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お母様の言うとおり!  作者: ふみ
28/61

閑話:第二王子の決意


『アルコル様と踊るのは楽しいです』



その言葉に、彼女に救われるのは一体何度目だろうと思う。




ミモザが自分の遊び相手として城へあがるようになってから数ヶ月。座学や剣の鍛錬だけでなくダンスやマナーのレッスンも再開され「一人では中々上達しないから」と、そういう時は必ずミモザがその相手として城へ呼ばれるようになった。


最初は彼女が頻繁に城へ来てくれることが単純に嬉しかった。けれどレッスンの度に上手くできない自分を知られるのが恥ずかしかった。それなのにミモザは嫌な顔一つせず「大丈夫ですわ、きっとできます」と自分を励まして何度も練習に付き合ってくれた。


『僕を嫌にならないのか』


彼女の優しさに甘えてつけこんでいるように思えて、情けなくなった自分はついそんなことを聞いてしまったのだと思う。己が口にした言葉だというのに失望を覚えた。


またやってしまった。ただ兄を羨み、僻んで卑屈になっていた少し前の自分に戻ってしまったかのようだと思った。一旦口に出してしまったことは戻らない。こんな卑屈な自分を見られたくなかった筈なのに、思い通りにならない現状に焦ってそんなことを言ってしまうなんて。


けれど歯噛みした自分に、ミモザはいとも簡単に「どうして?」と首を傾げて尋ね返してきた。


『どうしてって…足を踏まれたり、ステップを忘れたり、まともに踊ることすらできないのに…』

『そのための練習でしょう?』

『そうだけど…ミモザにはいいことなんかないんじゃないかって…思って…』

『私も同じ年頃の方と踊ったことがないので、アルコル様と踊るのはとてもいい練習になっていますよ?』

『………』

『それに、アルコル様とこうして踊るのは楽しいです』

『楽しい…?』

『はい。ダンスの先生とでは緊張してしまいますもの。ちゃんと足を踏まないように気をつけてくれているのが分かりますし、ダンスの最中にこっちを向いて笑ってくれますもの』

『え…』

『アルコル様はきっと私と踊るのが楽しいって思ってくださってるんだなぁ、って思ったら嬉しくて…だから楽しいって答えたんですけど…もしかしてアルコル様は私とでは嫌でしたか…?』

『ち、違う!!ミモザと踊れるのは嬉しかったけど、僕は迷惑をかけてばかりだったから…!!』

『…私、嫌がられてた訳じゃないんですね?』

『そんな訳ないだろう!!』


彼女から嫌われてしまうことはあっても、自分がミモザを嫌いになることなんてありえない。

思わず肩を掴んで大声で叫んでしまったが、彼女はそんな自分を可笑しそうに笑った。




彼女を困らせないだけの知識が欲しかった。彼女を守れるだけの力が欲しかった。


彼女の隣に立つのに相応しい人間になりたかった。



だから遅れていた分を取り戻すように勉強に没頭したし、メグレズに付き合ってもらって鍛錬も重ねた。苦手なダンスだって、姉に助力を請うて何度も練習した。

詰め込みすぎて熱を出したこともあった。けれどもそんな不甲斐ない自分ですら、ミモザは「努力をされた結果なのですからちっとも恥ずかしいことではありませんわ」と言ってくれた。


その優しさや温かさに触れる度、まだ彼女の隣に並ぶにはほど遠いのだと思い知らされる。


そうして一年、二年と過ごすうちにも彼女はどんどん綺麗になっていった。出会った頃からずっと自分は綺麗だと思っていたが、成長と共に少女らしい快活さは身を潜め、しとやかな女性らしくなっていく姿にどうしようもなく目が奪われた。それなのに自分と話すときは年相応の笑顔を見せてくれたりするのがたまらなく可愛くて。

ミモザのことを知る度に好きになる。どうしようもなく愛しくて、毎回城から帰る彼女を引き止めそうになる衝動を抑えるのが大変だった。

そしてそんな魅力的な彼女に惹かれるのは自分だけではないということも嫌と言うほど分かっていた。実際城でたまたますれ違った貴族令息達は、自分の側にいた彼女に目を奪われていたし、サザンクロス家には未だに彼女への婚約の申し込みがあるのだと聞いた。


