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魔法世界のセデイター 3.本業再開、姉と助手と  作者: 七瀬 ノイド
第一章 始動
1/30

1-1 休業を終えるには

「魔法世界のセデイター 2.異世界人の秘密と魔法省の騒動」

https://ncode.syosetu.com/n4666fx/


上記の続きです。


 ここは、セレンディア王国第二首都ディーレにある魔法省魔法部第九課。魔法部の末席に据えられているこの特殊な課には、今や主要となった業務がある。

「そろそろ、始めない? リンディ」

 この課の長サンドラは、近頃、やたらに入り浸っている、フリーランスのブロンド美女を見つめる。

「始める?」

 聞き返してきた……わかっているのに。

「本業。もう十分休んだよね?」

 前回から、すでに一ヶ月を越えた。

「……まぁ」

「依頼も結構入ってきてるし……。見た?」

 ここ九課の端末から、その詳細を閲覧できる。

「見たけど……まだ……」リンディは、いつものお茶に手を伸ばす。「あたし向きのがない」

「あなた向きねぇ……」

「それに、まだお金余ってるし」

「まぁ、そりゃ……前回はAランクだったから、余ってるでしょうけど」

 Aランク。その名称から予想されるとおり、難易度は高く、報奨金も高い。

「……だから、そのランクならやる」

「そうはいってもね……」Aランクなんて滅多にない。前は、Bランクならやると言っていて、実際にはCランクから相手にしていたと、課長は記憶している。「依頼がたまると困るんだよね。まだ人材が少ないんだから」

 新しい分野だ。彼女並みの優秀な専門家は数えるほど。

「そうだけど」

「楽なのからやってくれない? あなたならすぐでしょ?」

「……まぁ、気が向いたら」

 立ち上がり、九課を出て行くリンディ。去っていったドアを見つつ、サンドラはつぶやく。

「だめか……」


 前回の仕事――天才魔導士ニーナのセデイトから一ヶ月以上経っても、セデイターのリンディは、魔法省周辺をただうろうろしていた……。その「セデイト」とは、端的にいえば、魔法元素の老廃物である瘴気を、魔法の使い過ぎによって体に溜め込んだ魔法使用者から除去する作業である。それを専門とする「セデイター」は、新しい職種のため、資格取得者の絶対数が少なく、現在は全員がフリーランスである。

 今や通称「セデイト課」とも言われる九課の長サンドラは、課内にある視聴覚用の小部屋へ向かい、ドアを開ける。

「どう思う? フィリス」

「おわっ」

 呼ばれたその人は、扉のすぐ手前にいた。

「おっと」

「……びっくりした」

 医師のフィリスは、心臓を押さえて息を吐く。

「ごめん」

 いきなりではなく、声を掛けてからドアを開けるべきだったとサンドラは反省。そもそも、ここで彼女に立ち聞きさせていたのは自分だ。目の前で視線を下げている部下は、一回息を吸って吐く。

「……いえ、大丈夫です」

「よかった」課内で立ち聞きさせて心臓麻痺などというアホな前例を作らずに済んだ。……それにしても、驚き声に色気がなかったな。「……それで、どう思う?」

「そうですね……やっぱり、そうでしょうね」

 有能なヒーラーであり、上級医師の資格を持つフィリスは、健康管理者として心理面のケアも行っており、その所見は信頼に足る。

「そう……困ったね」

「相当ひどい目に会いましたから……その……すみません」

 フィリスは、そのセデイターに重症を負わせた張本人、Aランクセデイト対象者だった魔導士ニーナの友人であり、セデイト時には同行していた。そのときの経験により、今のリンディは軽めのPTSDのような状態だ……。要は、本業に出たくない。

「フィリスが謝ることはないよ。それよりも、どうするかだね……早めに復帰させるか、もう少し様子を見るか……」こういうのは難しい。しかし、幸いにも専門家がいる。「どうしたらいいと思う?」

「それは、できるだけ早く復帰してもらうべきです。でないと、難しくなっていきます。本来なら、あのあと、すぐに次のセデイトに向かうべきだったんですが……」

 時間が経つと、かえって恐怖感が尾を引いてしまう。いちおう、ちょっとした事件に遭遇して解決の一助を担ったが、あれはセデイトではない。事後的に犯人たちの瘴気処理が必要だったものの、それは別のセデイター――ルーヴェイが行った。

「ま、いろいろ立て込んでたからね」

 主に、今は場を外している異世界人、ナユカの処遇などで。その忙しさで、リンディが助かっていた面もある。しかし、今はそれも一段落ついたところ。それに伴って、セデイト業務への忌避傾向という症状が顕在化してきた。

