クリフォトの樹
気づいている方もいると思いますが序章の前に『はじめに』を追加しました。
また、序章などを一部改稿しています。
話の流れは変わっていないので大丈夫です。
一つだけ変わったとしたら天災の日が11月と6月とバラバラになっていたので2018年6月14日に統一しました。
ブックマークありがとうございます
夜も更けてすっかり暗くなったので近くの駅員室に3人でたて篭る。Nさんが設置型の魔法陣を用いて空調を調節してくれたお陰で快適な空間となっている。魔法使いである俺たちは魔力弾を浮かべて光源の代わりにしている。
Nさんは少し離れたところで掃除用具入れに入っていたモップを魔改造している。Nさんは箒がなくても飛べるけどあったら武器にも使えるから作っている。私もモップを加工しながら龍崎さんと話している。その龍崎さんは刀の手入れをしている。
「え? 60年以上ここにいるんですか?!」
「そうだよ。ここは現実とは時間の流れが違うようでね。以前会った子は私より後に現実から落とされたけど私より先にここに来たらしいの。時空が乱れているとでもいうのかしら?」
「どういうことですか?」
「こういうことよ」
Nさんが先程みたいに空中に図を書いてくれた。
「ようやく理解できました。時系列が一致しないっていうことですね」
「そうとも言えるね」
それじゃあ今向こうに戻ったとしても現代に戻れるか保証できないのか。未来に行ってしまうかもしれないし過去に戻ってしまうかもしれないということですか。
それ以前に
「60年も……いるんですね」
「……」
60年もここにいるということはその間、脱出することが出来なかったことを意味する。
「一人だけここから脱出出来た人はいたよ」
「良かった、前例がいるんですね」
「それは本当?!」
私以上にNさんが反応した。改造していたモップを放り出すほどだった。
「クリフォなんちゃらから逃げて脱出するだとか」
「クリフォ?」
「クリフォトの樹ですか?!」
「そうそう」
Nさんは知っていないようだ。
セフィロトの樹とクリフォトの樹、ファンタジー作品に限らず様々な創作物で見かけるものだ。大体そういうものが描かれる時は神さまとか悪魔といった存在が関わってくる。
「セフィロトの樹と呼ばれるものを逆転させたようなものです。私も詳しくは知らないですけど。まず10個の丸がとその間を繋ぐ線画描いてある図で、その丸一つ一つに数字と名前と意味がるんです。
1i バチカル 無神論
2i エーイーリー 愚鈍
3i シェリダー 拒絶
4i アディシェス 無感動
5i アクゼリュス 残酷
6i カイツール 醜悪
7i ツァーカブ 色欲
8i ケムダー 貪欲
9i アィーアツブス 不安定
10i キムラヌート 物質主義
これはいくつかのグループに分けられるんですけど大雑把に1iに近づくほど虚無へ引き摺り込まれてしまうらしいです」
松村圭太の記憶からの引用だ。完全に私たちの物語を思い出したわけではないが、現状クリフォトの樹などは出てきていない。
「何で知っているの?」
Nさんが驚いてくれた。まさか師匠に教える時が来るとは。
「ファンタジー作品を書く者としては理解しようとしたのですが出来なくて名前だけ覚えた感じです。暫く見ていなかったので間違っているところもあるでしょう」
「正誤は置いておいて、なるほどね。全てとはいかなかったけど納得した。そして思い出した。ここからの脱出の仕方を」
龍崎さんは元から置いてあったホワイトボードにこう書いた。
『堕落しようとする自分に勝つ』
「さっきルナフちゃんが言った10個に打ち勝てと言っていたわ。クリフォトから逃れた先に現実がある。あの子はそうやって現実への扉を開いたわ」
いつもありがとうございます