母の教えその30「生きていればまだ遅くない」
頬を生温い風が撫でていく。暗く淀んだ空に遠雷を聞きながら見上げた先、馬上の揺れる視界に王城が見えてきた。慣れ親しんだ筈のその場所は酷く見慣れない。まるで違う世界に迷い込んでしまったような錯覚を受ける。
「王城の近くまで行ったら馬を下りよう。ドゥーベはまだ王城にいる可能性が高い…地下の水路を使おう。水路に沿っていけば城の地下に直接出る筈だ」
「わかりましたわ!」
馬に乗ったまま駆け抜けた王都の街は、出歩く人々も少なく、皆その顔に一様に不安を滲ませていた。大きな混乱はないようだから、冥王が復活したことは未だ民衆には伝わっていないのかもしれないが、静か過ぎて気味が悪いほどだった。
そうして城が近付いて外壁が見えた頃、ミモザ達が目指していた排水路の入り口の近くに数人の人影が見え、その中に桃色の頭が見えた。
「あれは…スピカ…?」
馬で走っている此方に気付いたのか、その人物は大きく手を振る。段々近付いてくるその姿にやはり相手がスピカであることを確信する。
「スピカ!」
「ミモザ様っ…」
スピードを落とし馬を落ち着かせたメグレズは、先に自分が降りた後ミモザにも手を貸して下ろしてくれる。慣れない馬での移動に強張った体は、地面に足をついた途端よろけて座り込んでしまったけれど、スピカがすぐに傍で支えてくれた。
「ご無事だったんですね!!良かった…良かった…!!」
大切な人に裏切られて、理由も告げられず突き放されて、自分の方が何倍も辛かっただろうに。
ミモザの事を心配し何度も「良かった」と繰り返すスピカにミモザも思わず涙ぐむ。
そして少しでも伝わればいいと目の前の体をぎゅっと抱きしめる。
「っ…ミモザ様…?」
「私のことよりスピカのことよ…!!」
「あ…」
ミモザの言葉に返事を返せず、言葉に詰って目を伏せてしまったスピカに、ドゥーベに対する怒りがめらめらと燃え上がってくる。
「私、ドゥーベが許せない」
「っ…そ、それは、違うんです!きっとドウには事情が…!!」
「えぇ、そうね……でも、私それでも許せないの」
「ミモザ様…」
「あの人の事情なんか知らない、私はスピカをこんなに傷つけたドゥーベが嫌いだわ!」
「っ…」
はっきりと口に出してしまったが、それが今のミモザの本心だった。
出発前にレモンが、たった一人の兄弟のことを話してくれた。レモン曰く、ラムエルと名乗りドゥーベの傍に居たもう一人の悪魔は、自分を天使だと偽りずっと「スピカを守るため」とドゥーベを唆していたらしい。
『アイツが絶望したのは…それだけ天使の女が大事だったからだ…だから、そんな奴が本気で天使を傷つける訳がない』
だとしたらドゥーベは何故そんな行動に出たのか。そう考えたときに嫌な答えを考え付いてしまったのはミモザだけではなかった筈だ。
幼い頃からずっとスピカのことを大事に想い守ってきたドゥーベ。己に縛り付けることを良しとせず、けれど諦めることも出来ず。ジレンマを抱える中で悪魔に魅入られて。自分といるよりも王太子と、天使として王族の横に立つのが相応しいと、誰しもに認めさせることができたなら。
たとえ自分の命と引き換えても、なんて独りよがりが過ぎる。
スピカの気持ちをちっとも知ろうとしないドゥーベなんかどうにでもなってしまえと思わないでもなかったが、けれどそれはきっとスピカの望むことではないのは今のスピカの姿を見ていたら分かる。
「ドウは悪くないんです…もううんざりだって、鬱陶しいって…そう言われるまで、私ちっともドウの気持ちなんて考えてなかった」
ミモザの腕にしがみつく腕が震えている。
「私…ドウのこと…ドウが何を考えてたかなんて、全然知らなかった。村を出ても、ずっと傍に居てくれると思ってた。関係が変わることなんてないんだって思い込んでた」
