過去 ( ⅱ )
親衛隊=王家の護衛をする騎士の事
聖騎士=国の治安を維持の為に賊や城壁に近づいた魔物を片付ける騎士の事
大きく開けると燦々と降り注ぐ日光で視界を真っ白に染め上げる。
ジルベルトの言う通りに数歩下がり視界が晴れるとそこには真っ白な鎧を纏った聖騎士が壁のように並んでいた。
「抜剣」
周りとは違い金色に縁取られた目立つ鎧を纏った人がそう言うと壁が一斉に剣を鞘から抜き金属音を周囲に轟かせた。
すかさずジルベルトも剣を抜いた。
私はルークに手を引かれ裏口へ向かった。
裏口を出ると薄暗く細い道に出た。
「こっちもか」
薄暗く細い道に白く目立つ壁がそびえ立ち塞いでいる。
だが、正面よりは守りが薄くたった2人しかいない。
「お嬢様、合図をしたら走ってお逃げください。火球」
ルークが放った火球は弱々しく頼りないものだった。
狙いは顔だ。
案の定聖騎士にいとも容易く剣の腹で防がれてしまったが、剣は死角を作りエルナ達を隠した。
「今です」
私は裏口を飛び出したはずだがその足はすぐに止まった。
「痛ッ!」
エルナの腰まで伸びた長い髪は扉の裏に隠れてた3人目によって捕まれてしまった。
「お嬢様!」
ルークは目の前にいた聖騎士2人に背を向けた。
「お嬢様、すみません」
そう言うと腰からナイフを逆手に取ると長い髪の中間あたりを音もなく通り過ぎ私を聖騎士の手から解放された。
「グハッッ!」
ルークは私の手を掴むのと同時に背中を斬られた。
傷は決して浅くなく痛いが歯を食いしばり私の手を引いてくれた。
いくら鍛えられた聖騎士とはいえ重く関節の可動範囲が狭まる鎧を纏っているため距離が開いていく。
もはや、最初から追うことを諦めているようにも見えた。
日は沈みかけ帰宅する人が多く人混みをかき分け城門に向かっている。
いくら小国とはいえ中心になる城から城壁までかなりの距離がある。
「こっちです」
「え!城門へ行くのではないんですか?」
「城壁は聖騎士によって管理されているので城門を抜けるのは困難でしょう。なので少々気に触るのですが賊の力を借りましょう」
「ぞ、賊ですか」
「彼らならお金さえ積めば快く引き受けてくれると思います」
そう言ってついたのが城壁近くの至って普通の民家だ。
ドアを軽くノックして出てきたのはどこにでもいるようなごく普通の女性。
本当に賊なのかと目を疑うほどだ。
賊が汚いというのは偏見なのかもしれない。
「何の用ですか?」
「久しぶりですね、ルシア」
「ここで話すのもあれだから取り敢えず中に入りな」
「どこでその名前を聞いた?」
家に入るとさっきまでの態度とは一変しルシアは何処からかナイフを取り出し気づいたら執事の首スレスレの所で構えられていた。
「相変わらずナイフの扱いが雑ですね」
「少し当たってんですが」
スレスレではなかった。
多少首に当たっているが血は出ていないから皮が少し切れたぐらいだろう。
「久しぶり?相変わらず?」
ルシアが小さく呟くと「あぁ〜」と声をあげた。
「ず、随分と変わったね」
「それより手伝って欲しいことがあるんだ。勿論タダとは言わない」
「何の用かしら?」
手を腰に当て口の端を吊り上げて笑っている。
「国外逃亡だ」
「なーんだ、つまんなーい。それでいくら出すの?」
「これでどうだ?」
「ケチだねぇ。今は王の元で働いてるんでしょ」
「あぁ」
「ならもっと出せるんじゃない?」
執事の胸倉を掴み誰がどう見ても喝上げ現場にしか見えない。
「なんならそっちの嬢ちゃんを教会に突き出せば」
「何か?」
「ハハハハハ、じょ、冗談よ」
殺気かしら?
今のやりとりで何があった分からないが、ルシアは明らかに顔を蒼ざめ笑っていない。
一週間ってとても短いですね。
誤字脱字の報告お願いします。
今回は急いでいたので特に誤字が多い気がする。