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別の日の帰り道。
また、とんでもないことを考えましたね。
「ああ、部活での企画のこと? まあ、いい緊張感は生まれたんじゃないかしら」
日向さんはケタケタ笑う。
今日は、的を一つだけ置き、その周りの土の上に、日向さんの制服やジャージを並べる、というものだった。そこに全員、一人ずつ矢を撃っていく。
まだまだ下手くそな一年生のためよ、と彼女は意気込んでいたが、同時に、
「もし矢を外したら、わたしの服に穴が開くからね。帰り道、下着をさらして歩きたくないから、あなたたち、気合入れなさい」
ニヤッと悪代官のような不敵な笑みを浮かべながら、ぼくたちを脅した。
一年生は縮み上がって、やめましょうよ、普通に練習したいです、などと小さい声で訴えたけれど、
「みんなを強豪にするため。今年の子たちはあまり上手くないから、今までやってこなかったことをするしかないの」
と、まるで聞く耳を持たなかった。
……後輩を厳しく育てたい、という考えは理解できるものの、困惑する年下の男を見て楽しみたい、という気もする。
おそるおそる確認すると、
「その通りね!」
ハハハ、と日向さんは腹がよじれるほど笑った。
さて、その企画の結果、彼女の服がどうなったかというと……
ぼくは日向さんが今着ている制服のポロシャツを見る。
胸の少し上あたりに、一つだけ穴が開いている。下着は見えていないが、気になって落ち着かない。
「あなたはどうやら居残り練習が必要なようね」
ぼくだけが、唯一的から大きく矢を外したのだった。
「なんなら、今から家の近くの山に道具を持っていって練習しましょうか?」
部活が終わったばかりでぼくはヘトヘトなのに、なぜか彼女はエネルギッシュな表情をしている。
クマが出るからイヤです。
3へ続きます。