貴女は?
N「……言いたいことはわかるかしら?」
旧天「はい……」
お久しぶりです。毎度のことですが更新開いて申し訳ございません。大体1ヶ月半開いていましたがそれでも待って頂いてくれた方、本当にありがとうございます。
明け方公園は芝生が枯れて遊具が崩れていた。少し離れた場所にある展望台は倒壊していないが龍崎さん曰く時間の問題であるらしい。それに展望台は蜘蛛人間の縄張りとのこと。
分かってはいたがよく知る公園が荒れているのを見ると落ち込むというか、悲しくなるというか……何とも言えない気持ちだ。ここが現実ではないのは分かっているがこういう可能性もあるかもしれないのだから。
明け方公園を見渡す限り蜘蛛人間の姿が見えない。見晴らしがいいから
「現実に帰還した覚醒者が龍脈を使って強力な結界を作ってくれたのさ」
結界の境界には等間隔に丸太の杭が打ち込まれている。そして丸太と丸太の間を青白い線が走っている。丸太には解読不可能な言語、少なくとも現実で見たこともない文字で謎の文が刻まれいる。龍脈を使った半永久的な結界、私の世界でも大きな町や交通の要となる場所にあった。物語が違うから理解できない。あくまで推測だ。目の前にある結界がどれくらいの規模で稼働しているかは確認していないから不明だが公園を包むほどの大きさだとしたら町級の結界だ。それを行使者が立ち去った後も稼働し続けて壊れていないということだ。
余程優秀な魔法使い、能力者が作ったのだろう。
「これほどの規模を作るとしたら時間も労力もかかりますよ。作っている間蜘蛛人間も来ていたと思うし」
「結界を作る際には私が護衛をしていたさ。あの人がいなかったら私は落とされた時点で死んでいたさ」
「龍崎さんほどの人が?」
修行中の身であり剣士でもない私が言うのはおこがましいがイナバとの殺気の攻防、その後の一太刀を見れば達人の領域であることが窺える。蜘蛛人間相手に遅れを取るとは思わない。
「あの時は無力だったからさ。もう60年も昔の話さ。使徒にすら手も足も出なかった」
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かろうじて残っている芝生に瓦礫を積み上げて作った家があった。風が吹けば崩れそうなほど脆くドアのない小屋、雨が降れば雨漏りがしそうなほど脆弱な小屋だった。外壁には厄除けのつもりなのかお札が貼られている。巫女や神主、陰陽師の覚醒者が以前いたとしたら本当に効果があるかもしれない。
龍崎さんに促されて中に入ってみると中は薄暗い。蝋燭の火が唯一の光源であり、暖をとれる唯一の手段でもありそうだ。私は昔、牢にいたから暗いところでも目が効き、氷の魔力を持つ魔法使いであるので寒さにも強いから多少は大丈夫だけど龍崎さんは大丈夫なのだろうか? 直接言ったら失礼だと思いますが老体には厳しいのでは? でも、長年ここで暮らしているから大丈夫なのだろう。
「遅かったぜ、本体」
中では二人の人物が待っていた。二人とも知っている人だった。片方は私の姿と瓜二つで性格が全く違うエーイーリー。エーイーリーの体内にある魔力が自分の魔力と同じなのを感じることができる。設定上私たち物語では魔力は個人によって違ってくる。同じ属性でも他人とは違う。所謂DNAみたいなものだ。だから自分の魔力と同じ魔力を持つ人間がいることはあり得ない。エーイーリーは私の分身のようなものだから同じなのだ。エーイーリーもドッペルゲンガーである可能性も捨てきれませんが。
そしてもう一人の姿を見て身構えてしまった。頭の中から応答がなくなっていたNさんだったから。先程まで偽物といたからこのNさんが本物という保証はない。もしかしたら今まで出会った人物は全て幻で使徒とかもいなくてずっと騙され続けていたという可能性もある。そして今の私にそれを確認する手段はない。
だが、念の為に確認する。
「Nさん」
「……うん?」
私が疑いの眼差しを向けているのに驚いたのかNさんの反応がワンテンポ遅れる。
「貴女が本物かどうか確認するためにいくつか質問を……」
言葉が続かなかった。明らかに目の前にいるNさんの様子がおかしかった。そもそも初めに話しかけた時点でおかしかった。ワンテンポ遅れて反応するなど本来あり得ない。考え事をしていた様子はなくこちらをちゃんと見ていたのだから。目の前にいて相手のことを見ていて反応に遅れるのは少しおかしい。Nさんなら尚更だ。
私を見るNさんの目もおかしかった。鋭い眼光も、他者を威圧する殺気も、全てを見通しているような目でもなかった。それ以外にも私のことを初めて出会ったかのように観察している。まるで年相応の少女が初対面の人に警戒するかのように。
「Nさん?」
Nさんの目がキョロキョロと動き困ったように周りを見渡す。やがて意を決したかのようにこちらを見つめ返す。そして口を開いてーー
「貴女は……誰?」
理解できなかった。だがNさんの言葉はこれだけで終わらなかった。
「私は……誰?」
N「偽物、幻、その次は記憶喪失?」