自分にはミモザしかいないが、彼女にとってはそうじゃない。


もし、ミモザが自分でない他の誰かを選んだらなどと考えただけで、胸の内に黒くて苦いものが広がるのがわかった。

早く一人前の大人になりたかった。まだミモザが自分の側に居てくれるうちに、彼女に見直してもらえるように。


数年かけて漸く体重と身長がつり合うようになり、信頼してもらえるよう誠実に接するよう心掛けた。格好良く見られたいが為に話し方も変え、彼女に意識してもらえるよう態度にだって表した。けれどもそれはことごとく通じていなくて、彼女が自分の変化に気付いてくれたのは学園に入学する間近のことだったりする。


『アルコル様、もしかして痩せましたか?』


全く意識されていなかったと知った無念さと、漸く気付いてくれた嬉しさに複雑な感情を覚えたのを未だに覚えている。

しかも自棄になって「痩せたら格好良くなった?」と聞いた自分に「…?アルコル様は前から格好いいと思います」と事も無げに返された時の衝撃と言ったらない。

彼女曰く「強いて言えば格好悪かったのは最初の時だけですわ」とのことで、そう言ったら太っていた頃の自分も格好良かったと言われているのと同じことだと気付いたときに、本当に自分がどうしようもなく情けなくなった。


彼女がそういう人間だと分かっていた筈だったのに。今の自分にとって消したかった筈の忌々しい過去が、たった一言で愛しいと思える日がくるなんて、思いもしなかった。


ミモザは強い。相手と真っ直ぐに向き合おうとする意思と、その優しい心に救われた者も多いだろう。

けれども、城で自分の友人になると頷いた時しかり、妹君のお見合いに付いてきた時しかり、ミモザは相手のことばかりで自分の想いを抑えてしまう傾向があるように思う。

彼女の情にほだされやすいところにつけ込んだ自分が言えた義理ではないが、もっと自分を大事にしてほしいと思う。


自分の庇護など必要としていないかもしれない。けれども自分が彼女を守りたいと。自分にだけは我慢しないでわがままを言ってほしいと。そう思う想いは日に日に強くなっていった。




事件が起こったのはそんな矢先だった。


入学式を終え、星の花が咲いたことで国中に落ちていた暗い影が天使の再臨により活気を取り戻し始めていた頃。


『一番後ろの校舎の裏庭だ。早くしろ。天使の女に暴力振るったって、濡れ衣でお前の兄達に責められてる』


校舎を出て寮へ戻ろうとメグレズと庭を歩いていた自分は、彼女の使い魔から齎されたその言葉に頭が真っ白になるのがわかった。そして引き止めるメグレズに見ていた者がいないか探すよう言い残し、気がついた時には走り出していた。


近付くにつれ、自分の兄や七騎士に選ばれた黒髪の青年が詰る声が聞こえた。地を蹴る足に力を込め勢いよくその場に飛び込めば、ミモザは肩を震わせて今にも倒れそうに顔を青褪めさせていた。


そして自分の姿を見とめた彼女は、その瞳から涙を溢した。


我慢強くお人よしな彼女が、数年ぶりに見せた涙。その姿にどうしようもないほどの憤りを覚えた。

かつてアルカイドと対峙したときですら気丈に振舞って見せたミモザが、こんなにも怯え、傷付いて、助けに来た自分に縋り涙を流すなど余程のことだ。

話を聞いても彼女が一方的に責められる謂れはないと思った。自分や天使の生まれ変わりである少女の言葉すら聞き入れない兄達の独善的で理不尽な言動に怒りと同時に失望さえ覚えた。


自慢の兄だった。何でもできて、何をしても自分よりも上手くて、決して人の意見を蔑ろにするような人ではなかったのに。


そう思いながら抱き寄せたミモザの肩は小さくて、どうにか泣き止んでほしくて抱きしめる腕に力をこめる。兄の言動に違和感を抱いたものの、自分の腕の中にいる彼女を守らなければという思いが口調をきつくした。けれど、それを止めたのも他でもないミモザだった。