「ええ……」その間に、フィリス自身も魔法省第九課付けで職務に就くこととなった。「それで、復帰ですが……無理強いは逆効果ですので……」

「だよね」それは、リンディの性格からもわかる――付き合いの長いサンドラ。ゆえに……。「ここは、任せといて。いい案があるから」

「それは、どういう……?」

「簡単に言えば、好きなもので釣る。そういうこと」

「まさか、食べ物とか?」

 いくらなんでもとフィリスは思う。確かにあのセデイターは、やたら食い意地が張っているけど……。それには答えず、課長はにやっと笑う。

「ま、見てなよ。うまくやるから」

 もし食事を文字通り餌にというのなら、うまくいくとは到底思えないが、医師はとりあえず任せてみることにする。それで駄目なら自分が……。

「わかりました、お任せします。ただ、くれぐれも慎重に」

「わかってるって。あいつは、あれでもそれなりに繊細だからね」

 それを理解しているのなら、無茶はしないだろう。自分よりもはるかに長い付き合いなわけだし……。フィリスは承知する。

「では、お願いします」


 翌日、またリンディが九課に現れた。連日、出没はする――職員ではないにもかかわらず。気を紛らわせようと遊びに来ているのかもしれないが、それだけではなく、復帰したいという意欲もあるのだろう……なかなか、ままならないだけで。おそらく、セデイト対象者のデータを見たりするとトラウマが蘇って気が引けるとか、そういった類ではないだろうか……。そのような理解に基づき、サンドラはきっかけを提示する。

「あのさ、リンディ。ちょっと遠出してほしいんだけど」

「遠出?」

 遠出ってどこさ……まさか島流し? 左遷ってやつ? 

「そう」

 フリーランスには、そういうの関係ないんだった……でも、なんか裏がありそう。躊躇するリンディ。

「……気が向かない」

「場所は、ユリーシャのとこ……」

「行く」

 言い終わる前に、即答が返ってきた。まるで反射である。

「届けものが……」

「絶対行く」

「……あってね」

「行くよ」

「それから、他にもすることが……」

「行くから」

「……じゃ、行くんだね」

「行くってば」

「OK。なら、頼んだ」

「わかった。行く」

「で……」どんだけ行きたいんだ。用件の内容を話す前に出て行こうとするので、サンドラが呼び止める。「ちょっと、リンディ」

「準備があるから、後で」そのまま九課を退出したリンディ。そして、外からは……歓喜の声。「行くぞー」

 スキップ気味に廊下を駆け抜けていった。九課に残されたサンドラは、やれやれという表情。

「ま、作戦成功かな」

 もとより、セデイターはフリーランスなので、九課課長のオーダーなど関係なしに最愛の「おねーちゃん」のところへ行けるが、用もなく行くと心配されてしまうので、「サンディに頼まれて」という口実をつけて行くことにしている。これは、暗黙の了解としてサンドラも理解しており、定期的にそっち方面への用件をリンディに割り振ったり、紹介したりしている。


 少し時間を置いてから、リンディは九課へ戻る。「準備」などしている時間はなく、特に何もしていない。気持ちを落ち着けてきただけ。

「あ、帰ってきた」

 その間に課内へ戻っていたナユカが、入室してくるリンディを最初に見つけた。その異世界人に視線を返してから、当人はサンドラの前へ。

「……で、なに?」

「何のこと?」

 しらばっくれる九課課長に、セデイターは少しイラッとする。

「用件だよ」

「飛び出していったから、行かな……」

 斜に構えて視線を外すサンドラ。

「行くよっ。行くのっ」

「わかってるよ、もぉ……冗談だってばぁ」

 ふだんのサンドラらしからぬ妙に軽薄な語尾――それによって増幅されたイラつきを抑えるべく、リンディは大きく深呼吸する。それを見て、やはりセデイター不在の間に戻ってきていたフィリスが、課長に小さく声をかける。

「あの……そのくらいで」

 これ以上からかうな、ということ。少しばかり怒らせたほうが勢いがついていいかと思って、ちょっといじってみただけで、もとより、これ以上やるつもりではないサンドラは、九課の健康管理者にうなずき、改めてリンディに向き直る。

「用件はね、ユーカを連れて行ってほしいのさ」

「え? ユー……」

 リンディがリアクションする前に、フィリスが詰問を始める。

「ユーカをですって? どこへですか?」

「あー……」こっちが来たか。課長は説明開始。「だから、リンディの姉さんの……」

「聞いてませんけど」

 さえぎったフィリスの声は低い。

「まだ言ってないから……あ、今言ったか」

 言い終えてはいないが。

「そんなことは、どうでもいいんです」

「いいの? なら、よかった」ナユカに視線を移すサンドラ。「で、ユーカ……」

「よくありません」

 またもさえぎってきたヒーラーが発したのは、癒しからは程遠い低い声。

「今、いいって……」

 課長は押され気味。

「そういう意味ではありません、わたしが言ったのは……」フィリスは一息吸って吐く。「そんなことより、ユーカの件です」

 仕方ない……それなら……。九課課長として提案。

「一緒に行く?」

「え? いいんですか?」

 フィリスが、即、食いついた。

「嫌なの?」

「行きます」

「やっぱり駄……」

「行きます」

「……目って言っても」

「行きます」

「行くわけね……」ついさっき交わしたようなやり取りだ……。それはさておき、サンドラは少し間を持たせて考える。「まぁ……あなたは九課所属だから、こっち優先でいいんだけど……」

