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「あづいぃぃ·····」
そう愚痴を漏らすのは祓い屋メンバーのいろは。
蒸し暑い8月の気温に喘いでいた。「くっそ…ヒートアイランド現象め·····地球温暖化め·····!」と恨み言を言っている。
ぎゃあぎゃあと喚くいろはに凶華がおもわず口を出す。
「うるせぇなてめぇは·····クーラー壊れたんだからしゃあねぇだろ。この時期修理屋も忙しいし」
「ボクは暑いんだよぉー!そんな言うなら凶華が涼しくしろよボクを!!」
「できるかボケ」
そんなやり取りの中、質素な事務所の扉が開く。
「お前ら外まで聞こえてんぞ。自重しろ」
「蛍ぅー·····だって凶華がぁ·····」
「先輩?!す、すいません·····」
さっきまでぎゃあぎゃあ騒いでたいろはが静かになり、凶華が腰を低くして謝るような人物。
蒸し風呂状態をなんとか軽減する為にアイスを買いに出掛けた祓い屋店主の蛍だった。しかし、一人ではなく傍らには女性を連れている。
黒髪ロングのストレートに清楚な白のワンピースと麦わら帽子を被った若い女性。困ったように俯いている。
「蛍、お客さん?」
「あぁ。·····どうぞ」
「は、はい·····」
鈴のような声の女性はソファーに腰掛け、此方が話を聞く体勢に入ると恐怖を隠すように手を握りながらゆっくり話し始めた。名前は沙苗。両親は早くに亡くなり、一人暮らしだという。沙苗は身の上を話した後、表情は暗くなった。
「最近·····無言電話がかかってくるんです。昼夜問わず、夜中にまで·····」
「無言電話?それって普通に人間じゃねぇの?」
「凶華黙ってて」
「あ?」
「喧嘩すんなって言ってんだろ。·····具体的にいつ頃からかわかるか」
彼女は少し考えながら「大体·····2ヶ月前からです·····」と答えた。
「その後、何か変化とかは」
「あ·····ぇと··········」
沙苗の表情が一層暗くなるのを見て、「大事な情報だ」と続けた。声を震わせながらも口を開く。
「昨日の夜·····3時くらいに·····また電話がかかってきたんです·····いつもの無言電話かと思って切ろうとしたら·····ボソボソ何か言ってるんです·····こ、怖くて·····何も聞かずに切ってしまいました·····」
「急に話し始めたと·····」
「はい·····それまでは·····何も言ってなかったのに·····」
蛍が考え込む中、「人間じゃね?」「ストーカー?」なんて後ろで話す二人。少し黙ってほしい。
「そう·····だな。電話を待とう。何を言っているのか気になるし、何かあれば守る」
「あ·····ありがとう·····ございます·····!」
電話はスマホにかかってくるらしいので待つことにした。