訳がわからない
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そして
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「考えるな、感じろ。誰かに従っていればお前が傷つくことはない」
私の姿をしたエーイーリーは偽Nが立っていた場所に降り立つと偉そうに腰に片手を当てながらサムズアップした。姿と声は完全に同じだ。
「エーイーリー、クリフォトの愚鈍」
「ああそうだ……!」
エーイーリーがまるで戦隊ヒーローのように側転をしながら避けるとエーイーリーがいた場所を横向きの竜巻、ハロンアークが通り過ぎていった。私と龍崎さんもこの場にいては危ないと判断しビル街へと駆け出していく。
偽Nが吹き飛ばされた先で魔法陣を展開しているのが目に入る。遠すぎて姿がよく見えないが展開された魔法陣の近くにいるだろう。彗星に吹っ飛ばされた程度でうちの師匠は倒れない。同じ肉体を持っているであろう偽Nも同様だろう。Nさんを倒せるとしたら……ダメだ、思い出している限り作中じゃ負け無しだ。弱点と呼べるものがない。とにかく今は逃げないと。
偽Nは私たちを逃さないようにハロンアークを連発してくる。間にビルが入ったことで姿を見えなくなったから適当に撃ってくる。作中のNなら魔力感知で見えないところにも正確に撃ってくる。Nさんと同じ力を持つ偽Nも同じことができるはずだが幸いにもこの空間は何故か索敵と言った感知魔法が機能しない。
そして撃って来るハロンアークはNさんの十八番、突撃魔法の流れ星と並んで作中でも使用頻度が極めて高く、魔導砲などの必殺技を除いた、いわゆる通常攻撃魔法の中では最大火力を記録している。通常の使用では対都市級の魔法だがフル詠唱をすれば対国魔法に匹敵する。そして何よりもその連射力。今みたいにビルを倒壊させるほどの単発魔法を最短4秒間隔で放つことができる。当然魔力消費は高くなるが作中のNは魔力量が馬鹿高い。無尽蔵と言ってもおかしくはない。
そんなNさんですら覆すことの出来ない欠点がハロンアークにはある。発動中動くことが出来ないこと。予備動作で必ず胸の前で手を合わせること。両足を必ず肩幅に開くこと。発動中は呼吸が不可能になること。発動を途中で止めることが出来ないこと。
「ルナフちゃん! 上」
龍崎さんに言われて慌てて身体強化を使い降ってきた瓦礫を殴り飛ばす。
「ごめん、先走った!」
「ごめんなさい、私も色々謝りたいことがありますけどこの状況を打開してからで」
龍崎さんも瓦礫を切りながら
「あのハロンアークはどうやって迎え撃てば」
「純粋に同等以上の火力で立ち向かうか、一点集中で攻撃を放って行使者を撃ち抜くか。一番現実的なのは、なるべく小さくなって防御結界を張ることです」
ゴォ
強い向かい風が突然吹き荒れ始める。ハロンアークを撃っている状況で、強い程度の向かい風。
よりによってそれを使いますか!
「フル詠唱? 違う、半詠唱!」
「半詠唱って?」
「詠唱を少し削ったやつで単純に威力が半分になるやつです」
「これが全力じゃないの?!」
「普通の覚醒者と同じならこれが限界です。使徒になってこれを余裕で超えてきます。だってこれ国を滅ぼせる魔法ですよ」
「ルナフちゃんのところ火力がおかしい!」
「それは否定できません!」
スケールが世界単位ですから!
「これはどうすれば?」
「さっきと同じです! そして私に手段はありません!不可能です」
「そう……。
なら用済みね」
龍崎さんはため息をつくと指を鳴らした。そこから水面の波紋のように光が広がっていき
突風が止み、瓦礫も全て消えていく。倒れてきていたビルも全て元どおりになり近くを通過しようとしていたハロンアークも消滅した。
「え?」
「対Nの為に情報を聞き出したかったが期待外れのようだな。あのNの弟子だから多少は知っていると思っていたが……所詮ただの覚醒者か」
私を見下すような目で龍崎さんは言った。軽蔑などではなく、弱者を見る強者というわけでもない。あれだ、蠱毒の時の貴族のように同じ人間として見ていない。
「何を……言っているんですか? さっきから訳がわからないですよ」
何で性格がいきなり変わった? 所詮ただの覚醒者ってどういうことだ。対Nってどういうことだ? そもそも偽Nさんは? 何で消えているんですか? そもそもこの世界に最初から偽物も本物のNさんはいなかった?
「だから考えるなって言ったんだ。考えて苦しむなら最初から考えるな。もっと楽に生きれるぜ」
再び私と同じ声がするとビル街を一筋の流れ星が向かって来ていた。青銀の魔力を纏いながら箒に乗ったエーイーリーが作中で私を救ったNさんのように現れ龍崎さんに突撃したが簡単に避けられてしまう。
だが避けられるのを想定していたのかすぐに反転して私の隣に浮かぶ。
「エーイーリーか、何故ここに?」
「さあな、よくわからない。だから本物の龍崎に聞け」
エーイーリーは道路の先を見る。
「先走るのは師匠と変わらない。現世を思い出すさ」
姿は全く同じな龍崎さんがゆっくりと歩いて来ていた。元からいた龍崎さんは一瞬動揺したのか驚いた顔をしてすぐに吐き捨てるように呟いた。
「生きていたか、ババア」
「久しぶりだね、イナバ」
新しく現れた龍崎さんは元からいた龍崎さんをイナバと呼んだ。
あらためまして
いつもありがとうございます。
まだ全体の四分の一どころか八分の一も進んでいませんがこれからもよろしくお願いします。
そして完結まで読んでいただけると幸いです。