「はい。ありがとうございます」

 まだ続きがありそうなのに、はやるフィリス。そんなことでいいのかと心中突込みを入れつつ、ようやくできた会話の隙間にリンディが入る。

「で……ユーカを連れて行くわけね?」

「そういうこと。結界の張り直しをするらしくてね」セデイターに答えてから、課長は「天才」破壊専門結界士として名が通りつつあるナユカを見る。「ということで、頼むね、ユーカ」

「はい」

 即時承諾した異世界人に、リンディがストップをかける。

「ちょっと、いいの? 説明も聞かないで……」

「あ。知ってましたから」

 ユーカが事前に聞かされていた……。

「ふーん……」

 なんとなく策略を感じる……。でも、おねーちゃんのところへ行けるのはうれしいし……まぁ、いいか……。そんなリンディは、かなりちょろい。それを利用するのはサンドラ。

「で、もう一つ、用があるんだ」

 そら来た。シスコンは警戒モードへ移行。

「……なに?」

「あっちの方に低ランクのが数人いるから、ちょろっとやっちゃってくんない?」

 つまり、セデイトしろということ。セデイターは答えない。

「……」

「全員やらなくてもいいからさ。向こうはまだ手が足りなくって」

「……」

 セデイターは無言のまま。

「ユリーシャの身に危険が……」

「やる」

 リンディ即答。ちょろい……これなら絶対やるだろう……。メンタルの問題などなかったかのよう。サンドラはセデイターの復帰を確信した。

「ユーカの用が済んでからでいいよ」

「全員やる。あっちにも処理器あるし」

 勢い込むセデイター。まだ、あちらではセレンディアほどセデイト関連の設備は整備されていないが、少なくとも瘴気処理器は置いてある。

「無理はしないように」

 釘を刺してから、課長から視線をちらっと向けられたナユカは、お目付け役ということだろうと理解し、黙ってうなずく。一方、リンディ自身も前回のような轍は踏みたくない。

「……うん」

 返事に納得したサンドラは、次にもう一人の同行予定者を見る。

「もし行くなら、フィリスは向こうの医療事情の視察ってことになる……かな」

「なるんですか?」

「あー……するから」微妙なところを突っ込んできたフィリスが同行するのは、すでに織り込み済みではあるが、サンドラには少々気になることがある。しかし、その点はまだ口にはしない。「後でちょっとレポート出してくれればいいや」

 上級医師はうなずく。

「わかりました」

「それじゃ、準備があるから」

 早速、出て行こうとするリンディ。「準備」は、さっきしたはずでは……? そこの揚げ足取りは控えて、今度は声を上げて引き止める。

「ちょっと待った!」

 背後から飛んできた大声に、反射的に足を止めて振り向くセデイター。

「なに?」

「出発は三日後ね」

「はぁ? なんでよ」

 このシスコンは、明日にでも行くつもりらしい。

「都合があるの。今回はあなたひとりじゃないんだから」

 課長は、ナユカとフィリスを指差す。

「……まぁ、そうだけど」

 リンディは両者を見る。職務上の都合か……雇われてると面倒だな……。

「それに、出発前にあなたにやってもらうことがある」

 なんとなく公務の気配……。セデイターは警戒。

「なにを?」

「えーと……」課長は手元の資料を引っ掻き回す。「あ、これだ。バジャバル=……」

「げ」

 その名は聞きたくなかった。リンディが発した妙な音声は無視して、サンドラは続ける。

「ジュバール=……ジャジャバラールの件で……」

「ちょっと待った」

 止めずにはいられない。

「なに?」

「なんか増えてない?」

「なにが?」

「名前だよ。……増殖した」

「ああ、そのようだね。これは……」課長は資料に目を通す。「正式名だって」

「……聞いてない」

「本人も忘れてたんだってさ。回復して思い出したと」

 サンドラの言葉にフィリスが反応した。

「回復したんですか?」

 セデイトされて瘴気が抜けた後の放心状態から。

「二週間ほど前に完全回復」

 通常の回復速度だ。

「そうですか……」

 フィリスは、一ヶ月経ってもいまだに完全回復しない友人、ニーナのことが気にかかる……。でも、回復魔法の効かないナユカが行くなら、ついていく必要がある……どうしよう……。考えている健康管理者を横目に、サンドラは話を戻す。

