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クソメイドとその主  作者: 藤 小百合
17/30

リア充の巣窟 夏休みpart2

こんにちは。今回は更新が遅れてしまいましたが、夏休み編二回目でございます。

私の妄想を詰めに詰めた今作ですが、初めの頃のを読み返すと、今と大分違うな、と。

回を重ねるごとにギャグが減って、普通のラブコメというか、そういう風になっていました。

これからは、最初のようなギャグとテンポを取り戻しながらも、二人の仲を少しづつ縮めていけたら、と思います。

今回は海、ということで、キャラの名前と間違わないよう、青い方はひらがなで、キャラのほうは漢字で表記しています。

未熟な私の文章ですが、今回も、また、いつか来る終わりまで付き合ってくれると嬉しいです。

 蛍の見られる旅館でのお泊り。最初こそいろいろあったものの、最終的には当初の目的を完遂できた。

 蛍を前に、目を輝かせた女子たちはあの後十分もたたずに寝てしまった。桜花も例外ではなく、うとうとしながらも、幸せそうにしていたので特に起こすようなことはせず、紅葉も自室へと戻り、休んだ。

 布団に入った後も、桜花の笑顔が、今までで一番輝いていたあの桜顔が瞼の裏に浮かんで離れず、なかなか寝付けなかったのは、女子群には言わないでおくが。

 寝付けなかったせいで、寝不足なのは言うまでもない。

 さて、寝不足な状態のままなのに、女子群はもちろんテンション高く、次の日の出発も朝早くからになったわけだが……。

「うー」

「どうした? 顔が死んでるぞ」

 もともと朝は弱いのに、寝不足まで加わったらさすがに隠し切れないし顔も死ぬ。さらにはもう一つ要因がある。

「眠いだけ」

「そうか?」

 隣で歩く雪は平然としていて、それが羨ましい。

 前日の旅館から出発して、バスに揺られること数時間。今度は景色が変わって、地平線にまで広がる青、光り輝く砂。そう、うみにまで来ていた。

 先に、予約してあったというホテルに荷物を置き、そこから徒歩での移動となっていた。

「うーみだー! わたしもうみだー!」

「わあぁ! すっごく広いですね!」

 うみが目の前にあって開放的だ。テンションが上がるのもわかる。が、

「やばい。もう無理」

 砂浜に着いた途端に、紅葉は膝から崩れる。

「どうした!?」

 隣にいた雪がすぐさま駆け寄る。

「バスで……酔った……」

 紅葉はあまり乗り物を得意としない。

 小さい時からよく酔っていて、車、バス、飛行機、電車、船は乗ったことがないが、そのすべてで酔ったことがある。果てはジェットコースターですら酔ったことがあるほど。

 今回も、寝不足で長時間のバス移動、しかもバスの車内は結構混んでいて、到着した後も休む間もなくあれよこれよと移動三昧。加えて、ここにきてのリア充の人込み。

 人酔いも相まってさらに具合が悪い。頭がずっと揺らされているような感覚が抜けない。

「大丈夫ですか、ご主人様」

 女組でパラソルを設置し、その下で横になる紅葉を桜花が心配そうにのぞき込む。

「あ、ああ。横になったらだいぶ良くなった。他のやつらは?」

「とりあえず着替えてくるそうです」

「じゃあ、お前も着替えて来いよ。俺のことは気にしないで遊んで来い。どうせ、うみも初めてなんだろ?」

「いえ、私はここにいます」

「別にいいっての」

 それでもかたくなに行こうとしない桜花の様子をみて、紅葉はしばし考える。桜花には楽しんでほしい。自分のことなど気にせず、自由に遊んでいるほうが、紅葉にとっても嬉しいことだ。しかし、こうなっては説得するのは骨が折れそうだ。なら、方向を変えるしかないだろう。