「スピカ…」
「大事なことを一つも伝えられないまま、ただ傍に居てくれることばかりを望んで、自分のことばかりでドウが悩んでたことにも気付けなかった。ずっとそうやって甘えてたから、あんな風に突き放されても仕方なかったんだって…悲しくて、どうしていいか分からなくて…けど、やっぱりドウはそんなこと絶対しないって思う自分がいて」
「………」
「ミモザ様…ドウは…きっと私のためにあんなことをしたの…」
ぽつりと零されたスピカの言葉に、ミモザはやはりスピカも気づいていたんだと理解した。
「私が…天使の生まれ変わりだから…冥王である自分を倒せば、私が認められると考えてあんなことをしたんだと思います…」
「うん…」
「どうして何も言ってくれなかったのかなっって考えて…私が頼ってばかりだったから、言えなかったんだって思って…もっと話をすれば良かった…!こんなことになる前にちゃんとドウに…伝えればよかった…!私…ドウと戦いたくなんかない…!!」
ぼろぼろと涙を零すスピカの手をぎゅっと握り、ミモザは「まだ遅くない」とはっきりと目を見て言った。
「でも…もうドウは…」
「まだいくらだって伝えられるわ!だって貴女もドゥーベも生きているんだもの!」
「ミモザ様…」
「お母様が言っていたの、生きている限り遅いことなんてないって」
『ミモザ、気持ちを伝えられるのは今を生きている人だけなの。死んでしまったらもう伝えることも、その言葉を聞くこともなくなってしまう。……私ね、この世界に生まれる前、もう一つの世界での私は何一つ伝えられないまま死んだの。よく覚えていないのだけど驚くほどに呆気ない最後だったんだと思う。今になって思うの。もっと沢山話をすれば良かった。忙しかったから、その気になればいつでも会えるからって、顔を見に帰ることもしなかった。親不孝な娘でごめんなさい。今まで育ててくれてありがとう。叶うのならまたお父さんとお母さんの子供に生まれたかった…でももうそれを伝えることはできない』
あれは母が亡くなる数週間前だったかもしれない。体調を崩して寝込みがちになった母がミモザに語った後悔だった。
『でもね、伝えることが生者の特権なのだとしたら、生きている限りまだ遅くないって思うことにしたの。私が前世で伝えられなかった言葉は本当に届けたかった相手にもう届くことはないけれど、もらった想いは無駄にしない。私は今この世界で生きているんだもの。なかったことには出来ないけれど、失敗しても、後悔しても、同じ過ちを繰り返さないために努力することはできる。運命だって変えられるって信じてる。だから、だからね、精一杯私は今を生きる』
息を引き取る間際までずっとミモザのことばかり気にかけていた。大丈夫、頑張って、とミモザにかけた言葉の後ろにどれだけの後悔があったのか。病に侵され自分の命が脅かされている状況に恐怖だってあっただろう。母の抱いていた想いを計り知ることはできないけれど、それでも「後悔はない」と言ったように最期まで精一杯生きていたのだと思う。
「起きてしまったことはもう戻せなくても、貴女の気持ちを伝えるのに遅過ぎるなんてことはないわ」
「ミモザ様…」
「スピカのせいじゃない。ドゥーベのせいでもない。ドゥーベの思うスピカの幸せが、スピカにとっては幸せじゃないように、幸せの形は人によって違うんだってドゥーベに気付いてもらえるように」
「私の…話を、まだ聞いてくれるでしょうか…」
「もし聞きたくないなんて態度を取るのなら今度は私がひっ叩いてでも顔を此方に向けさせて聞く耳を作らせてやるわ」
「えっ…ミモザ様が叩くんですか?」
