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 昔々、この地には数多の小国が乱立し、互いに争っていた。その中で、ある国の王が国々の統一を目指した。


 王には愛する妃がいた。妃は強い呪力を持つ巫女だった。

 妃に支えられて、王は困難に打ち克ち、周囲の国を併合していった。

 しかし、悲願の達成まであとわずかとなった時、妃は王を庇って刺客の刃に斃れた。死を覚悟した妃は愛用の鏡に己の呪力を全て注ぎ込み、直後に息絶えた。


 妃亡き後、悲しみを乗り越えて王はこの地の統一を果たした。王は新しい皇国の初代皇帝として即位した。皇帝は亡き妃に皇妃の称号を贈り、別に皇妃を立てることは生涯なかった。

 皇帝は宮殿の隣に皇妃の遺した鏡を祀る神殿を建てた。鏡の加護を受けて、初代皇帝が皇妃のもとへ旅立ってからも皇国は栄えた。


 しかし、鏡の力は徐々に弱まっていった。そのため、皇帝の一族の中から新たに巫女が選ばれ、鏡に呪力が注がれた。鏡には再び力が戻り、皇国は護られた。


 その後も、初代皇帝と皇妃の血を継ぐ未婚の皇女の中から『鏡の巫女』が選ばれ、鏡に呪力を込める儀式が60年に一度行われている。これは『鏡の祭』と呼ばれ、皇国において皇帝の即位に次いで重要な儀式とされている。



  ◆◆◆◆◆



 力の衰えを感じて、祭の時期が近づいていることを思い出した。

 そろそろ次の巫女を決めなければならない。


 前回の祭で巫女に選んだのは気位の高い、だが、皇帝の意に逆らうことはしない実に皇女らしい娘だったが、3年前に死んだ。


 新しい巫女を選ぶべく、その条件に沿う皇女たちを眺めるが、やはり前の巫女と似たり寄ったりな者ばかりだった。はっきり言って、つまらない。


 視線を転じてみると、飛び抜けて高い呪力を持つ娘が目に入った。

 だが、本当に気になったのは、彼女の纏う空気が織音(おりね)ーー今では初代皇妃と呼ばれている女によく似ていることだ。印象どおりの娘なら、面白いことになるに違いない。


 娘は「皇女」と呼ばれたことはないが、要は、祭が問題なく済んでしまえば良いのだ。

 もしかしたら、黄泉の国にいるあいつは「約束を違えるな」と怒るかもしれないが、他に何をできるわけでもない。


 意を決し、12人目の巫女としてその娘の名を神殿に伝えることにした。

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