「せっかくここまで来たんだし、お前の水着姿も見たかったんだがな」

 ぽつりと、まるで何でもない独り言のようにこぼす。

 横目で桜花を確認すると、目を見開いて赤くなっていた。

「す、すぐ着替えてきます!!」

 そう言い残して走って更衣室の方向へと去って行った。

 手がかかるメイドだ。

 自然と顔が笑みの形をとる。

 むろん嘘ではない。が、普段は言わないことを言うのは結構恥ずかしいものだ。

「赤くなっているのは俺もか」

 恥ずかしさと桜花の水着姿を想像して顔が熱くなったので腕で顔を隠して寝たふりをする。

 しかし、

 まわりからは、若い男女のキャキャとはしゃぐ声が嫌というほど聞こえてくる。

「……リア充が」

 つい、口から飛び出す怒りの言葉。マジ羨ましい。

「ねぇー、日焼け止めぬってぇー」

「しょうがねぇなぁ」

「ひゃっ、冷たーい」

「変な声出すなよー。興奮するだろー」

「きゃーけだものー」

 ………………。

 なんだあれ。

 絶対そう思ってないだろっていう声色だった言葉がいくつかあったんだが。イチャイチャしやがって。人のことを考えろ。こっちはそういうことやりたいのに恥ずかしいし関係上なんか憚れるんだよ。

 以前ラブなホテルに入ったことは棚に上げる。というか、その頃はそこまで意識してなかった。

 今では違う。いつの間にか、あいつのことを意識していた。認めるのも恥ずかしいが、好き、になったんだと思う。

 でも、今までの関係がその次に行くことを阻む。どうすればいいのか、何もわからない。

 桜花のほうからは、それこそ初対面の時から好意を露わにしてくれていたが、紅葉のほうは当初は無碍にしていた。今更どうしろと言うのだろうか。

 紅葉自身、桜花とどういう関係になりたいのかわかっていない部分がある。

 今まで通りの距離感でいたいとも思うし、あんなふうに露骨な恋人みたいに振る舞ってみたいとも思う。

「どうしたいんだよ、俺は」

 ため息が漏れる。できるなら、今日、この機会に関係を一歩進めたいとは思うのだが。

「お待たせー。大丈夫?」

 と、そこで、海と花火、雪が水着姿でやってきた。

「どう? わたしたちの水着姿。くらっと来た? 大きくなった?」

「おい、変態発言やめろ」

 しかし、魅力的なのは事実。三者三葉デザインは違うが、露出面積は多く、どこがとは具体的には言わないが、男なら目を吸い寄せられる部分は、それぞれの大きさだが魅力的だということに変わりはない。

 具体的に言うと、花火は言わずもがな、大きい。身長に似合わず、圧倒的に飛び出している。シンプルなデザインの水着だが、ビキニタイプとその体を強調している。おそらく海の仕業だろう。恥ずかしそうに腕で体を隠す動作もグッとくる。

 海も、大きい部類だろう。だが、こちらは体に合ったサイズで、全体的にバランスがいい。花火と同じくビキニタイプだが、こちらはオフショルビキニで可愛いさが増している。妹と違って隠すことはしないが、そのせいで余計に目がいきそうになる。普段のイメージになった色合いでとても自然に見える。

 雪はパンツタイプで、体形を隠しつつも活発な印象を与える。しかし、決してないわけではなく、成長途中なのが見て取れる。長い銀髪が太陽の下で輝きを放ち、異彩を放つが、その髪と瞳を違和感なくするデザインなため、言うほどの違和感を覚えない。むしろ、外国人の水着姿といった感じに受け入れられる。

