2-22 面白い方の味方ですよ
久しぶりに予約投稿できる分書けました。
いつもありがとうございます。
「……今、私何を?」
雰囲気が一旦和らぐ。自分が何を言っていたのかわからなかったのか、私の方を向くが戸惑って何も答えられなかった。
「そうかよ、テメェの状況はわかった。沖縄も覚えていないどころか、根幹まで忘れていたとは……本当に雑魚になっちまってんのか」
ガブリエルが怒りを通り越して呆れた顔をする。
「だけど接続はあるみたいだな。探偵助手の頭脳は元からとして、メリーの能力、それに加えて切り裂きジャックといったところか……なら」
ガブリエルはニヤリと笑みを浮かべるとメガホンに口を当てる。
『悪いがゲリラライブはゲストと仲違いしたから中止だ! 悪かったな! そしてゲストども! 詫びついでに常識だけは教えてやる!』
え?
なんか急に詫びいれ始めたんだけど。
『能力の使用は朝9時から夜6時まで。四天王支給の腕章があればいつでも使える。重力の方向には気を付けろ。羅針盤を使え!』
「ガブリエル様、それを言ってしまったら、我々がここに来た理由が」
黒子が慌てて止めようとするが、ガブリエルは殴り、その場に沈める。
「あんなの嘘に決まってんだろ。そんなこともわからないのかド三流。これから死ぬんだから辞世の句でも詠め」
死ぬと聞いて私は再びアーマーを装着し始める。八葉さんもナイフだけは持つ。
「近衛朱莉、お前には関係ないがそこの八葉には関係ある話だ。『この学園は、ここの生徒は大人を受け入れない。排除しようとする。酒でも飲んどけ実年齢32歳のババァ!』」
「ちょっと! 私の年齢バラさないで!」
「32歳?」
「大人?」
「お酒?」
「寮にいた時も、なんかコーヒーとか」
何故か急に、暗闇の向こうの観客席からの声がハッキリ聞こえるようになった。
「ここは要塞学園迷宮、メガロ・ハイスクール。子どもたちの聖域。大人が侵入すれば、生徒は容赦なく潰す」
「敵?」
「闇の使者?」
「敵だ」
「倒さないと」
「やだ」
「大人になんかなりたくない」
「あるいは、子ども時代を懐かしむ大人たちの願望」
ガブリエルはメガホンを消すと。俺たちの方へと歩み寄ってくる。何故かスポットライトは固定されたままでガブリエルを追わない。
彼女は徐々に姿が変わっていき、最終的にはベレー帽を被る少女に変貌した。
《今回は同じに見える》
「八葉、一つだけ教えてやろう。沖縄は特別な事情があるのか? 学園的にはないが、お前たちにはある。それが答えだ。知りたかったら、11区まで来い」
八葉は懐から球体上の方位磁針を取り出す。中の針がクルクルと回って下方向に北を示した。
「クソ、下方向か。面倒だ、吹き飛ばすしかないか。まぁいっか、47区の破壊も同時にこなせるし」
「破壊? 沖縄を破壊するってどういうことだ!」
俺が掴み掛かろうとするが、片手で止められてまた投げられる。スポットライトから外れて暗闇の中に放り込まれて、何か得体の知れない生き物の気配がした。
「目的のために、沖縄は破壊する必要がある。生徒を殺したって、どうせ巻き戻しで生き返るしな。私もやっぱり正義はいいな、自由に力が振り回せるから♡」
ガブリエルはずっと固定されたままのスポットライト、先程までガブリエルがいた場所を手で促す。そこには悶絶している黒子がいて、その黒子の体が何故か膨張し始める。
「天災の日以降、私たち人間は想像した姿を取るようになった。大人を排除したい、あるいは大人になりたくない願望は、感情の抑制が苦手な子どもを変貌させる。加えてオーバーワールドによって、その排除の仕方が妖怪じみたものになっている」
黒子の上半身をあげると、綺麗に真ん中から割れて肉の塊が出現する。さらに膨張し、異様に長い獅子が現れ、歯のない口が開く。
俺の後ろからも肉の音がして、慌てて2人の方へと駆け寄る。
「悪趣味」
「あぁ本当に悪趣味だ。それは認める」
「治し方は?」
「ないぜ。ちなみに最後の報告では、ここには364人の生徒がいた。その分、肉饅はいる。沖縄の時のテメェらならまだしも、今の雑魚じゃ無理だな。ウケるw」
ヒタヒタと音を立てながら黒子だった肉饅はこちらへと、八葉の方へと向かってくる。
「だから全力で逃げろ! 雑魚ども!」
バサっと大きな音がすると、ガブリエルにカラスのような黒い翼が生えていた。
「それじゃあルシファーだろ」
「仕方ないだろ、名前ぐらいしか知らない時に作ったオリキャラなんだからな」
『おいガブリエル! お前何をやっている!』
突然スピーカーから怒声が聞こえてくる。
『会長〜♡ 仲間外れはしたらこうなるって分からなかったんですか〜♡ 人の心が分からないから、幼馴染取られるんですよ♪』
「なんだろう……ガブリエルに妙な既視感あると思ったら、調子乗っている時のNだ」
《うん、こんな媚びた声じゃないけど神経を逆撫でする煽り方はそっくり》
会長っていうことは生徒会長のことか? 13区、東京を担当する。
『今はそんなことどうだって良い! お前は何をやっているんだ!』
ヒタヒタ
肉饅が暗闇の中でも粘液の反射で見えるぐらい近づいてきている。
「ダメ、私のナイフじゃ」
「任せてください! ブースト!」
腕を加速させて打撃を与えるが、体質的に打撃は効かないようで、めり込むだけだ。
《相性が悪い! ブレードとかない?》
ない!
『や〜ん♡ ガチギレ会長怖〜い♡ いつもみたいにボケてください♪ そ・れ・と・も、会長ったらパンゲアを相手にできるからってキャラ忘れました?』
ガブリエルは肉饅が近付いているのに、メガホン片手に生徒会長と会話中だ。
『ガブリエル!』
『会長、私って物語がつまらないのは物書きとして許せないんですよね。特に自分が登場人物だと……っね゛!』
ガブリエルが地面を蹴り浮かび上がると翼から羽を機関銃のように打ち出す。
肉饅には自我はないようだが、痛みは自覚できるようで寄ってきていた連中が徐々に後退していく。
『八葉と大輔なんてここで潰すのは勿体無い! 美しくない! そんなシナリオ気に入らない!』
『もう良い! お前ごと潰す!』
ガガガ
地面が揺れ始める。地震なんてレベルじゃない、星が割れるかと思えるような揺れだ。
『うっわ〜♡ 校長の許可なく試験起動するなんて、やっぱり人の心のわからない生娘だね』
『黙れ! お前は誰の味方だ!』
『私は面白い方の味方ですよ。だから、もっと面白くしよっかな〜って♪ それじゃあ手の内がバレるからバイバイ。11区へ、47区の放送設備を遮断、以後別命あるまで待機』
『おい! ガブリエ』
ガブリエルの紹介
* *
「以後、別命あるまで待機」
いつになったら戻って来るんですか?
私は……ガブリエルは……寂しいと言うとでも思ったかバーカッ!
* *
こんな感じの予定でした。




