噂
月曜日の昼休み、学年主任に呼ばれ、
卒業生と付き合っていると生徒が話してた、
けれど、それは生徒の勘違いで、
卒業生ではなくて、年下の彼氏だった、
という、噂を生徒達がしていた、と聞かされた。
お付き合いをするのは大いに結構、
だけど、TPOを弁えて、
教育者である事を見失わないように、と
釘を刺された。
放課後、この間の生徒達が職員室に来て、
提出するものを見て欲しいと再度頼まれた。
学校の前のコンビニに一緒に行き、
一番高いアイスクリームをご馳走した。
授業が始まる前に、
郁先生にはイケメンの彼氏がいて、
その彼氏は年下で、
ここの卒業生らしいと皆んなに話していた所、
授業準備をしていた学年主任の先生に
その彼氏の名前は聞いたかを尋ねられたそう。
先生の表情から、生徒なりにまずいと感じ、
咄嗟に、卒業生というのは、
そうだったらロマンチックだなと思っただけで、
本当は年下の彼氏なだけだ、と、
誤魔化してくれたと聞いた。
「本当、ごめんね。
情けない、お恥ずかしい限りで…。
ありがとう、助かりました。」
アイスクリームを食べながら、
誰にも言わないからと慶太との馴れ初めを聞かれた。
卒業して数年経ってから、転勤先で再会し、
そういう関係になったとだけ伝えた。
でも、そういう事だと改めて思わされた。
学年主任が名前を聞いたか尋ねるのは、
当たり前の事で、
講師と生徒が、例え卒業していたとしても、
そんな関係になるなんて、
やっぱりあってはならない。
だけど、だからって、
今さら慶太との付き合いをやめるつもりはない。
だからこそ、ちゃんとしなきゃいけないと思った。
アイスクリームを食べながら、
2人はハイテンションでロマンチックだとか、
ドラマみたいだとか、
先生の彼氏の友達を紹介して欲しいだとか、
二十歳の女子生徒らしい話で盛り上がった。




