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間に合った、かな

のらりくらいと頑張って攻撃を躱し続けたが

いい加減体力の限界で思わず片膝を地面につけてしまう。


砂がスラックスにつくのは汚れるしやだな、なんて思ったがそうも言ってられなかった。


早く立ち上がって逃げないと・・・


気持ちだけが先走り動かない足に戸惑いつつ、半ばよろけつつ立ち上がる。


喉が渇いたな。

なんとなく最後にキンキンに冷えた炭酸水が飲みたくなった。


グリフォンは前足を大きく浮かせ、俺にのしかかるかのように前足で俺を踏みつけようとする。


足が縺れて転び、今度こそ避けきれないと悟った。


ここ2週間、なぜか俺は高校2年に上がった瞬間から結構な頻度で異能獣に襲われ続けた。


ここまで執拗に異能獣に襲われた人間なんて他に聞いたことがない。


なんで高校2年生になった瞬間に俺がそんな不幸体質になってしまったのか、

それを知ることもないまま、俺の生涯はここで終わってしまうのだろうか。


「それは結構やだな・・・」


思わず口から零れたけど今更どうすることもできなかった。

逃げたいのは山々なのだがもういい加減疲れた。


どうせ死ぬんならもっと人通りの多い所へ逃げて周りの人ももっと巻き込んで死んだほうがよかったかな・・・


最後にそんなことを思うなんて、俺も器の小さな男だな。


そんな、どうでもいいことを思いながら、振り下ろされる鋭く長い百獣の王の爪を

他人事の様にぼんやり眺めていたのだが


「間に合えー!!!おりゃー!!!」


静寂を切り裂くような女の子の叫び声と共に

謎の光が俺の背中から通過した。


あまりのスピードに俺は当然1ミリも動けず

グリフォンも攻撃の手が止まり、2,3秒フリーズしたかのように止まってしまった。


しかし、異変があったのはそこまで。

グリフォンの横も通過した謎の光はそのまま流れ星の様に闇夜に消えていった。

いや、なんなんだよ、まったく。


グリフォンがたじろいたけど、それだけだ

攻撃が緩まることはない。


結局俺の運命は変わらず、余命が数秒伸びただけ。


振り下ろされたグリフォンの前足の爪で生涯を終えるのか、と思ったその時


今度は青白い淡い光が地べたに座っている俺とグリフォンの間に広がった。


「!?」


眩しさに目が眩んだが

どうやら一瞬で見覚えのある長髪の女の子が間に割って入り

大きなシールドを異能で展開したらしい。


グリフォンの圧し掛かり攻撃はシールドによって綺麗に弾かれた様だ。


思わずグリフォンも甲高い声を上げる。

様子は分からないが、邪魔が入って驚いてはいるようだった。


その隙をついて俺がのろのろと立ち上がる。


俺はこの綺麗な深青の髪の女の子を知っていた。


「間に合った、かな

千織は張り切りすぎちゃったみたいね」


振り返った女の子の顔を見て予想が確信に変わる。

助かった・・・


「ありがとう、雪峰さん」


俺を救ってくれたこの美少女は、俺の通っている青月高校の同級生生徒会長会長。

雪峰(ゆきみね) 紗希(さき)だった。


雪峰さんは小さく息を吐くと顎を指で撫でながら彼岸花の様な笑顔を俺に向けてくれた。


「すみませーん!!先走りすぎましたー!!!」


雪峰さんの美しい微笑みに見惚れていると今度は上方から先ほどの元気いっぱいの女の子の声がした。


そういえば俺はこの声にも聞き覚えがあったな・・・


上を見上げると、まるでスーパーヒーローかの如く

小柄で猫っ毛の長い髪を揺らした女の子が綺麗に地面に着地を決めていた。


さっきのロケットのような青白い流星の正体は、我らが青月高校副会長、西條千織さんだったらしい。


助けに来てくれたのはマジでありがたいけど

とはいえ、人が殺されかけてるときにそんなよくわからないギャグをしないでほしい。



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