覚醒先になれないオリキャラ
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「な〜にが結果オーライだ!」
「へぶぅ」
夢の中で満足気に頷いていた沖田ユイは背後から近づいてきた巨大なドラゴンにデコピンされて吹っ飛ばされて上空を舞う。雲よりも高く打ち上げられたが様々な色の魔力を出しながら突撃魔法『流れ星』に似た何かで
「アイルビーバァァック!」
と叫びながら戻ってきた。突撃先はドラゴンの顔だったが簡単に避けられてしまう。
「痛いよ竜王、確かにいつも通り喋っちゃった私も悪かったけどど直球に言ってしまたらルナフも作者もNも死んでいたんだよ。もしも私が本題だけ話していたらそれこそ偽物だと疑われる可能性があったかもしれないじゃん! だったらいつも通り話を脱線しまくって時間ギリギリに伝えようと考えていたんだけどちょーっと計算が外れて夢から覚めちゃったんだよ。私だって真面目にやっているんだよ。それにそれにちゃんと作者は違和感に気付いてくれたし何ならその違和感も私が期待していた通りの方向に進んでくれているほら結果オーライじゃん」
ユイは涙目で悪態を吐きながら自分より大きな竜王の爪をゲシゲシと蹴る。竜王は地面に腰を下ろした状態で100m以上の高さがある。立ち上がり翼を広げたらどれほど大きくなるかは想像できない程だ。その気になれば人間など容易く潰すことができる。そんな存在を人間が目の当たりにしたら間違いなく恐怖に支配されるだろう。
「別に褒めなくても良いんだよ。私もまさかこんな感じで伝わるとは思っていなかったから。だから予想外だからってデコピンする事ないじゃん泣くよ? いくら七色の魔法使いだからって不死身じゃ無いんだから。RPGにおいて勇者一行の魔法使いってどんなステータスしていると思う? 紙装甲だよ。攻撃喰らったらすぐ死ぬキャラだよ。ましてその図体でデコピンされたら一般人だったら死ぬよ。まあ私は何重にも防御結界張っているから簡単には死なないけど」
竜王は蹴られているがサイズの違いから全くダメージが入っていない。竜王はため息をつくと蹴られて無い方の手でマシンガントークをするユイを摘み上げると自身の鼻先に乗せた。
へぶぅ
「お主は今どういう状況になっているのか理解しているのか?」
「今黙らせるために押し潰したよね! そして理解しているよ! 作者の危機=私たちの世界の危機、故に七色の魔法使いの出撃っていう状況だよね。いやーやっと私にも出番が回ってきたっていうことだね。過去編のみの登場キャラだからルナフちゃんとは直接会ったことが無いからアドバイス出来ないと思っていたけど予想外のことが起きて作者に会うことができるなんてついているね。日頃の行いのへぶぅ……。黙らせるために潰したりしないで! ちゃんと喋るの止めてって言えば私も黙るから」
「話したいことがあるからやめろ」
「私にもちゃんと耳は付いているんだから人の話も聞くよ。大体、竜王もすぐ暴力に出るとその内友達誰もいなくなっちゃうよ。私だってその内話してあげなくなるかもしれないよ。だからごめんなさいちゃんと聞いています調子に乗っていましたごめんなさいだからその口を閉じてさすがに光線吐かれたら私の障壁貫通するから無事じゃ済まないからかすり傷負うからその口閉じて!」
「まずはその口を閉じろ」
「はい」
竜王が口の前に持ってきていたユイを鼻先に戻すと彼女は大人しくなって正座して竜王を見上げた。
「まず一つ目、確かに不本意な形ではあったが伝わったから良しとする」
「ありがとうね。私もまさかこんなな形になるとは思ってはいなかったけど」
マシンガントークを始めようとしたユイを竜王はデコピンの構えをして黙らせる。
「二つ目、今回の敵は現状ルナフ達では倒せない。よって唯一干渉できるお主がサポートするのだが……大丈夫か?」
竜王が心底心配そうな顔をしてユイを見つめる。