 と、そこまで考えて何を考えているんだとバカバカしくなる。

「で、実際どうなの?」

「似合ってるよ」

「それだけ? きれいだよ、とかないの?」

「キレイダヨ」

「棒読みだなぁ」

「その言葉は桜花の為にとってあるんだろう」

「察そうよ、お姉ちゃん」

「あー、そっかぁ」

「おま、えら」

 にやにやしやがる夏冬の何人に具合悪さを超えて、気恥ずかしさと怒りがわく。

「はぁ、バカバカしい」

 嘆息し、立ち上がる。

「どこか行くのか?」

 怪訝そうに見上げる雪の視線を受けて、肩をすくめる。

「暑いし、飲み物買ってこようかと思ってな。体調もある程度治ったし」

「そうか」

 歩き出した紅葉が花火の横を通る時、ぼそりとつぶやかれた声にドキリとする。

「お、桜花さんなら、更衣室のほうに行けば会えると思います」

 敢えて返事をせず、そのまま通り過ぎる。

 後ろからは、「さぁて、水着女子をナンパでも行きますか」という海に「節操ないな」という雪の冷静な突っ込みや、「本命は花火だよ。ねぇー花火」「お、お姉ちゃん恥ずかしいから抱きつかないで」といういつもの声が聞こえてきて、軽く失笑する。




 更衣室方面を目指しながら、途中にあった自販機で飲み物を適当に五本買う。おかげで両手に抱えることになったが、仕方ないと割り切って歩く。

 視線を動かせば、人、人、そして人。肌色が目に痛い。

 どこもかしこもリア充。ホント、イラつく。非リアの怨みを知れ。

 紅葉は泳げることは泳げるが、あまり得意ではない。海や雪あたりは得意かもしれない。花火は……あの青っ白い肌を見ればわかるか。となると、桜花はどうだろうか。桜花のことは知らないことの方が多い気がする。親のこととか、蒸発したことしか聞いたことがない。随分と貧乏な生活をしていたらしいが、どんな生活をしていたのかとか、屋敷に来る前までの桜花を紅葉は知らない。

「知れたらいいのにな」

 ついこぼす。

 いかんいかんと首を軽く振って負の思考を追い払う。同時に頭がくらくらする。まだ本調子ではないらしい。

 しかし、これだけ歩けど会えないということは入れ違いにでもなったのだろうか。ならばもう戻ったほうがいいか。

 踵を返しかけたその時だった。

「ん?」

 妙な人だかりがあった。と言っても数人が集まっている程度だが、どうにも嫌な予感がする。

 大半が男なのでおそらくナンパだろうが、そういうのはあまり好きではない。

「っ!」

 一応様子を見ておこうと近づいた時、思わず息を呑んだ。

 そこには一人の女性がいた。見知った顔だった。けれど普段とは違った輝きがあった。

 いつもは意識してなかった短めの黒髪が海風に流れ、健康的な白い肌とパレオタイプの水着がいい意味で異質さを放っていた。露わになった胸元は大きなふくらみを湛え、しかして、全体的に太いこともなく、完璧なスタイル。

