うつけの息子
いつからだろう…俺は腐るようになったのは。
『君のお父さんはすごいのになあ……』
『う〜ん、低いことはないけど…君のお父さんに比べたらなあ……』
なにをやるにしても優秀で、勇者だった親父に比べられる毎日。
最初の挫折は……伝説の魔法と言われる勇者の魔法の光魔法を使えないとわかった時。
『コウキくんの適正魔法は……風魔法、特に雷に適性があるようです』
風魔法…火、水、風、土、聖、闇と6種類ある魔法の種類の中でもピカイチの速さと瞬発力を持ち、上位の魔法になると雷も操れる魔法である……雷の魔法はかなりの才能が必要で十分優秀と言われるが……「勇者の息子」として期待されていた俺が勇者の魔法を受け継いでないとわかり、周りの大人たちががっかりするのを見て…もちろん自分でも光魔法を使うことを目標にしていた俺は『勇者になれない』と現実を突きつけられた。
二回目の挫折は……自分に剣の才能がないとわかった時。
光の魔法が使えないとわかった俺はせめて剣の技術は勇者の息子であるという証を示したくてひたすら修練した。だが、同い年の幼なじみに負けた時、俺にはそこまで才能がないことを自覚した。
親父が俺の歳の十六になる頃にはすでに勇者としての頭角を表し始めているのにもかかわらず、その歳になっても俺は同世代の中でも抜きん出ているわけでもなく、「優秀」という枠組みからは出れなかった。
そして三回目の挫折、そして俺が完全に腐るきっかけになった出来事だ。
「勝者シルビア!!」
通っている学園で毎年行われている大会で魔法部門も、剣術部門もその幼なじみにやられてしまった。
何年も努力して、勇者の息子として認めてもらえるように鍛え上げた自分の剣術も魔法までも簡単に破られて、完全な敗北を叩きつけられた。
そしてその時に、「お前はいくらやっても勇者にはなれない」という現実を三回も突きつけられた俺の心は完全に折れてしまった。
その頃から俺は、剣にも、魔法にも興味を失ってしまった。
そこからの転落は早かった。
「勇者の息子はうつけ」
そう呼ばれるような自堕落な生活を続けて、俺はどんどん落ちていった。
でも、そんな生活を続けていてもなぜか頭の中からは剣や魔法のことは消えなかった。諦めたはずなのに、もう握らないと決めたのに頭の中からは消えない。
どうしてだ。
もういいんだよ、疲れたんだよ俺は……もう周りの人の期待に応えようと努力するのも。そのために必死に剣の修練や、魔法の訓練をするのも…。
誰か……
……助けてくれ。