「……とにかく、その名前が問題なんだってさ」

「名前……はぁ」

 リンディはため息……もういや……。でも、課長は続ける。

「金を貸してるってのが何人かいるんだけど……その証文がね……」

「ああ、その話」

「知ってるの?」

「署名が違うんでしょ?」

 トゥステの街でニーナの情報を集めていたときに、セデイターはその被害を受けた情報屋から聞かされた。彼の場合は、情報料が未払いだという。

「わかってるなら、話が早い。その『バジャバル』の当時の状態について、証言してほしいってさ」

「あー、はいはい」

 投げやり気味――でも、それですべて終わるのなら、なんでもいい。ただ、こういうのは結構面倒になるかと思うと、やはりうんざり。

「詳しいことは、後でミレットからね」

 サンディはいつもそう……面倒なことはミレット任せでいいよな……。ひがみっぽくなりながらも、リンディは無言でうなずく。


「ねえ、フィリリン」

 話がひと段落ついたようなので、ナユカは気になっていることをフィリスに聞こうと思う……お節介かもしれないけど。

「なに?」

「あの……ニーナさん……のことは、いいの?」

 気にかかっていることを切り出してくれて、サンドラには好都合。そのまま静観を決め込む。そして、問題を認識しているフィリスの声は、はっきりしない。

「うん……」

「やっぱり……残」

 ナユカの意見を、リンディが先回り。

「残ったほうがいいんじゃない?」

「それはできません」健康管理者は断言。「ユーカについてないと」

「わたしは大丈夫だよ」

 本人はいたって、のほほんとしている。

「駄目です。なにが起こるかわかりません」

 フィリスの口調が、異世界人に対するいつものそれではない。まるで、自分に言い聞かせているような……。リンディは少しつついてみる。

「残りたいんでしょ?」

「それは……」否定しようとして、部分肯定する。「それもあります」

「『も』ね」ここは無理矢理、拡大解釈。「じゃ、ユーカのことはあたしに任せて」

「無茶言わないでください」

 医師の鋭い視線を受けるリンディ。……なんか失礼だな……たしかにこっちは医者じゃないけど……正直、あの魔導士のことが気にかかっているのなら、一緒に来て欲しくない。ニーナに対して含みがあるというわけではなく……もないが、そういう状態の人と遠出するのは気疲れするからだ。そうはっきり言ってしまうのもあれなので、ここは異世界人の同行予定者が大人になる……今だけ。

「非魔法薬がたくさんあるでしょ? 自分で見繕ったやつ」

「ありますけど……」

 魔法世界の医師にとっては、効き目が心もとない。よって、魔法の効かない異世界人に対しては、いろいろと使ってみないとわからない。

「それをユーカに渡して、フィリスは残る」

「……持てる量に限度があります」

「薬とかなら、転送できるよ」

 無機物なら、送り転送ができる。

「でも……薬だけでは……ひどい状態には……」

 自分自身の懸念によって、フィリスが動揺。

「そのときは」リンディは言い直す。「……そうなる前に、ユーカをここへ転送する」

 言っておいてなんだが、その時点で遠ければ、簡単にはいかない。

「だ……だって……そのときに、わたしがいないかも……」

 ニーナのことがあるのだから、本人は魔法省周辺にはいるだろう。ただ、確かにナユカの秘密を考えれば、フィリスがいなかった場合には他の医療スタッフに任せるというわけにもいかず、その懸念にも一理ある。とはいえ、それに対するソリューションはある。

「あたしのおねーちゃ……姉が、上級医師だから……」自慢げに胸を張る妹。「あっちに送る」

「でも、ユーカの秘密が……」

「あたしのおね……姉だよっ」

 信用しないのは心外だというリンディ。しばらく黙って両者のやり取りを聞いていたサンドラは、怒れるシスコンのほうは放置して、フィリスをなだめる。

「彼女には話しても大丈夫。そこは信用して。わたしの親しい友人でもあるから」

「はい……」

 医師は、すまなそうにうなずく。

「どちらを選ぶか、わたしは強要しないけど……残ったほうがいいと思うよ」

 口にはしないものの、ニーナが気がかりなのに現状ではたいしたことができないことが、ナユカの健康への過剰な関与につながっている面もあると、サンドラは見ている。回復魔法の効かない異世界人を心配するのは当然だが、少々ヒステリックになっている……。そして、実はフィリス自身も、その点、自覚はある。

「そうでしょうか……そうですよね……」

 どうやら、残るほうになりそうだ……。いちおう、課長は猶予を与える。

「いずれにせよ、明日の朝までに決めて」

「わかりました……」伏目がちにうなずいた医師は、ゆっくり顔を上げる。「ちょっと病院のほうへ行ってきます……あの……業務で……」

「どうぞ」

 課長の許可を得て、フィリスは九課を退出していった。




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