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クソメイドとその主  作者: 藤 小百合
25/30

交換日記 海編

こんにちは。

今回は紅葉と桜花以外の三人に焦点を当てた物語。その最初である海の話です。

紅葉と桜花の日常を描きつつ、三人の思いを少しすくい上がられたらと思います。

あと数回で終わりを迎えようとしているこの作品ですが、どうか、最後まで楽しんでいただけたらと思います。

では。

「ふぅ」


 秋も過ぎ去った冬の入り口。

 いつものように、お風呂から上がった海は、パジャマ姿で髪を乾かす。

 洗面台の鏡を前に、ドライヤーで丁寧に乾かしていく。

 別に、誰かに意識してもらいたいとか、そういう感情はない。というか、海にとっての恋愛対象は異性ではなく同性。もっと言うと、双子の妹の花火だけだ。

 が、女の子として、最低限いろいろと気を遣うべきとも思っている。

 ファッション、メイク、言葉遣いや礼儀に態度。淑女、とまではいかなくとも、社会に出て恥ずかしくない程度には嗜んでおきたい。

 男に、好きな人に見せるだけが、女の全てではないのだ。

 髪を乾かし終え、自室へ向かう。

 椅子の座り、机に向かう。

 机の上に置いてある、一冊のノートを手に取り、最初のページを開く。白紙のそれは、昨日海が思い立ったもの。

 ――交換日記。

 小学生ぐらいの時に友達とやったそれを、今度は海、花火、雪の三人でやってみたらどうかと提案した。内容は自由ではなく、紅葉と桜花のこと。

 割と最初のほうから距離が近かった二人だが、ここ最近はさらに近づいてきている。

 見ていて楽しい二人だが、あくまで海が見ている二人しか知らない。

 休日は度々お邪魔している屋敷の中のことだって、毎度行っているわけじゃないし、入ったことのない部屋も多い。知らない側面があるのではないかと、不意に思ったのがきっかけだった。

 屋敷の中のことだったら花火と雪のほうが知っているだろうし、花火が帰った後の、夜や朝にかけては雪しか知らないだろうし。

 今後、からか……ではなく、応援するにも多くのネタ……ではなく情報があったほうがいいのではないか、ということで、花火たちの知らない学校での二人の様子を担当することになった。

 あの誕生会のあとから、何やら妙に距離感が変わった気がする。という満場一致の見解の理由を探るべく、学校内ではとりわけ目を光らせていた。


「今日会ったことを以下に記すっと」


 これじゃ、日記というよりは報告書だな、と苦笑しながら書き進めていく。




 今日も変わったことはなかった。と言っても、あれから様子がおかしいのは気になるところ。

 変わったこととは言えないかもしれないが、桜花ちゃんがピンクの天然石のネックレスをしていた。

 学校ではあまりそういうのはよろしくないけど、先生の前では隠しているし、時折、ネックレスを見つめる目が、嬉しそうに細められていたり、制服の上から握ったりしていた。よほど大事なものと見える。

 桜花ちゃんが大事にするものと言えば、一つしかない。柊君からの贈り物だ。

 思えば、確か桜花ちゃんの誕生日は柊君の一日前だったような気がする。

 桜花ちゃん自身、私たちには何も言ってこなかったし、むしろ柊君の話題で自分の誕生日の話題そのものを意識させないようにしていた、ような気がする。

 しかし、もし仮に。柊君が知っていたら? あれが柊君からの誕生日プレゼントだったら?

 後で調べたけど、あの天然石はローズクォーツって言って、石言葉はなんか愛に関することだった。

 柊君のことだから、告ってはいないんだろうけど、もう実質的な告白だよね。

 そこまで行ってなんで付き合わないんだろ。むしろもう結婚しろよ。

 毎日毎日イチャイチャしやがって。別にさ、私には花火がいるからいいけどさ。でも、なんかこう、ああいうのもいいかなって思えてきちゃうじゃん。

 見ているほうが胸焼けしそうなほど甘い恋ってやつ? 時々、無性に羨ましくなるんだよね。あと、私はこのままでいいのかなって思いとかも出てきて。

 まぁ、私のことは置いておいて。

 学校でのことを詳しく書いていくね。

 登校途中にいつも通り会って、いつも通りに挨拶してから他愛無い話しながら学校に行った。

 いつも以上に桜花ちゃんはにやにやしてたなぁ。よほど良いことでもあったんだろうなって、そこまで深く考えてなかったけど、書いた通りのことがあって、そのことでニヤついてたんだなって今となっては思う。