「そうよ。私ねこれでも結構強いのよ?言ってなかったかもしれないけれど昔アルカイド様を倒したこともあるんだから」
「アルカイド様を?」
えへんと胸を張って言うと、ぽかんとしていたスピカはくしゃりと顔を歪めて笑った。
「ふっ…」
「冗談でも頼もしいです」と少しだけ表情を緩めたスピカに安堵しつつ、ミモザはスピカに向き直る。
「まぁ、半分は冗談なのだけれど…半分は本気よ」
「半分?」
「ここへ来る前、アルカイド様に会ったの」
「…そのアルカイドは正気だったんですか?」
「!アリオトさん」
スピカと話していてすぐ傍までアリオトが来ていることに気付いていなかったミモザは、その声に驚いて声を上げる。
落ち着いて周囲を見れば少し離れた場所にフェクダもおり、馬を止めたメグレズと話をしているのが見えた。
「ミモザさん、アルカイドは今どうしているんですか?」
ミモザに問いかけるアリオトのその表情には少しの焦りが見える。二人は七騎士の中では同じ学年ということもあり仲は良かった筈だ。だからこそ操られたアルカイドへの心配が窺えた。
「アルカイド様はご無事です。イーター領へ寄ってから王都へ戻ると言っていましたので、おそらくもう王都へ向けて戻ってきている最中ではないでしょうか?もう洗脳も解けています」
「正気に戻ったのか…?」
ミモザは、アルカイドがサザンクロス領に現われたことや、アクルの魔法によってアルカイドが正気を取り戻したこと、国境の戦闘が激化してきていることなど、あったことをスピカ達に話した。
「そうかぁ…元に戻ったなら良かった…友人をどつきたくはないですからねぇ…加減を間違ってメラク様みたいになったら大変だし…」
「メラク様…?」
どこかほっとしたように呟くアリオトの口から出てきた名前にミモザは聞き返す。
「メラク様がどうかしたのですか?」
「あー…ちょっとね…」
歯切れの悪さに何となく不穏なものを感じたが、聞かないわけにもいかずミモザは続きを待つ。
「アルカイドと同じようにメラク様も操られてて…メグレズがミモザさんを迎えに行ってる間に俺達の前に現れたんだよね」
「えぇ」
「スピカさんを傷つけさせるわけにはいかないし、かといって思い切り反撃するわけにもいかないし…」
「えぇ…」
「フェクダ先生と俺とで、取りあえず意識を奪おうと思って…メラク様の魔法…水の魔法を防ぐのに俺が土魔法で出した岩壁でその周囲を囲って閉じ込めて水没させた上に、フェクダ先生の風魔法で中の水をぐるぐるーっと攪拌してもらったんだぁ…その…うちの商品の魔道洗濯装置みたいに」
「洗濯装置…」
イプシロン商会の魔道洗濯装置というのはミモザも見たことがある。四角い箱に洗濯物と水と洗剤を入れてスイッチを押すと、自動で洗濯をしてくれるという便利な道具だ。決してそんな拷問器具みたいな扱いではなかった筈だ。
「メラク様は…ご無事なのですか?」
「やだなぁ無事ですよ……ちょっとまだ洗濯酔いが抜けていないだけで」
「洗濯酔い…」
聞きなれない不穏な言葉に思わず閉口し、ミモザはひっそりとメラクに同情した。まだアクルの滝行の方が優しかったかもしれないと思いながら、アルカイドが命拾いをしていたことを知った。
「でも、そうなのよね…半分本気だと言ったのはそのことなの。メラク様やアルカイド様が魔法攻撃を食らって正気に戻ったのなら、他の人たちもちょっと衝撃を与えれば洗脳が解けるんじゃないかしら?」
「それは…一般人に魔法で攻撃を加えるのはあまり賛成できませんね…ドゥーベにはいいかもしれないけれど…」
「ドウは操られているようには見えませんでした…自分の意思でやっているんだと思います。だから魔法を使ってもただの攻撃になってしまわないでしょうか…?」
「……浄化魔法を使えばいいだろ」
