの群れは容赦なく、そして遠慮なく襲いかかる。


 そうしてものの数分の間────そこに広がっていたのは、徹底的に打ち砕かれに打ち砕かれ、もはやただの岩と石と土に還った残骸だけであった。


「ガアアアアアアアアッッッ!!!」


 敵対勢力をあっという間に殲滅し壊滅せしめたデッドリーベア陣営が、一際激しい雄叫びを天に向かって放つ。


 それはさながら、我らに敵なし阻む存在もなしと、意気揚々に謳っているかのようだった。


 前代未聞の、まさかの魔物(モンスター)同士の抗争を見終えて。何も言えないで立ち尽くす俺を他所に、ジョニィさんがその口を開かせる。


「って訳だ。当然と言えば当然の話だが、あのデッドリーベアの群れ……いや、〝絶滅級〟上位相当に値するだろうあの特異個体(ユニーク)は放ってはおけない。故に導き出される結論はただ一つ────お前ら全員、腹括って得物を構えやがれ。引き受けたこの依頼(クエスト)、何が何でも、是が非でも達成してやろうじゃねえか」


 と、言うや否や我先にと、【次元箱(ディメンション)】を開き、己の得物たる細身の大剣を引き抜き、背負うジョニィさん。


 そんな彼に続くようにして、他の『夜明けの陽』の面々もまた、各々の得物を手に取った。


「ライザー。こいつはとんでもない共同作業になっちまったが……やってくれるな?」


 まるで試すようなジョニィさんの言葉に、俺もまた得物である剣の柄を握り締め、鞘から一気に抜き放ち。そして答える。


「ええ。不足の事態、流石に動揺せざるを得ないですが……だからと言って、ここで引き退がりでもしたら、俺は俺の憧れに顔向けできなくなる」


「……ハハッ!やっぱりお前は『大翼の不死鳥(フェニシオン)』の新たな可能性(ニューエース)だな!」


 俺とジョニィさんは互いに笑い合い、そして特異個体率いるデッドリーベアの群れに、得物の切先を向けた。











「いやあ、久々に良い運動になったな。なあ、お前ら?」


「よくもまあ言ってくれるぜッ!盾職(タンク)だからって躊躇なく、遠慮なく、そして容赦なく文字通り俺の事盾にしやがってッ!今回ばかりは流石に死ぬかと思ったぞッ!」


「はいはい。今回復魔法使ってあげるから、さっさと機嫌を直すんだよ」


「いやセイラ……仕方なさそうにそう言ってるがな、お前が一番ベンドの事都合の良い肉盾扱いしてたよな……?」


「え?私、回復職(ヒーラー)だよ?一番重要な役割を担っているんだよ?」


「……ああ、そうか。そうだな、もういいや」


 ……という、ある種仲間同士打ち解け合っている会話を耳にしながら、俺は空を見上げていた。


 見上げて、デッドリーベアの特異個体(ユニーク)との戦闘を頭の中で振り返っていた。


 ──実際戦ってみれば、そう大した事はなかったな。……それとも、俺の実力が増したんだろうか。


「突然こっちの依頼(クエスト)に巻き込んじまってすまなかったな、ライザー。けどおかげさまで助かった。何せ、ある程度楽ができたんだからな。楽が」


「いえ、気にしないでください。俺も『大翼の不死鳥(フェニシオン)』の冒険者(ランカー)として、当然の事をしたまでですから。……それに、『夜明けの陽』との共同依頼なんて滅多にできない事でしたし、貴重な経験を得られました」


 未だ打ち解け合っている者同士特有の、何の遠慮も気遣いも皆無な会話を繰り広げる三人を放って。


 今し方斃したばかりの特異個体の赤毛を片手に、俺の方まで歩み寄り、ジョニィさんが言葉をかけてくる。


 対し、俺もまた最初の頃に比べて滑らか(スムーズ)に彼に返答した。


「にしても、まあ当然と言えば当然の事なんだろうが、お前も随分と慣れたモンだよなあ。最初のガチガチだった時が今や懐かしいぜ」


「ははは……そりゃそうですよ。だって────一年、経ってるんですから」


 そう言って、俺は軽く笑ってみせる。


 ……そう、あの日から今日まで。俺が『大翼の不死鳥』所属の《S》冒険者となってから。


 シャロと過ごしたあの一夜から────既にもう、一年が過ぎていた。

おはこんにちばん。どうも、白糖黒鍵です。まず最初に謝罪をさせてください。すみません、本当にすみません。


では手短に本題へ移らせてもらいまして。投稿した七十五話と七十六話は削除致しました。理由は展開改変の為と、もう手遅れな気もしますがテンポ改善の為です。


ですので、件の話での展開はなかったものとして、忘れてもらえれば嬉しい所存です。以上、白糖黒鍵からの報告でした。

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