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好きのきっかけ
「あのさ、郁と式場見学に行った後、
コーヒー飲んだの覚えてる?」
慶太が懐かしそうにコーヒーを飲みながら、
私の顔を覗いて言った。
「うん、覚えてるよ、夏でしょ?」
「そうそう、俺、あの時に、
あー先生の事好きだって思ったんだよね。
ほら、コーヒー受け取る時に指がさ、
当たったんだけど、ドキドキしてさ。」
慶太は恥ずかしそうに小さく笑った。
その姿を見て、本当に、愛しいと思った。
ゆっくりと顔を近付け、
少し長めに慶太に口付けた。
唇を離すと、慶太はニッと笑った。
「郁からしてくれるの、珍しいね。」
「来週、不動産屋さんに行こっか。」
慶太はいいの?と電車が到着するまで、
何度となく確かめた。
その度にいいよとハッキリ答えた。