『あなたが兄として慕っている王太子殿下と、私のせいで仲違いをして欲しくないんです』


昔から嫉妬の対象であった兄と普通に話せるようになったのは彼女がいたからだ。兄との関係が改善したことを話すといつだって「良かったですね」と笑ってくれた。

自分のために、あの場を収めるために兄の言うことを飲み込んでしまった彼女に、結局また守られてしまったのだと忸怩たる思いだった。


その帰り道、いつもなら話しても話しても話し足りないくらいだというのに、手を引く自分はかける言葉が見つけられず、彼女もまた遠くを見るような目でぼんやりと歩きながら何かを考え込んでいた。


底知れない何かに怯えるような、いつもとどこか様子が違うミモザに違和感を覚えた。


ミモザの抱えている不安を取り除いてやりたい。けれど目の前の彼女一人守れなかった自分に何ができるのだろうと考える。


今にも泣き出しそうな空に己の無力さを痛いほど味わっていた。




翌日、心配になってミモザの様子を見に行くと、教室でスピカと談笑している姿が見えた。

笑っているらしい横顔にホッとすると同時に胸が痛んだ。

無理をして笑っているのではないか、昨日のことを思い出して怯えてはいないか。心配する自分に、ミモザは休憩時間に会いに来てくれた。


『大丈夫?』

『はい』

『本当に?嫌な思いしていない?』

『はい…スピカと話してみて私も彼女と仲良くなれたらいいなと思いました…っ…』

『無理してない…?』

『だ、大丈夫です…話の通じない方ではありませんでしたわ……あ、の…恥ずかしいので、その…手を』


「離してくださいませ…」と蚊の鳴くような小さな声で言われ、その時になって漸く自分が心配のあまりミモザの両手を握り締めて、至近距離で顔を覗き込むように喋っていたことに気付いた。


『す、まない…』


間近で見た赤い頬とか、恥ずかしいのか引き結ばれた唇から慌てて目を逸らして距離を取る。

いけない。ミモザが自分を好きになってくれるまで、きちんと節度を保とうとしているのについ頭に血が上っていたせいで失念していた。


『……いえ…』


頬を染め恥ずかしそうに目を伏せる彼女はとても可愛い。


自分の後ろから、その姿を目にした者共の感嘆の溜め息や呟きが聞こえ、思わず眉間に皺が寄る。見られたくないなどと。彼女は自分の婚約者ではないと言うのに、自らの狭量さには毎度嫌気がさす。



演習の出発前にも集合場所の中庭で、ミモザに言い寄る生徒にみっともなく嫉妬をして会話に無理矢理割り込んだ。彼女の視線が青年から自分に移った、ただそれだけのことが嬉しくて。そしてなんて浅ましい考えだろうと落ち込んだ。ただ、元々演習前にお守りを渡すつもりだったからとか、これからまる一日は彼女に会えないのだからそれくらいは許して欲しいとか、身勝手なことを思う自分もいて、集合の合図がかかるまで女々しいとは思いつつミモザの側を離れられなかった。



