竜巻と龍
《エイプリルフール過ぎているわよ》
お久しぶりです。
そしてごめんなさい
ここ1ヶ月忙しくて書けなくて駆け足になっています
2020/4/7
少しだけ加筆しました
「変だな」
「変ね」
「今まで疑問に思わなかった?」
無事一夜を超えることが出来た俺たちは予定通り公園へと向かう為線路に沿って進んでいた。龍崎さんもやることがないということで同行している。この空間に長年いる龍崎さんがついて来てもらえるのは願ったり叶ったりだ。だがその行動中にあることを思い出して2人に相談してみた。
「「お腹が空かない」」
「この領域では食料や水は一切必要ないさ」
昨日から一口も食料や飲料を摂取していない。だというのに喉が渇くこともお腹が空くこともなく排泄もしていない。この肉体は実体があるのだろうか? 実は幽霊でここはあの世なのでは? そもそもここは夢なのだろうか?
とか考えていたらキリがないから
「不思議な場所ね。まあお腹が空かないならいいよ。食料を調達する手間が」
カヒュ
「省けたしね」
Nは角から飛び出してきた蜘蛛人間を初級単発風魔法で撃ち落とす。ルナフの初級単発魔法とは魔力の効率も難易度も一緒だというのに威力が桁違いだ。それに動作に無駄がない。手を下ろした状態から相手を目に入れて西部劇の早撃ちのように魔法を放つ。
「何見てんのよ」
Nが呆れながら俺の頭を掴むと別の方向に向かせる。その時勢いが強すぎて首が曲がりそうになった。
「イタタタ!」
「あ、ごめん」
Nは慌てて放してくれたが首に痛みが残る。曲げようとするが激痛が走るので曲げることができない。
「ちょっと頭貸しな」
アン◯ンマンか!
というツッコミは心の中に留めておいて龍崎さんの方に頭を向けると両手で掴まれて強引に首を回された。何故か痛みはなかった。
手を離されたので首を振ってみたら痛みも違和感も消えていた。
「ありがとうございます」
龍崎さんの方を向くと龍崎さんは自身の手を見つめて呆然としていた。そして俺の顔を見て
「まさか……」
龍崎さんは次にNのことを見る。もう一度自身の手を見つめると
「どうしたの?」
そこから先は刹那の出来事だった
龍崎さんが抜刀しNさんに5連突きをするがNは一撃目をかろうじて避けてから数歩下がりその後の攻撃を無効化させた。
「一体、どういうことかしら?」
Nが驚きを隠さない顔で言う
「惚けなくて結構さ。あんた、オーバーワールドの使徒だね」
「「は?」」
龍崎さんの言葉にNは首を横に振る
「ルナフ、私ってオーバーワールドの使徒だったの?」
「すみません。少し確認したいです」
「ルナフまで私を疑うの?」
「いえ、幾つか疑問点がありまして。本当はもう少し証拠を集めたかったんですが龍崎さんも動き始めましたし。それに偽物かと疑ってはいましたがまさかオーバーワールド側だったとは」
Nさんが驚いて私に詰め寄るが龍崎さんが刀を向けたことで歩みを止める。
「この空間でNさんに会って私は抱きつき貴女はそれを受け入れた。本物なら間違いなく私がぶん殴られていたり蹴られていたり背負い投げされたり説教させられていたり埋められていたり往復ビンタされたります。ちょっと変ですよ。何故あのような行動をしたのですか?」
「そんな酷かったっけ? まあ、あの時はルナフを労う為にしたんだけど」
「Nさんなら説教するなり罰を与えた後に抱きしめてくれてます。洗脳の一種ですね。その後の行動も私に対して優しすぎます。優しい師匠なんてNさんじゃありません!」
Nさんは飴と鞭の使い方が優秀だ。飴しか使わないNさんなんて偽物だ。
「でもその前に使った力は貴女の知っている私の力でしょ?」
「確かにそうですね。ですがNさんは魔法の名前は叫びません。叫ぶのは作中でも強敵との死闘の後、最後の止めの時のみです。蜘蛛人間はNさんにとって強敵ではないです。何故叫んだですか?」
「それは……」
「戦いにおいて無駄なことはしない。叫ぶ時は叫ぶ必要がある難易度の魔法だから。千の風程度で叫ぶことなんてしません。それこそ魔導砲レベルでしか。それにあの局面ならNさん流れ星で私を拾い上げて逃走しますよ。 《4、無駄な戦闘は避ける》」
自分自身が言った教えを忘れてどうするんですか? 師匠なら弟子の目の前ではちゃんと教えを守ってください。私が見てないところで破るのは別に良いですから。
「そして、龍崎さんが攻撃した時にNさんは……あなたは避けた」
「そりゃ当然よ」
「ええ、避けることは問題ありません。避け方に問題があったんです。一番大事なこと忘れていませんか? 《逃げるは恥だが敵を煽るのを忘れるな》 あの場面なら、本物のNさんなら『おやおや? 奇襲のつもり? そんな遅い攻撃当たらないよ。プププ』とか言っていたはずですよ」
上げればいくらでも出てくる。
