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クソメイドとその主  作者: 藤 小百合
3/30

いざ外へ(1)

基本的に一話完結の形をとっていこうと思っているこの作品ですが、今回は続きものとなります。

今回もまた下ネタが多く飛び出ますが、そこはご承知ください。

私の文章はまだまだ拙いかと思いますが、それでも楽しんでいただけたら僥倖です。

「ズバリ聞きます。ご主人様は『穿いてる方がいい派』ですか、それとも『穿いていないほうがいい派』ですか」

「お前のその言動をどうにかしたい派」

「もう、まじめに答えてください!」


 いつもの昼下がり。いつもの庭の真ん中で、今日も今日とてティータイムを繰り広げる、メイドの桜花と主の紅葉。

 毎度のごとく、頭のおかしいことしか言わないクソメイドに、紅葉は軽い頭痛を憶える。


「質問の趣旨がわからない」

「下着の話です」

「そういう話じゃない。なんでそんなこと聞いてくるのか、ってことだよ」

「ご主人様が望むのなら、穿かないで過ごそうかと」

「少しは自重しろこの痴女」


 この手の調子の会話は、桜花をメイドとして雇ってからほぼ毎日しているので、もはや大げさに突っ込むこともなくなってきた。

 何かにつけて卑猥な会話に持っていこうと桜花に紅葉もさすがに対処法がわかってきている。適当に会話をすればいいのだ。

 だから、紅葉はテーブルに教科書とワークを広げ、勉強をしていた。


「ご主人様の前以外ではしませんよ。私見られて興奮する性癖は()()ないですから」

「まだ、なのかよ」


 すると、桜花が教科書を覗き込んでくる。


「ところで、どうしてこんなところで高校の教科書広げて勉強してるんですか? 学校に行けば……あーそういえばご主人様はヒキコモリでしたね。私としては長い時間一緒に居られるので別にいいですが」

「なにも好き好んで引きこもっているわけじゃない。外にはバカしかいないからな。出たくないんだよ」

「過激ですねー。あ、そこ間違ってますよ」

「え」

「ほらここ」


 ワークを見ながら、その一か所を指さしてくる。

 答えを確認すると確かに間違っている。

 紅葉は心底意外そうな顔をして桜花を見つめる。


「どうかしました? はっ! もしや今すぐベッドインしたいんですか! いいですよ、ご主人様秘蔵のお宝に描かれているようなプレイでも。あ、こういう時は『私に乱暴する気でしょ、エロ同人みたいに』でしたっけ」

「まったく一ミリもそんなこと考えていない。お前が勉強できたことが意外だっただけだ」

「そんな~。メイド服はご主人様の性癖のはずなのに、どうして私に欲情しないんですか」


 がっかりした様子の桜花に対し、紅葉は真顔で、

「猿に欲情する人間はいないだろ」

「私はサルですか!」


 桜花はよろよろと後ずさり、その場にひざをついて「私が……サル……」と落ち込む。

 その様子にも何も言わずに、紅葉は話を続ける。


「というか、なんで俺のお宝のこと知ってるんだよ。あと、学校行ってないはずなのに、なんで勉強できるんだよ」


 話しかけた言葉に対し、返ってくるのは呪いの声めいた「私が……サル……」という声だけ。

 さすがに紅葉もイライラしてくる。

 話にならないのも考え物なので、こういう時の対処法である、やけくそ気味に褒める、を実行する。


「性格は腐ってるけど、外見は俺の好みだぞ。性格は腐っているけど」


 大事な部分を二回も行ったのに、その言葉を聞いた桜花の耳は、都合よく解釈し脳へと伝える。

 すると、みるみるうちに復活し、勢い良く立った桜花は紅葉に迫り、顔を近づける。


「ホントですか! 私可愛いですか!? ヤりたくなりましたか?」

「キモい顔近づけんな。そういう下品でアホな脳みそでなけりゃ告ってたよ」

「えへ、えへへへへ」


 どこをどう間違って聞こえたのか、ほほを抑えてにやついてくる。

 外見が可愛いというのは本心だったが、サル扱いもまた本心で。さらに言えば今の言動で余計に好感度が下がっていた。


「いいから質問に答えろ」

 一向に話が進まないので、仕方なく促してみる」


「え、あ、はい。えっと、お宝はこの前ご主人様の部屋を掃除したときに見つけました。ベッドの下なんて定番なところに隠してありましたね。いやあ、ご主人様もノーマルな男の子ってわかって安心しましたよ。実は最近、ホモなんじゃないかと疑ってましたからね。どんなものが好きなのかと思って中を見てると、つい発情しちゃって、ご主人様のベッドでついついそれをおかずにリビドーを発散させちゃいました」

 

 饒舌にアホみたいなことを言ってくるメイドに主の堪忍袋の緒も静かに切れる。


「お前クビな。今すぐ出てけ」

 しかし、そんな言葉は都合のいいことしか聞こえない耳にはもちろん入っていかず。


「それで、勉強ができるのは、もともと私天才なんですよ。わりと何でもできるほうで、高校の勉強も中学時代に、高校行けないかもしれないと思って先生に無理言って教えてもらってましたから」

「そうか、とりあえずお前クビな」


「さてさて、そのお話はここまでにして。ご主人様。少し外へ買い物に出かけませんか?」

「は?」


 いきなりのメイドの言葉。外……? なぜ? 混乱する紅葉の頭の中をよそに、メイドははただ静かに微笑んでいるだけだった。

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