『アルコル様、どうかお気をつけて』



だから、その一報を聞いたとき、朝そう言って別れた彼女の笑顔を思い出してしまったら、もうじっとしていられなかった。


『森の東と西で同時に高ランクの魔物が出現したんだって!!』

『今先生達は西側で発現したウァプラにかかりきりで東側へ行けないらしい…!』

『ウァプラだって…!?何でそんな強い奴がこんな場所にいるんだよ!?』

『戦闘魔法が使える三年は東側の増援に向かえって…使えないものは他の班員と合流して森の入り口まで戻れって…』

『いくら戦闘魔法が使えたって無理だよ…』


教師達からの通達を受け、騒ぎ出した生徒達の間を縫うように走り出す。


『アルっ!!』

『っ』


見つからない姿を探して森の奥へと行こうとするその腕を掴んで止めたのはメグレズだった。


『落ち着いて』

『しかし…っ…』

『さっきフェクダ先生から東側に行くように指示があった。どうやら東側に出た魔物と交戦しているのはスピカ嬢達の班らしい』

『っな…じゃあミモザもそこに…!?』

『おそらく。今先生達は西のウァプラに手離せないらしく、東へは七騎士である王太子殿下とメラク様、ドゥーベが向かっていると言っていた。俺もすぐにそちらに向かう』

『僕も行く』

『なりません、アルは他の生徒達と一緒に森の外へ避難して、そこで生徒達を落ち着かせ待機していてください』

『メグレズ!!』

『駄目です、教師や王太子殿下がいない今、不安がっている彼等を落ち着かせることができるのは王子であるアルだけです。王族としての務めをお果たしください』

『兄上だって向かっているのだろう!!』

『王太子殿下はスピカ嬢の加護を得ている七騎士だからです……あのアルカイドが苦戦していると聞きました。おそらく七騎士以外…天使の加護がない人間では相手をするのは難しいでしょう』

『っ…それでも僕は…!!』

『アル…ミモザ嬢は俺が必ず見つけます…だからどうか…!!』

『っ…』


メグレズの言葉に唇を噛む。七騎士でもない自分が行っても足手まといになるだけなのだと、この場に居る身分の高い者として先導する責任があるのだと、頭では分かっていても頷けなかった。自分がこうして駄々を捏ねている間にもメグレズの増援を遅らせているだけだと分かっている。結局頷くしか選択肢がないことも。


『……わかった』

『はい』

『ミモザを…彼女を頼む…』

『はい、彼女は俺にとっても友ですから…必ず…!!』

『メグレズも…無茶はするな』

『っ…はい!』


決意を固めた顔で森の奥へ走っていくメグレズの後姿を見送って、自分は森の入り口へ踵を返した。


『魔物は先生方と七騎士達が戦ってくれている!!皆は森の入り口へ戻るんだ!!』


そう声をかけながら、未だ森の中に残っていた生徒達を誘導する。

好きな少女一人助けに行けないこの身が、ただ一人の親友を危険な場所へ見送らねばならないこの身が憎らしい。

それでも、今自分にできることをしなければきっと彼等に叱られてしまうだろう。


森の入り口まで戻ると、そこは避難した生徒達で溢れていた。上級生と協力して人数の確認や未だ連絡の取れていないものの確認を行う。


『…魔物がここまで襲ってきたら…?』

『先生達でも苦戦してるって言うのに…』


あちこちからあがる不安の声に声をかけて回る。


『先生達だけでなく、兄上…七騎士達も戦ってくれている。きっとすぐに無事に帰ってくる』


不安は伝播しやすい。実戦を経験したこともない生徒達が、高位の魔物という存在にどれだけ動揺しているかが伝わってくる。これだけの集団がパニックを起こしたのでは収拾がつかなくなるだろう。

