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想像の世界〜自分のオリキャラになりました〜  作者: 旧天
幻想異聞奇譚 第一章 末世の北極星
98/167

1-13 願わくば

2日連続遅刻してごめんなさい


ブックマークありがとうございます。


追記

文章が抜けていたので書き足しました。

オーバーワールド


全ての元凶。巻き戻しを引き起こした張本人であり、全人類を洗脳し自分にとって都合の良い世界にしようとする特急特異点。


その目がこちらを覗いていた。


ズキ


頭に激痛が走る。頭痛とかそういうレベルでは無い。頭の中に直接金槌を叩き込まれたと錯覚するほどの激痛で意識が刈り取られそうになり倒れ込む。


人格が私へと移行して比較的楽になるが状況は超最悪から最悪に変わった程度だ。立っているのもやっとで作者視点での思考が出来なくなる。作者がダメージを受けたのは先程の消滅攻撃、街の一部を消してしまったからだろう。記憶を無理やり消された影響がダメージとなって現れたのだ。


「圭太!」


ユイさんが慌てて私の体を抱き抱えると転移魔法で別の場所に移動する。転移直前に橋とその下の川が消滅して別の景色に書き換えられていくのが一瞬だけ見えた。それを見た直後に再び激痛が走り、作者由来の痛覚が幾らか遮断されている私ですら意識を持っていかれそうになる。


さっきまで私たちがいた()の方を見ると無傷であった。


「アンダーワールドに落ちている他人の頭の中の想像の世界にまで侵入してもなお、上書きできるのか」


転移直後に優しく地面に下ろされる。視界は明滅して体の力も入らないがなんとしてでも立とうとするが、それは叶わない。


だけど焦りすぎ。(人よ)この2人がお前に(神よ)とってどれほど都合の(過去よ)悪いか確認できた。(現代よ)わざわざ本体が来た(未来よ)ということは確実に(世界よ)殺す為、ここで抹消するため!(我らを守れ!)


オーバーワールドの目と私の目が合う。


その目が怪しく輝く。太陽のように温かい光ではなく、月のように優しく照らす光でもなく、星のように導く光でもなかった。深夜の暗がりでボンヤリと光っている外灯のような光だった。


その光を浴びていたら何処か別の場所に連れていかれてしまいそうな光。人が踏み入れてはいけない領域に連れさらわれてしまいそうなうな感じがした。


その光の中に様々な光の線が走る。赤、青、黄……七色の、虹色の光だった。その光を辿ると私の前で様々な色の魔力を漂わせているユイさんがいた。膨大な魔力を右手に集中させ敵に向ける。


世界を守る最後の盾(グランド・アイギス)!」


何千、何万もの障壁が私たちと目の間に現れ怪しい光は遮られた。


だけど時間の問題。障壁は次々と書き換えられ……なんで障子紙が障壁として出ているのですか? そんなの出しても意味がない……まさかこれが書き換え?


「一度使った魔法は二度と使用できないということか!」


障壁は次々と変化していく。その障壁の後ろからユイさんが様々な魔法を放つ。攻撃は届いてはいるがダメージを与えられている様子はない。目に近づくと魔法が全て書き換えられて……。


何でユイさんはマシュマロを放っているのだろう?


「オーバーワールドの通り対世界級魔法じゃないと通用しないというわけ? 出し惜しみしている余裕はないか」


出し惜しみで勝てる相手ではないのは分かっている。相手は世界を書き換える力を持っているのだ。文字通り正面に立つことすら叶わない。今だってユイさんの障壁があるから生きているのだ。


「圭太」


声をかけられてユイさんのことを見る。険しい表情をしているのかと思いきや穏やかな顔だった。まるで大人が子どもを怖がらせないように無理矢理笑顔になるように、私を安心させるかのように。


その顔の裏に何か隠しているようで……。


「待……ッ」


俺の人格が出て激痛で意識を失いそうになるが、それでもユイを止めなければと体を動かそうとする。ユイのことは殆ど思い出していないのに止めなければいけない。そうしなければユイはーー


「大丈夫だよ」


ユイの大丈夫は信用してはいけない。大丈夫という時ほど大丈夫じゃない。思い出していないのに知っている。


ユイを止めようと手を伸ばそうとするが腕を上げることすら叶わない。体がいうことをきいてくれない。


その手をユイが握る。


「あなたに見つけてもらえて嬉しかった。色々話したいこと沢山あるけど時間がないから一言だけ……ありがとう」


ユイはそういうと()の手の甲に口付けした。その意味は分からない。だが彼女がどういう覚悟でこれから戦おうとしているのかをほんの少しだけ理解する。


「私は圭太のオリキャラになれて幸せでした」


ユイは俺の手を静かに下ろす。


「まっ……て」


「大丈夫、いつだって見守ってるから。ずっと側で見守っているから」


ユイはオーバーワールドの方に振り返ると右手を天に伸ばす。その動きが記憶の中にあるNさんに姿と重なる。否、Nがユイに似せたのだ。ルナフがNを追いかけて真似したように、Nもユイの真似をしたのだ。


