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短い髪
「郁!」
3週間振りに会う慶太は少し髪が伸びた気がした。
人目も憚らず、ギュッと抱き締められ、
私の頭を撫でる。
「やっぱり俺、結構長いの好きだったな。」
肩につくか、つかないか、バッサリと切った髪。
慶太は最初にそれを見た時、
懐かしいとはにかんだ。
なのに、それ以降は会う度にそう言われる。
「いつかは伸びるよ。」
あまりに何度も何度も言うもんだから、
最近はすっかり面倒くさくなってしまった。
三連休の初日、朝7時の快速電車。
3日分の着替えを詰めた鞄を持ち、
慶太の住む街まで来た。
朝6時の電車に乗ればそのまま仕事に行けるから
丸3日、一緒に過ごせる。
慶太は1週間も前から
あそこに行きたい、家でゆっくりしたい、
と、毎日コロコロと希望を変えて話した。
あと1ヶ月もすれば、この遠距離も終わる。
私と慶太はこの1年ちょっと、
ケンカらしいケンカもしないまま、
本当にただただ好きを募らせた。