 その周囲だけが華やいで見えるほど、彼女は魅力的すぎた。

 思わず固まってしまう。反応が遅れたが、どうやら嫌がっているようだ。……自分が王子だなんて思い上がりはしないけど、この場合は自分が行ってもいいのではないだろうか。

 自分を奮い立たせ、向かう。スマートに、格好よくというふうにはいかないだろう。それでも……。

「なにしてんだ、お前」

 囲まれていた桜花に話しかける。

「ご主人様……!」

 驚いたように固まる桜花の腕を強引に引く。

「えー、なになに、二人どういう関係? ってか、ご主人様? も一緒でいいから遊ぼうよ」

 食い下がるチャラそうな男を無視して進む。

「あの、ご主人様?」

 おどおどした声が後ろから聞こえる。

「なに?」

「もう大丈夫なんですか?」

「ああ、大分な」

「それはよかったですけど、えと、かなーり嬉しい状況なんですけど、できれば繋ぐのは手と手がいいなぁ、なんて」

 遠回しに離してもいいということだろう。いつもの紅葉なら離すだけだが、うみの魔力が一歩踏み出させた。

「ふえっ!?」

 手と手を繋ぐと桜花が変な声を出す。

「ど、どうしたんですかご主人様!?」

 焦ったように早口になる桜花の視線をまともに受けれず顔をそらす。

「お前が言ったんだろ」

 ぶっきらぼうに言い放つ。

 桜花も恥ずかしそうにしながらも、いつもの調子で返す。

「もしかして、私の水着姿に見惚れちゃいました?」

「そうだな」

「えっ! えっと、えっと、興奮しちゃいました?」

「ああ」

「ふえっ! えーと、その、だ、抱きたくなりました?」

「かなり」

「!!!!!!?????? その、あ、ありがとうございます」

 いつもと違う紅葉の返答に戸惑い、けれど普段通りのふざけた調子で返すも最後には声が掻き消えるほど小さくなってしまった。

 お互い顔は真っ赤で俯いている。

 初々しい、と周りから生温かい視線を向けられていたのにすら気が付かないほど、嬉し恥ずかしかった。




 元の場所に着く頃には自然と手は離れていたが、それでも顔は熱いままだった。

「お、戻ったな。一緒だったのか」

 パラソルの下で待っていただろう雪が紅葉たちを認め、話しかける。

「ああ、まあな」

「…………そういうことか。よかったな。さて、わたしもあの二人に混ざってくるから、ゆっくりしてろ」

「あ、ああ」

 なにを察したのかそれだけ言い、少し遠くにいた海と花火の元へ行った。

 ぎこちない様子で、若干の距離を開けて座る。

「の、飲み物、適当に買っといたから、好きなの……」

「あ、はい。いただきます」

 たどたどしくお茶を受け取った桜花は、開けもせずに近くに置いておく。

 気まずい雰囲気に耐えかねた紅葉が口を開く。もとはと言えば、紅葉が夏とうみに当てられたせいなのだ。

「お、お前はいかなくていいのか?」

「は、はい。日焼け止め塗ってませんし」

「塗ればいいだろう」

 さっきのリア充を思い出して、若干声が上ずる。

「持ってきてないんです。それに、泳げないですし」

「泳がなくても遊びようはいくらでもあるだろ」

「いいんです。初めてだから何をすればいいのかもわかりませんし。こうしているのも悪くないですし」

「そ、そうか」

 会話が止まるかなと思った紅葉に桜花が話しかけたおかげで、止まることはなかった。

「ご主人様こそ、いいんですか?」

「え? ああ、俺は水着すら持ってきてないからな」

「そういえば、屋敷を探したのにありませんでしたね。でも、レンタルすればいいのに」

「人様に見せられる身体じゃないからな」

「ぷよぷよなんですか」

「ノーコメント」

 なんとかいつもの調子で軽口を叩けるぐらいにはなった。

「そもそも、ご主人様は泳げるんですか?」

「一応な。得意じゃないけど」

「じゃあ、今度、教えてくださいよ」

「その時はプールだな」

「ですね」

 そっと、桜花の手が紅葉のに重なる。

 紅葉も拒まずにいる。

 甘い沈黙が流れる

「そうだ」

「? なんですか」

 思い出したように紅葉が口を開く。

「外でまでご主人様呼びはやめてくれない。変な関係に思われる」

「私はそれでもいいですが。では、なんとお呼びすれば?」

「普通に紅葉でいいよ。それと、敬語もいらない」

「わかりました、いきなり変えるのは難しいかもしれませんが、努力してみます」

「よろしく頼むよ。桜花」

 名前で呼ぶよう心掛けてはいたが、あまり呼べていなかった桜花の名を呼ぶ。

 桜花は驚いたように紅葉を振り返り、優しい笑みで――桜顔で、

「うん、紅葉」

 とだけ言った。




「よし、イケ。もう一押し。そこで押し倒せ。岩陰に連れ込め」

「無粋だぞ、海」

「お姉ちゃん、さすがにそれは……」

「ちぇー」

 うみで遊んでいる組の三人は、いじらしい二人の様子を見守って? いた。

「ふ、ふたり、近づいたね」

「そーだねー。最初とはえらい違いだよ」

「そうなのか?」

「そうそう。もっとも、わたしが知らない時もあるけどね」

「でも、今は仲いいよね」

「なんだかんだ、好き同士だからな」

「柊君は気づくのが遅かったけどね」

「ほう。わたしの知らない二人の関係に興味がわいた」

「じゃあ、今夜女子会でもしますか!」

「い、いいね。桜花ちゃんも誘って」

「そうだな」

 邪推な企みがされているとも知らず、紅葉は甘い時間に浸っていた。

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