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第三次世界大戦

3日連続更新です


2020/3/6

一部改稿いたしました

「言い切れません」

「だろうさ。私と会った時だってNの後ろに隠れたじゃないか」


そういえばそうだったな。Nが前に出たから下がった。そうじゃないんだ。俺はNのようになりたいんだ。だったらその横に一緒に立つべきだった。


誰かに守られるわけではく、誰かを守りたいんだ。Nのように。人々の前に立って困難に立ち向かって行きたかったんだ。


私もそうだ。ずっとNさんに守られていたいわけではない。Nさんに追いついて肩を並べて戦いたい。私はNさんのようにどんな困難にも前を向いて立ち向かって行きたいんだ。


「誰かに言われたから戦うより自分なりの理由を持って戦う人の方が強い」

「それじゃあ龍崎さんは何故戦おうとしたのですか?」


俺の問いに龍崎さんは遠くを見る目をする。その顔はどこか悲しげな顔をした。


「巻き戻しが起きる以前の世界は覚醒者の出現によって世界規模のトラブルが生じて戦争が起きた」


「まさか世界大戦」


「そうさ、次第に戦闘能力がある覚醒者が徴兵されるようになり私も色んな国と戦ったさ。覚醒者の中でもそこそこの力を持っていた私は前線に投入されたのさ」


「覚醒者とは言え一般人が徴兵されるほどなんて、日本はそこまで追い込まれたんですか」


「日本に限らず世界中でそういった動きはあったさ。覚醒者の力は強力で兵士100人送るより覚醒者一人の方が強かったからね。そしてこの刀で何人もの人を斬ったさ。相手を切らねば私が殺される。私が殺されると言うことは仲間を、国を、家族を守る人が一人減るということさ」


龍崎さんが手を開いたり閉じたりするが震えている。人を斬った時の感触を、命を奪った時の感触を思い出しているのだろう。


「斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って……いくら斬っても戦争は終わらなかった。戦争が長引けば長引くほど戦友の死を見る回数も多くなる。この戦争はいつ終わるのだろうかといつも疑問に思っていた。自ら命を断つものも少なくなかった。精神を磨耗して元の人格を失って廃人になった者もいたさ。私もとっくに壊れていたかもしれない」


俺は何も言えなかった。俺はその戦争を知らない。見たこともない戦争を聞いただけでその場で戦っていた人たちになんと声をかければ良いかわからなかった。


「終戦後日本に戻ったら何もかも焼けていた。東京のビル群は無くなり首都は岐阜の方に移動していたさ。色々となくなったけど戦争が終わり新しい世の中を作り出そうと誰もが息巻いていた。だけどその新しい世に覚醒者は不要だった」

「どうして……」


どうして戦場で国を、家族を守る為に戦った人が不要になるかと聞きそうになったが気付いてしまい言葉を続けることはできなかった。


戦争が起きたきっかけとも言えることに気付いてしまった。


「戦場から戻って地元へ向かう最中に石を投げられた。小さな男の子だった。『お前たちのせいで父ちゃんも兄ちゃんも死んだ。人殺し!』って言われたさ。私が呆然としていると今度は老婆が、男が、女が次々と罵詈雑言を吐きながら私に石を投げたのさ」

「覚醒者が現れなければ戦争が起きなかった」

「そういうことさ。私はその場から逃げた。何処に行っても石を投げられた」


龍崎さんは顔を伏せる。


「私たちは一体何の為に戦ったのか、何のために戦場で散っていったのか今でもわからない。そして逃げるように旅をした。でも日本の何処にも無かった。そして旅の途中で眠っていたら世界が変わっていた」


「それが一度目の巻き戻し」


「そう、起きたら2018年の6月14日に戻っていた時は幻でも見ているのかと思ったさ。死んだはずの人が生きていて戦争があったことを覚えていなかった」


俺の知っている巻き戻しと全く同じだ。ドジョウによって東京が壊滅したことは仲間以外誰も知らなかった。


「私たちは感謝したさ。時間を巻き戻してくれた誰かに。そして私たちは、戦争を覚えていた覚醒者たちは国境を超えて手を組み戦争を回避しようとした。戦争が起きる度に巻き戻しが起きて何度目かに戦争を回避することに成功した」


「じゃあ、何故戦うのですか? それだけ聞くと戦争を止める為に巻き戻したようにしか思えないのですが」


龍崎さんは伏せたまま首を横に振った。


「巻き戻しは再び起きた。最初は新しいトラブルでも解決しようとしているのかと思っていた。だけど段々雲行きが怪しくなった。戦争を回避しようとする行動が全て裏目に出るようになった。まるで誰かが仕組んだかのように」


龍崎さんは手を強く握りしめて顔を歪めた。


「そして何度目かの第三次世界大戦が勃発した」

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