8/18
やめない
「ハハッ、そういう感じなわけ。
信じらんねぇ、本当。
そりゃこんな時間になるでしょ。
急いで仕事終わらせて、
それから電車乗って、
何時間かかると思ってんの。」
「分かってるよ!
先週何時間もかけて
行って帰って来たんだから。
でも、そんな言い方しなくても…」
しまった、そう思った時に、
「先生、私達先に帰ります。
また月曜日、さっき言ってたの見てね!」
ニコニコと笑いながらも、足早にその場を立ち去る。
どうして、冷静になれないんだろう、
もっと言い方だってあるのに。
「もう、やだ。」
心の中で呟いたつもりだった。
でもそれはハッキリと声に出てて、
慶太は大きな溜息をついた。
「じゃあ、もう、やめる?」
「やめない、そんな事言ってない。」
自分が思った以上に大きな声だった。
静まり返った空間に響き渡り、
急に恥ずかしくなって、思わず俯く。