 授業中はいたって真面目にしていたかな。ただ、柊君は頭を抱えていることが多かったかな。なんでもできるような雰囲気があるけど、勉強は苦手っぽいんだよね。テストの度に落ち込んでるし。特に数学は苦手みたいで、数学の時間はすっごく難しい顔してた。

 苦手だけどさぼらないのはいいことだよね。みんな授業真面目に受けてないことあるし。

 その点柊君は先生に聞いたり、休み時間に桜花ちゃんに聞いたりしてそこんところ怠ってないから、いいと思う。

 休み時間と言えば、柊君に近寄るのって桜花ちゃんと私ぐらいなんだよね。他の人と話している姿を見ることほとんどないし。でも、いじめられたり無視されたりってわけじゃなくて、ただ単に接点がないだけって感じかな。普通に話すし。

 そう言えば、体育祭から榊さんと話しているところは見るかな。榊さんっていうのはバドミントン部のスラッとしたスタイルのいい女の子。

 他にも文化祭で衣装を作ってた子とか、女装姿に感動したらしい男子とかとたまに話してる。

 桜花ちゃんのほうもそんな感じかな。

 休み時間とか柊君にべったりだし。

 私は、言うほど一緒にいないかな。他の子とかとご飯食べたりしてるし。

 あの二人はいつも二人で食べてる。

 たまに桜花ちゃんが「あ~ん」とかして、柊君にチョップくらってるけど。

 前々から思ってたけど、桜花ちゃんってMっ気あるよね……?

 みんなの前で柊君にかなり攻めてるし。一番驚いたのは、いつだったか下着付けてないって言ってたことかな。ホントビックリしたし、フォローが大変だった……。

 学校で柊君にリモコン渡したりとか、手錠渡したりとか。……結構ヤバいやつだな、桜花ちゃん。

 今日は特に何もなかったけど、これからもあると思うと胃が痛いよ。

 昼休みはさっき書いたように二人でご飯食べてたかな。桜花ちゃん、本当に嬉しそうに笑ってた。

 部活に入ってないから午後の授業のあと、三人で柊君の家に帰ってきた。その後は二人も知っている通りだから、ここでは省略させてもらうね。

 年内だと、あとクリスマスくらいかな、イベントは。進展するかな? あの二人。

 今日はこんなとこ。二人から見た柊君と桜花ちゃんがどんな感じなのか、教えてね。




「ふぅ~」


 開いていたノートを閉じて一息つく。

 机の上の時計に示された時刻を見て立ち上がる。

 隣の部屋に行き、扉をノックする。


「はい」


 応じた声とともに開かれた扉。顔を出した花火に笑いかける。


「ごめんね、夜に」

「ううん。どうしたの?」

「うん。これ。次は花火でしょ?」


 手にしていたノートを花火に差し出す。


「あ、そっか。ありがとう」

「ううん。それじゃあ、お休み」

「うん。お休みなさい」


 挨拶とともに笑いあい、自室に戻る。

 以前は部屋に閉じこもっていた妹。でも今は、一緒に旅行に行くほど活発になってきている。

 紅葉に任せてよかったと、心から思う。

 花火は少しづつ自信を持ち始めて、変わっている。

 桜花と紅葉も、当時より関係の形を変えている。気持ちもお互いに対する思いも。

 雪も来たばかりの頃より慣れて、かなり毒を吐いたり扱いが雑になってきていたりする。

 みんな変わっている。日記にも書いたが、このままでいいのだろうかと胸がチクチクする。

 今までは、花火が一番だった。

 幼いころから一緒にいて、自分の半身みたいに思っていて。いきなり失われても、取り戻そうとしてきた。女の子のことをよく知り、求めているものを見つけようとして、より深く知っていった。結果、男よりも女と一緒にいて興味を示すようになった。

 間違っていたとは思わない。女の子もかわいいし好きだし、愛せる。それ自体と至る経緯は否定しない。でも、もういいのかもしれない。

 みんな変わった。花火も。今度は自分の番ではないだろうか。

 もう、花火を縛り付けておくのは、やめにしよう。

 心の中、深く深いところ。ひっそりと決めた。

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