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殺されるにしても、もう少し開けた場所にしたほうが 他の人の迷惑にならない・・・か

「はあ・・・またかよ!」


息を切らして走る。


噂には聞いていた。


異能。


そらそうだ、此処御天が地元の人間なら、ありふれた言葉だ。


ただ、なんとなく


「遠いもんだと思ってたんだけどな!」


息を切らしながら走る、いや逃げる。


T字路を直角に曲がると

その直後俺を追って直進し続けた物体が曲がり切れず壁に直撃した。


土煙を上げて大きな衝突音とともに破壊された壁を後ろを振り返り見つめてみた。


「今回は・・・これで終わり?・・・」


しかし、追ってくる「異能」はまだ俺のことを諦めてはくれないようだ。



土煙の中から姿を現したのは、上半身が鷲で下半身がライオンの生き物。

所謂グリフォンだった。


色は真っ黒単色でところどころが光を浴びて反射している。


「やっぱだめ・・・か

はあ・・・」


ここ1年間運動不足の体には非常に辛いがそんな事も言ってられなかった。


とりあえず助けが来るまで逃げて、時間を稼がないと。


俺は再び化け物に背を向けて全力疾走を開始する。

目標は、我らが学び舎、青月高校。


ここからならあと1キロもないはずだ。


気持ちはオリンピックアスリートにでもなった気持ちで全力で走る。


なんとなくいつものように逃げ切れるだろうなんて甘い考えもあった。

しかし、今回ばかりはそうもいかないらしい。



猛禽類独特の甲高い威嚇音を鳴らしたグリフォンはその大きな翼を優雅に広げると一気に加速して飛び立ち、俺を悠々追い抜いて急速旋回。


そのまま俺の真正面の道路に降り立って再び咆哮を上げた。


「!?」


「に、逃げろおおお!」


「なにあれ!?怪物?」


途端、俺の周りにいた他人たちも異変に気が付き蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


気が付けば俺の周りには人っ子一人いなくなり、あたり一面の静寂の中、俺は目の前のグリフォンと対峙する羽目になった。


鋭い目でこちらを睨みつけるグリフォンに気圧されつつ、俺は次の手を考える。


この狭い路地で暴れられると、あたりの一面の住宅街で被害が拡大することは目に見えていた。

下手をすれば、無関係な赤の他人が死んでしまうかもしれない。


俺の特異体質のせいで他の人に迷惑が掛かるのは避けたかった。

なら、俺がすべき行動が一つだ。


「殺されるにしても、もう少し開けた場所にしたほうが

他の人の迷惑にならない・・・か」


脳からアドレナリンがドバドバでているが、不思議と冷静だった。


俺は此処から一番近い公園がどこか記憶の隅から引っ張り出し

そこ目指してもう一度走ることにした。


本当は高校まで戻りたかったけどしょうがない。


グリフォンはその大きな後ろ足の爪で地面でひっかいていたが、ついに俺めがけて突進してくる。



俺は制服のブレザーを素早く脱ぐと、まっすぐ突っ込んできたグリフォンに目隠しするようにブレザーをかけて

寸でのところでひらりと身をかわした。


ギリギリまで引き付けるのが怖すぎて冷汗が止まらなかったが、とりあえずはうまくいったらしい。


いきなり視界を奪われたことでグリフォンが混乱して、一瞬動きが止まった。


その隙を逃すことなく、俺は最後の気力を振り絞り

近くの公園を目指して疾走した。



二分もしないうちに俺は目的地に到着し、その数秒後にはグリフォンも俺の前に再び対峙していた。


一面黒色のそのグリフォンの顔面では、一体何を考えているのか俺には分からなかった。

いや、正確に言えば異能獣(ばけもの)に感情があるのかなんて知らないけど。


グリフォンは何度も俺に突進を繰り返し、今度は長い爪と嘴で執拗に俺を切りつけようとする。


頑張ってすべての攻撃を避けようとはしたもののどうしても避けきれない爪の攻撃のせいで、制服のシャツが破れてしまった。

腕も何か所か切れてしまっている。


そして、このジリ貧状態ではいずれ捕まる。そう悟った。

このだだっ広い空間では遮蔽物もないしな。


一応、SOSは出したけど

うちの生徒の救援は間に合わなかったか。


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