松村圭太
本日2話目
ーー何でビリなんだろう?
幼稚園生の頃からだった。俺は徒競走で誰にも勝てなかった。女子にも負けるほど遅かった。
どれだけ走っても勝てなかった。
小学生になって運動会で点数が付けられるようになった。
『相手に松村がいるからビリはねえだろ』
『松村がいるから負けただろ。あいつ足遅えし』
小声で言っているつもりだっただろうが聞こえていた。
悔しかった。
だから練習した。
でも追いつけなかった。
今までビリ以外取れたことはない。
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ーー何で勝てないんだろう?
小学一年生の頃から地元の小さなサッカークラブに入った。動機は足が早くなりたかったから。サッカーはいつも走っているから足が速くなると思ったからだ。
だけどサッカーをやっているうちにサッカー自体が楽しくなった。強くなりたかった。
強いボールが蹴れなかった。
ドリブルが下手だった。
だから練習した。
上達しなかった。
『お前本当に練習しているのか?』
『何で年下に負けるんだよ』
こっちが知りたかった。
中学もサッカー部に入った。
朝練が実施された。朝練は自由参加でやる気のない奴は来なかった。強くなりたかった、試合に出たかった。
後輩と同じ時間に来て誰よりも早く練習した。
朝練に来ない、朝練に遅れてくる。午後練すらサボる奴に負けてたまるかって。
そんな奴らに負けた。レギュラーを取れなかった。ベンチにも入れなかった。
笑われた。
だから高校からはサッカーをやめた。自分より努力していない奴が上手くなるなんて不公平だ。
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ーー何で分からないんだろう?
学生だから勉強が大切だ。学力というのは将来を左右するほど重要な力だ。
だけどテストの点数が良くなかった。分からないいくら勉強しても分からない、理解できなかったことがあった。教師に尋ねても理解できなかった。
テストの点数が悪いということは成績も悪くなる。課題とかでカバーしても限界があった。
結局、自分が理解する頃にはテスト範囲から外れていた。
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ーー何で?
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ーー何で?
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『努力が足りないからだろ』
これ以上どう努力しろって言うんだ。
『努力は必ず報われる』
必ずなんて嘘だ。
『成功した人は皆努力をしている』
何で俺より努力していない奴が成功するんだよ。
『お前は努力をしていない』
結局その結論に至る。
努力していないのに上手くならない、賢くならない、速くならない。じゃあ努力していなからだろ。お前の努力は努力じゃない。お前は他の人が努力しているのに遊んでいるんだろ。
泣きたくなった。
誰も認めてくれなかった。
結局、結果が全てなのだろう。
努力しても結果を残せなくては意味がないから。
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