「誰に聞いているの?」
沖田ユイは立ち上がると胸に手を当てて
「私は沖田ユイ、七色の魔法使い! あらゆる属性を操り不可能を可能にする伝説の魔女。といってもルナフちゃんの時代にはNぐらいしか私のことを知らないけどとにかくすごい魔女なんだから。たとえ現実世界に直接干渉できないとしても丸ごと救っちゃうんだから」
胸を張って宣言をする。
「そうか。では最後に一つ聞きたい」
「なになに? 何でも聞いて喋るの大好きだから何だって話ちゃうから。あ、でも流石にスリーサイズは答えられないけど学生時代の成績とかも答えちゃうよ」
「作者に一方的に話していた時何の魔法をかけた?」
「気づいていたの?」
空気が変わる。今まで軽い口調でニコニコと話していたユイだが目を細めて竜王を睨みつける。彼女の周囲には魔力が漂い竜王を威嚇するかのように渦を巻いている。
「当たり前だ。お前の常套手段だ。関係ない話をだらだらとしている内に強力な魔法を発動させる。あれだけ長い詠唱だったんだ。余程強力な魔法だったんだろ。少なくとも終末を告げる獣の時並みに詠唱が長かったぞ」
「契約魔法」
竜王の問いにユイは短く答えた。
「内容は?」
「一つ目の契約はルナフと作者が諦めた場合私が覚醒先のオリキャラになって乗っ取って囚われているNを救いオーバーワールドも倒す。または二人が闇落ちしてオーバーワールド側に着いたら乗っ取る。もしくはルナフ達がオーバーワールド達に操られたら内部から魔法で救う。それらの対価として私はそうならないようにできる限りで全力でサポートする。
二つ目の契約はルナフちゃんと作者の呪いを解く。そして呪いをかけた相手に呪いが解かれたことがばれないように細工する。その対価として私にかけられる呪いを全て肩代わりする。
三つ目の契約は意図的に消された記憶を思い出させる。その対価として私に作者の記憶を全て与える。
そして三つの契約の総合対価として二人は立ち上がり続けることを止めない」
その内容は明らかにオリキャラとしての力の範疇を超えてしまっている。ルナフとシンクロしているとはいえ相手は作者、作品の世界観を壊してしまっている。
「勝手に契約を取り付けた挙げ句その内容は呪いと同様だ」
「そうかな? 一つ目を除けば悪くない内容だと思うよ。記憶を奪うのではなく私にコピーするだけだし忘れている記憶は一度は手に入れた記憶で害のある記憶は無さそうだしね。一つ目の契約も乗っ取られないように私もサポートするからあり得ない。闇落ちはするな。諦めたらそこで人生終了。人には逃げられない時がある。それが今なだけ。ここで逃げたら全てが終わる。囚われたNは救うことはできず、本人も記憶を失い何もかも失ってしまう。それはあの二人も嫌な筈。ちゃんとやっていれば何のデメリットも無い」
相手が望んでいない契約を勝手に結び対価を勝手に徴収する。それを相手には何も伝えない。詐欺師以下の所業と言えるだろう。当事者には秘密にしておき
竜王は鼻先に乗せていたユイを軽く潰さないように小突いた。
「どう捉えるかは相手次第だ。そして作者にとって二番目にお気に入りのお主が何故覚醒先のオリキャラにならなかったのかよく分かった。作者相手にも、次元を超えて魔法をかけられること。もしも覚醒者になったら神に魔法をかけられるとでも言えるだろう。そんな奴が覚醒者になれるわけがない」
「そう、存在しているだけで世界の法則やルールがねじ曲がるような者、保有している能力が世界のルールを逸脱している者、作者以上の力を持ってしまっている者。即ち、
特急特異点の条件を初めから満たしている者」
ユイはクスリと笑うと歪な笑みを浮かべて呟いた
「私は悪い魔女だからね、特急特異点になったら何しでかすか分からないね」
へぶぅ
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作者の台詞を取るな!