「!」
話し合う三人の間から言葉を挟んだのはぐったりと目を閉じていたレモンだった。
「レモン」
「さっきから聞いていれば衝撃だの攻撃だの…普通に考えて天使の光魔法で浄化すればいいだけだろうが…」
薄目を開けて体はぐったりしたまま「物理物理と脳筋しかいないのかここは…」とげんなりしたようにレモンは言った。
「レモン、浄化魔法を使えば城の人たちの洗脳が解けるの?」
「…解けるだろうが、数が多すぎる。全員を解放する前に魔力切れになるのがオチだ」
「ならどうすればいい?」
「冥王様を浄化しろ…元を断てば他の奴等の洗脳は解けるだろ」
「…それは、魔法を使ったらドウはどうなってしまうの?助けられるの?」
レモンの言葉にスピカが詰め寄る。
確かに、冥王を倒せば洗脳は解けるだろう。けれど倒してしまっては駄目なのだ。ドゥーベを助けるには冥王の力だけを消滅させなければならないのではないだろうか。
「………」
「お願いレモンちゃん教えて!!私、どうしたらドウを助けられるの?」
スピカの方に視線だけをやったレモンは、すぐに目を閉じてミモザの腕に蹲る。
「アイツに憑いたラムエルを…悪魔を追い出せれば……ただお前の力だけじゃ足りない…勇者の末裔も…」
「勇者の末裔…王家の人間?」
『私も一応王家の一員だから光魔法が使えるんだ』
前にアルコルが言っていたことを思い出して「王族なら誰でもいいの?」とレモンに聞くと、レモンは弱々しく首を横に振った。
「誰でもいいわけじゃない…勇者の魔法が必要…」
「…もしかして王家に伝わる一子相伝の魔法のことか?」
「…勇者の光魔法で強化された天使の魔法なら…冥王様を浄化できるだろう…」
「そうすればドウは助かるのね…」
意を決したようにスピカは、ぐっと顔を上げた。
「勇者の魔法…やっぱり王太子殿下を救出する必要があるな…そうと分かれば、スピカさん、フェクダ先生と城へ入るための相談しよう。メラク様もそろそろ落ち着く頃だろう」
「分かりました…!!」
「………」
立ち上がってアリオトと一緒にフェクダ達の方へ歩いていくスピカの後について歩きながら、腕の中に蹲ったままのレモンを見る。
「…ねぇレモン、スピカがドゥーベを浄化をしても貴方は消えないのよね?」
「………」
「レモン、答えて…!!」
返事をしないレモンに焦れてミモザが抱く腕に力を込めると「痛ぇよアホ」と憎まれ口が返ってくる。
「消えねーよ」
「本当に?」
「うぐっ…締めんな…!」
「本当の本当にね?」
「ぐえっ…、本当…だっ…て…悪魔は嘘はつかねーんだよ!」
「絶対よ?絶対だからね?」
「しつこいなお前も…」
ぶつぶつ言いながら疲れたように丸まってしまったレモンは、再び目を閉じた。
レモンの兄弟であるもう一人の悪魔にやられた傷もそうだが、何だかレモンの存在が以前よりも希薄なものになっている気がしてミモザは漠然とした不安を感じていた。腕の中にいるレモンの温かい体を抱きしめる腕に力を込める。今の状況を考えれば立ち止まっているわけにもいかない。
視線の先には城が見える。
そしてそこには今アルコルが囚われている。
(しっかりしなきゃ…)
レモンの体温を腹部に感じながら、不安を追い出すように頭を振った。
ミモザがフェクダ達のいるところまで辿りつくと、そこにはおそらくアリオトが魔法で造ったであろう簡易的な小さな小屋が建っていた。
「やぁミモザ君、無事かい?」
「えぇ…先生もご無事で何よりです」
朗らかに迎えてくれたフェクダは「さっきメラク君も目を覚ましたところなんだ」と言ってミモザ達を中に入れてくれた。
「メラク様…もう大丈夫なんですか?」
「あぁ、っ…スピカ嬢…もう…っぇ……げほっ…ごほ…大丈夫だ…」