一声で人心を惹きつけるような兄のようなカリスマ性は自分にはない。行いは小さくとも一人一人不安を訴える者の側へ行き『大丈夫だから』と声をかけた。


『第二王子殿下、戦闘のため自発的に現地に残った者達以外は揃ったようです』

『…そうか、ではそのまま待機させてくれ、不安がっている者には声かけを忘れずに…』


避難者の中にはやはり彼女の姿はなかった。


『王太子殿下達が戻られたぞ…!!』


忸怩たる思いでその場にいた自分は、その声に反応して駆け出した。


『兄上っ…ご無事で…!!』

『アル……』


怪我を負っているらしいぐったりとした様子のアルカイドに肩を貸し、数人の生徒達を引き連れた兄達に駆け寄ると、兄は自分をみとめて苦しそうな顔をした。


『魔物はどうなったのですか…!!メグレズ達は!?』

『西側の魔物は先生方が倒した。東側へ我々がついた時、そこにはスピカと重傷を負ったアルカイドとアリオトしかいなかった』

『…っ…ミモザは…!?彼女はどうしたんです!!』

『魔物に追われて森の中へ逃げ込んだんだ……早く探しに行かないと…っ…』


兄の肩で呻くように声を洩らしたアルカイドに『その怪我では無理だ!!』と兄が言う。


『そんな…!!』

『駆けつけた先生方が魔物の消失は確認したらしい…けれどそれに追われていたサザンクロス嬢が見つからない。今、スピカやメグレズが森の中を探している』

『っ……兄上、後はお願いします…!!』

『アルっ…!!』



気がつけば兄の引き止める声さえ聞かず走り出していた。







「はっ……は…っ……」




森の東側を目指して一気に駆けて、そこで人の気配を探す。


「誰かいないか!!どこだ…!!メグレズ!!」


真新しい人の歩いたような草の踏まれた跡を見つけて、まだ近くに誰かいるだろうとあたりをつけメグレズの名前を呼ぶ。


「………」


少し遠くから、微かな返事が返ってきた声がした。その方向へ足を向け走りながら呼べば、また声が返ってきた。


「メグレズ!!」

「っ…アル!?」


とうとう森の中にその深い緑の頭を見つけて、名を呼びながら駆け寄った。


「無事か…!?」

「俺は大丈夫です…けど…どうしてここに」

「…ちゃんと兄上と交代してきたよ。戦闘に関わっていなかった者達は全員無事避難できている。あとは兄上が見ていてくれるだろう」

「そうですか……ミモザ嬢の行方がわからないことも聞いたのですか?」

「あぁ…」

「森の荒れたところを辿ってここまではきましたが…未だその姿を見つけられず…」


「申し訳ありません」と、ぎりっと歯を食いしばったメグレズに怪我がない事を確認して「探そう」と肩を叩いた。


「ミモザはどうして一人で追われていたんだ?」

「…スピカ嬢の話だと、魔物に囚われてたスピカ嬢を助けるために、魔物に魔法を使ったらしいです」

「しかしミモザの精神魔法はそんなに能力が高くなかったのではないか?」

「…おそらくそれで魔物を屈せられず、怒りの矛先が彼女に向いたのではないかと思います」

「…魔物の消失を確認したというのは?」

「フェクダ先生です。高位の魔物はそれだけ大きな魔力をもっていますから…その魔力反応が突然消えたと言っていました」

「………」


アルカイドでも苦戦した魔物だ。ミモザが一人で倒したとは考えにくい。姿を隠したにしても、魔物が消えた今もこうして彼女が姿を見せないのは不自然だ。魔物が消えたことを知らないでそのまま隠れ続けているのか、それとも動けない怪我でもしているのか。


「もうすぐ日が暮れてしまうな…」


焦る気持ちとは裏腹に一向にミモザの姿は見つからない。


「…っ…ミモザ…」


アルコルが声を洩らした時、がさりと近くの茂みが揺れた。


「っ…レモン!?」


茂みを潜り抜けた黒猫は、アルコルとメグレズの姿をみとめるとついた葉っぱを体を震わせて落とした。


「………」

「レモン…!ミモザと一緒ではないのか…!?彼女はどこに…!!」

「…なぁ、お前はアイツの味方か?」

「何を言っているんだ…?ミモザの居場所を知っているのか?」

「あぁ知ってる」

「なら!」

「アイツの抱えてる問題を知ってもなお味方でいられると誓えるか?」

「問題…?」


じっとアルコルを見つめたままレモンは言う。


「アイツの本当の能力と、今までしてきたこと、これから起きること」

「………」

「これからもっとアイツには悪意が降りかかるだろう…アイツだけじゃない。お前も、その周囲も巻き込まれる。関わるというのなら危険が及ぶし命の保証もできない。だからお前に問う。その時になってもお前はアイツの味方でいられるのか?それが約束できないのならこれ以上アイツに関わるな」

「レモン、一体…何の話を…」


淡々と話すレモンに動揺するメグレズを手で制して、アルコルはレモンの前に片膝をついた。


「わかった、約束する」

「アルっ…」

「ミモザがどんなことを抱えていようと、僕の答えは決まっているよメグレズ」

「っ…しかしレモンの話では危険が貴方の身にも降りかかるかもしれないんですよ!?」

「……たとえそうだとしても、ここで彼女を諦めるなんてことできないんだ」

「アル……」

「話せ、レモン」

「……聞いたら後戻りはできないぞ?約束を破ったら承知しない。その時は俺がお前の命をもらう。悪魔との契約だ。それでもいいのか?」

「あぁ」

「………」



迷いなく頷いたアルコルに、メグレズもまた意を決したようにアルコルの後ろに同じように片膝をついた。




誤字報告ありがとうございますm(_ _)m

閑話ばかりで申し訳ないです。

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