「再演ノ物語」


ユイの右手から天に向かって様々な攻撃魔法が展開される。その一つ一つが覚醒者の限界を超えた威力の魔法だった。


オーバーワールドの目は俺しか見ていない為、ユイのことは視界に入れない為、彼女のことを止めようとしない。


文字通り眼中にないのだ。相手は特急特異点、ただの覚醒者の頭の中のオリキャラでしかないユイなど相手にするほど価値がないのだろう。


だけどここは俺の頭の中、現実の世界ではない。この世界においては俺が決めた設定がルールなのだ。だから覚醒者にできないことを、現実世界では不可能なことをすることができる。


彼女が出し惜しみをしないと言った。となると使う魔法は一つしかない。


だから止めたかった。その魔法を使えば間違いなくオーバーワールドに目をつけられる。


だけどこれ以外方法がないのも分かっている。自分の無力さを呪う。


「私は沖田ユイ、世界を滅ぼす敵を討ち取る七色の魔法使い!」


一つ、己を知る


ユイの魔力は人ならざるものだった。それもそのはず。七色の魔法使いなど人間の領域を超えた存在。神ですら対処できない世界の危機に立ち向かう為に存在する最後の砦。


「お前は特急特異点オーバーワールド。世界を書き換える存在、即ち今の世界を滅ぼす敵!」


二つ、相手を知る


オーバーワールドは今の俺では手も足もできない。作者である俺が守れない相手だからこそ彼女はやってきてくれたのだ。この世界を守る為に。


「ここは私たちの世界! だから私がもう一度守る!」


三つ、周りを知る


彼女はこの物語の礎となった。だがそれを覚えているのは作中ではNしかいない。自身の命をかけて守った世界なのに知っているのはNしかいなかった。活躍に見合った記録が残されていない。今回の戦いもオーバーワールドによって消え去ってしまうだろう。


それでもこの世界を守ろうとする。たとえ自分が忘れられても彼女は守ろうとする。



「私だけで倒す!」


四つ、無駄な戦闘を避ける


無駄な戦闘を避けるために、自分以外が戦わなくていいように彼女は戦う。たとえそれが自分の身を滅ぼす戦いだとしても彼女は戦う。自己犠牲の塊、そんな彼女だからこそ七色の魔法使いになったのだ。俺は七色の魔法使いをそんな性格にしたのだ。


「お前が書き換えた世界など要らない!」


五つ、相手のペースに合わせない


彼女が戦うのは今の世界が大好きだから。自分の命を犠牲にしてでも守る価値があると思っているから彼女はその魔法を使う。自分が知らない設定などに従わない。自分は自分のルールに従って生きる。


たとえ俺に止められたとしても彼女は自分の信じた道を生きる。その先に死が待っていたとしても。


「私は生きる! 例え忘れられたとしても、私の存在が空白になったとしても私の意思を継いでくれる! Nが私の意思を継いで世界を守ってくれたように、孫弟子のルナフだって継いでくれる」


六つ、生きることを最優先とする


命の火が消えても、記憶から消えても、その意思が消えることはない。名前がなくなったとしても彼女の意思は生き続ける。



「わざわざ本体が来るっていうことは、予定外のことなんじゃない? しかもたった1人の覚醒者を倒せないなんて大したこともないのね」


七つ、逃げるは恥だが敵を煽るのを忘れるな


彼女は逃げない。決して逃げてはいけない。逃げることを許されていない。最後の砦である彼女が逃げるということは敗北を意味する。



分かっている。


分かっているんだよ!


ユイがどうにかしてくれないと俺は生き延びることができないことぐらい分かっている。俺が死んだらユイやN、ルナフも消滅することぐらい分かっている。この状況を打開できる可能性を持っているのはユイしかいないのは分かっている!


ユイの犠牲無くして未来はない。


だからってそう簡単に割り切れるか!

ユイが、オリキャラが書き換えられるのに何もできない俺は……


俺は……


祈ることしかできない。

戦うどころか立ち上がることも出来ない。声を出すことも難しい俺にできることはただ祈るだけ。


ユイが無事でいてくれることを


今の状態のユイで戻ってきてくれることを


ただ祈ることすらできない。



「ユイ……」


最後まで思い出せなかった俺を許すな。


設定しか、上っ面しか思い出せなかった。ユイがどんな性格で、どんな過去があって、どんな人生を歩んだのか思い出せなかった。


そんな俺を許すな。


「どうしたの?」


俺を恨んだっていい。地べたに這いつくばって信じることしかできない俺を罵倒したっていい。


「ぶちかませ!」


それでも……こんな俺のところに戻ってきてくれ、俺のオリキャラとして戻ってきてくれ。


「ええ、見せてあげる。あなたのオリキャラの全力を、輝きを」



そしてもう一度、俺に物語を書かせてくれ。



「魔法……装填!」


私の精神がガリガリ削られていきす。


グランド・アイギスの手前のユイの台詞のルビは詠唱です。ユイは適当な言葉の裏で詠唱をします。

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