1-3 最後の願い
まさかの2日連続で評価していただいてビビっている旧天です。自分からして欲しいと書いたのにまさかしてもらえるとは思っていませんでした。
本当にありがとうございます。
ブックマークありがとうございます。
追記
過去の龍崎視点です。
「ボツの力を使う? そんなことが可能なのささ?」
そんなの不可能だ。覚醒者は覚醒したオリキャラが使っていた能力などしか使うことができない。頑張れば物語には存在しなかった派生技を使うことができるかもしれないけど、私や仲間は誰もそれすら出来ていない。かつての自分が想像した力だけ、与えられた手札のみで勝負することしかできない。
経験によって知恵を蓄えたり技術を極めることができるかもしれないが最終地点は作中の全力だから。つまり、作中のみの技術だからボツ案の力を使うことはできない。というか試した。私だって高火力の技を考えてボツにして、それを使えればと思い練習したが習得することは出来なかった。
「ふふふ、可愛いな」
その人は私の反応が気に入ったのか恍惚とした表情で私の頬に手を当てる。
「食べちゃいたい……あぁもう分かっているわよ。 そんなことしないよ。え? 代われ? 嫌だよ、リアル女侍と会話できる機会ないしあわよくば……」
獣のような目をして私の髪を掻き上げる。だがその手が止まり見えない誰かに向かってイラついたように呟いた。何をしているのかと思ったら動きを止めてしまい、数秒のちにサッと私から離れて腰を90度曲げた。
「ごめんなさい、うちの馬鹿がご迷惑をおかけいたしました。こんなのを書いたクソ作者と本人に代わって謝罪申し上げます」
何となく理解した。この人は多重人格なのだと、そう言う設定なのだろう。お互いが現実を見ることができて干渉し合うことができる。新しく現れた人格は真面目そうだ。
「遠回しに言うのは嫌いなのでストレートに言います。条件を満たせば可能です。そして私たちはその結果です」
そう言う彼女は豊満な胸に手を当てて青筋を立てる。胸に手を置いてから額に青筋を立てたのでそのことで怒っただろうとは思う。恐らく今話している人格の人は持たない側の人なんだろう。
それは置いておいて、その結果が彼女たちであると言われてもわからない。見た目でわかるわけではないから彼女が本当に手に入れたかはわからない。
だけど、新しく力を手に入れられるのなら欲しい。
「その条件は?」
聞いてみたが簡単に教えてくれるとは思えない。
覚醒者は兵器と言っても過言ではない。第三次世界大戦では各国の覚醒者同士が戦っていたのだ。第三次世界大戦は核戦争になるだろうと言われていた。初期はそうだったが直ぐに覚醒者対覚醒者になっていた。
そうなったキッカケもちゃんとある。覚醒者対海軍が勃発したが僅か数十名で艦隊を壊滅したのだ。その覚醒者を更にパワーアップさせることができる手段を教えると言うことは兵器の改良方法を教えるということ。
安易に教えられることではない。
「ボツキャラ達と出会い、力を貸してくれと頼むことです。ボツ達が了承してくれれば力になってくれます。だけどボツキャラ達、私たちが力を貸す可能性はゼロに等しいです」
私の予想に反して彼女はあっさりと教えてくれた。
だが、その内容がおかしかったし遠回しに無理とも言っている。頭の中で言葉を繰り返して意味を理解したが肝心なことは言っていない。ボツキャラ達に会うといわれても想像上の存在に会うなんて不可能だ。天災の日以前に存在しないとされているドラゴンとかに会うと言っているようなことだ。
「力を貸す可能性はゼロに等しいというけどアナタ達は何で力を貸しているのさ?」
ゼロに等しいと言っているのにその本人達が力を貸している。そうなった経緯や理由は何だろうか?
「人間ってね、死にかけの時が一番本性が出るって言われているんだ」
彼女は遠くを見るように呟いた
「私たちの作者はオーバーワールドに敗れて、全てを否定されて、死にかけていた。風が吹けば倒れそうな状態で私たちに出会った。ハッキリ言って手遅れだった。私たちは止めをさそうとしたよ。自分たちを捨てた作者がいるから復讐しようとね。死にかけだけどもっと苦しんで死んで欲しいってね。でも作者が私たちを見てこう言ったんだ
あいつを助けてくれってね」
「あいつ?」
「作者の一番のお気に入りのキャラ。そのオリキャラがオーバーワールドに奪われたんだって」
オーバーワールドに奪われた?!
聞き返そうとして口を開くが彼女に人差し指を私の口に当てられて止められる。
「死にかけているのに、自分を助けてくれではなく他人を助けてくれってね。自分に憎悪が向けて殺そうとしてくる相手に他人を助けて欲しいってね。みっともなく命乞いをするわけでもなく、逃げるわけでもなかった。自分の命以上に大切な存在が本当にいたんだって思ったよ。死の間際で願うのが他人の無事だった。それ以外にも理由はあったけど私たちは力を貸そうと、まだ死んで欲しくはないと思った」
彼女たちと作者の間にどのような話があったのかは分からない。だけどそれ以上聞いてはいけないと思った。
「勿論、全員が力を貸したわけではない。一部が力を貸そうとして作者の体に取り憑いた。ボロボロになっていた作者の精神を順番に埋め合わせてツギハギをして……完治は出来なかった。自我を保てるか保てないかぐらいまでしか治せなかった。結果的に延命治療だった。それがいつまで保つかは分からない。でも、作者の願いを叶えたい。最後ぐらい夢を見させてあげたいって」
死にかけの作者が願った最後の願い、その願いを叶えようとするオリキャラたちがいた。殺そうとしていた彼女は、彼女たちは作者の最後の願いのためにその存在となった。オーバーワールドに立ち向かうカウンターとして。
「そして出来上がったのが私たち。ボツ世界というオリキャラ達の冥界からオーバーワールドを倒すために這い上がって来た特急特異点。世界を上書きするオーバーワールドと対になる存在」
複合体の核である作者の精神が磨耗していて自我を失いかけていた。それでも最後に自分が願ったことを叶えるために、死の淵から這い上がってきた。ボツキャラの力を借りて。
故に、彼女たちはこう名乗る。
「私たちは特急特異点アンダーワールド」
これからも応援よろしくお願いします。