「最初から疑っていたの?」
「いえ、昨晩沖田ユイについて尋ねた時にあっさりと教えてくれた時点で違和感があって、そういえば……という感じでピースがハマっていったんです。 本物のNさんなら私の記憶にないことは簡単には教えないですし。覚醒者ってオリキャラに人格が偏ると設定に忠実になるんです。シンクロ率100%のNさんは物語通りの性格や言動しかできないんです。なのに違和感を感じるほど物語と違っていたんです」
私が蜘蛛人間と戦った時、私は設定通りの戦いをしていた。それ以外の戦い方を知らなかったというのもあるがその戦い方しか実行しようと思わなかった。
「最後に確認、あなたがNさんなら答えられますよね。私の背中の痣、一体どういう意味を持っているのか?」
「それは……」
「はい、偽物!」
「答えてないんだけど!」
「この程度の質問即答できて当たり前ですよ!」
目の前にいるNさん(?) はNさんの真似をしている誰かだとするとドッペルゲンガーみたいなものだと考えられる。じゃなきゃ我々の世界の魔法を使うことは出来ない筈だ。そして記憶も引き継いでいる。だからNさんの偽物でも知っている。
だが目の前にいる人はNさんの人格まではコピーしてない。いや、できない筈だ。だって人格までコピーしたら自分自身では無くなってしまうのだから。自分自身の人格を消すということは自殺と同じだ。そう簡単にできる訳がない。それに何かしら目的を持って成り代わるのならもとの人格じゃないと行動できない筈だ。
それを踏まえて、もしもNさんなら即答で
『教えられる訳ないでしょ』
もしくは
『それは〇〇よ』
とか言っていた筈だ。
だがNさんの偽物なら知っていてもNさんならどう答えるか思考する。
いくらNさんの記憶を持っていても真似する必要があるからそれを真似しようと考える時間が生じる。
つまり、この人は偽物だ。
「私はルナフちゃんにオーバーワールドの使徒の残り香みたいなものが付いていたからさ」
「アナタは一体、何者なんですか?」
「さっさと正体を現しなさい! オーバーワールドの使徒!」
パァァン
Nが、偽Nが両手を胸の前で合わせると風がNに集まっていく。千の風を超える魔力が、私が弩ジョウ戦で使用した魔導砲以上の魔力が偽Nから感じられた。そして展開される魔法陣を見て戦慄した。
風属性超級
対都市級の魔法
《まずい! ハロンアークだ! クッ》
「龍崎さん! それは」
「この魔法なら知っている!」
逃げることを提案しようとするが龍崎さんはNの正面に立った。龍崎さんが腰を落とすと同時に地面と空から刀へ渦を巻くように集まっていく。刀を中心に光の渦が集まっていく。
「ハロンアーク!」
偽Nが放ったのは風の螺旋、空気の螺旋、だがその直径1mほどの螺旋に竜巻と同程度のエネルギーが内包されている。ハロンアークを正面から受け止めるということは竜巻を受け止めると同じ。大気の暴力を一点に集中して放つNの必殺技の一つ。
まるでその対極に位置するように、龍崎さんは地脈、龍脈を刀だけに集中させいる。渦を巻いていた光が一際輝くと刀にとぐろを巻いている龍がいた。鋭い眼差しはまるで龍崎のようだ。
「極地、龍の咆哮」
刀を突き出すと同時に龍が顎門を開き竜巻へ、その先の偽Nへと突進していく。地響きを起こしながら、地面を割りながら、大地のエネルギーをその身に纏い向かっていく。
竜巻と龍、二つのリュウが激突する。竜巻は龍を押し退けようと、龍は竜巻を飲み込もうとする。大気と大地の衝突、まさに天変地異と表現すべきだろう。衝突したエネルギーは行き場を失い周囲に甚大な被害をもたらす。線路は千切れ、橋は崩落、地割れ、空に雷雲が集まる。どちらの攻撃も引かず相手の攻撃を飲み込もうと正面からぶつかり合う。
どちらも苦しい顔をする。技の威力は互角、となれば後は体力と気力の勝負。私が助太刀をしようにもエネルギーの暴力で立ち上がることすらできず顔を上げるので精一杯だ。
無限にも続くかと思った衝突を、その均衡を破ったのは、この場にいる者ではなかった。
「砲撃魔法! 彗星!」
氷塊が偽Nを巻き込みながら彼方へと飛んでいった。竜巻は行使者が消えたことで霧散し、行き場を失った龍は一直線にに突き進みビル群を貫いていった。
「来るのが遅えんだよ!待ちくたびれたぞ! お前本当に現世に帰る気あるのか?!」
Nを文字通り押し退けて現れたのは私が良く知る姿だった。見間違う訳がない。性格や行動は絶対別人だが私の姿をしていた。龍崎さんは新たに現れた人物を見て偽Nと相対した時以上に殺気を出す。
「久しぶりだな! 私はエーイーリー! お前の愚鈍そのものだ!」
クリフォトが現れた。
エイプリルフールネタ書きたかった
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