時折混じる洗濯酔いの名残にミモザは気付かない振りをして、スピカ達の話に加わった。
「ミザールを助けようとアルカイドと共に城へ行ってからの記憶がないんだ」
メラクの話した内容はアルカイドとほとんど同じだった。けれども唯一違うのは、途中からメラクが自我を取り戻しかけていたことだった。
「最初は靄がかかったような感じだったが、段々頭がはっきりしてきて…けれども体を自分の意思で動かせなかった。意識はあるのに勝手に体が動かされている感じで、言葉も発せない」
「…うーん…アルカイド君よりはメラク君の方が魔力が高いせいかもしれないね」
フェクダ曰く、魔法への耐性がメラクの方が高かったのではないだろうかということだった。
「体は自由にならなかったがその間に見聞きしたことは覚えている。ミザールの幽閉されている場所なら分かる。ミザールを助けに行かなければ…!」
「けど王太子様を助ける前にドゥーベと出くわしたらどうするんです?また操られてしまうのでは?」
「…いや、おそらくドゥーベは今城にはいない…私がここへ来させられる前に、自分で学園へ行くと言っていた」
「学園へ…?」
どうしてこんな時に学園へ行く必要があったのだろうか。それともメラクの洗脳が解けかけていたことに気付いていたのだろうか。
「わざわざそれを言い残したというのであれば、それは“学園で待っている”という罠なのか…」
「どのみち行くしかないだろう」
「そうですね…私、もう一度ちゃんとドウと話さなきゃ…」
スピカが皆の顔を見渡して言う。
「お願いします、皆さんの力を私に貸して下さい!!お願いします!!」
頭を下げたスピカにアリオトやフェクダは頷く。主が捕らわれの身となる原因を作ったドゥーベに対して、メグレズとメラクはやや戸惑いを浮かべていたが、向き合うことは避けられないだろうとやがて頷いた。
「まずはミザール君を助け出そう」
フェクダの言った言葉にメグレズが反応する。
「けれど俺はすぐには行けない…二手に分かれたい。俺はミモザ嬢とアルを助けに行く」
「二人で行くのは賛成しないな。危険だ」
「戦力も分けたくはないですね…」
「アルを助け出して、二人を安全な場所まで送り届けたら必ず戻ります…どうか…!!」
苦言を呈したフェクダやアリオトに対して、メグレズが頭を下げる。
「…確かに戦力は分散したくないが……仕方ないだろうな…私がメグレズの立場でもそうする、と思う…」
意外にもメグレズの言葉を認めたのはメラクだった。
「私がミザールを助けたいと思うように、お前にとってはアルコル殿下がそうなのだろう。昔から…お前達は仲が良かったからな…私もお前のようにアイツに何でも言い合えるだけの信頼を築けていれば…」
「メラク様…」
「操られている時、ドゥーベの葛藤や苦しみが頭の中に流れ込んできて…彼があんなにも苦しんでいたことを知った。私はミザールの気持ちも、スピカ嬢の気持ちも知っていたのに…何もできなかった…いや、しなかったんだ。己と、自分の近しい人間が幸せになることしか考えていなかった…それによって不幸になる人間がいると知っていたのに…悪魔に付け入られる隙を作ったのは誰でもない私自身なんだろう…」
苦悩に顔を歪め、片手で額を抑えたメラクは悲痛な言葉を零す。
「すまない…こんなことを言っている場合じゃない。行こう。遅くなると日が暮れて動きにくくなる。ドゥーベが城にいないうちに二人を助け出すんだ」
「…はいっ」
スピカの返事と共にそれぞれが準備に取り掛かる。スピカ達は城内へ王太子殿下の救出。ミモザとメグレズは地下のアルコルの元へ。
「ミモザ嬢、行こう」
「はい!」
アルコルを早く助けたい一心でミモザはメグレズの後ろについて小走りで小屋を出た。




