2-14 参戦
お久しぶりです。
転職活動してました。
無事次の仕事が見つかったので、これから徐々に投稿ペースを上げていきたいと思います。
いつもありがとうございます。
お待ち頂いた皆様、ありがとうございます。
コノ世界ニ大人ハ要ラナイ
消セ、消セ、大人ヲ消セ
我ラノ楽園ヲ守レ
アァ、我ラノ『青イ、青イ春』ヨ
ドウカ我ラヲ守リタマエ
神ヨ、我ラハ祈リヲ捧ゲル
ドウカ、ドウカ、我ラノノ青春ガ永遠ニ続クヨウニ
ヤガテ死後ノ世界ガ、青春トナル日マデ、我ラノ祈リハ続ク
青春ヨ、永遠トナレ
* *
世界が誰かによって上書きされても
人類が誰かの手によって操られていたとしても
自分に何も力がないとしても
私たちはこの世界で生きている。
対して、この世界は死にかけている。屋根の上から自宅の周辺を見回しただけでも、異常だというのが分かった。
まるで嵐の前の静けさのように、雨が降る前に匂いがするように、地震が来る前に動物たちが騒ぐように。
何か起きていると、何かが行われているという、何というか、嫌な予感がしたのだ。
車の通りは無く、それどころか人が歩いていない。虫の声も、夜行性の動物の息遣いも無い。
何も感じない。
ジリリリン
そんな世界に響く一本の電話。何の変哲もないスマホの着信音。元から内蔵されてあるスマホ会社が用意した呼び出し音。
いつもの音。
それすら、異常に感じられる。
スマホの画面には、千里眼を持つと言っていたイカリの名が。因果の脱出のリーダーにして、今まで何をやってきたのか全く分からない謎の人物。
恐らく彼も、既に操られているのだろう。
Nが敗れたように。アリスが手を打てないと俺に引き継いだように。
イカリも敗北したのだろう。
「もしもし、近衛です」
自分の声がやけに落ち着いていることに驚く。落ち着き過ぎて、切符売り場の自動音声のように聞こえたほど。
『もしもしイカリだよ。ごめんね、こんな時間に』
時計に針は2時を回っている。常時ならこんな時間には眠っていた。だけど、昼間のやりとりが記憶に残って眠れなかった。
「いえ、ちょうど起きていたので。何かありましたか? 松村にも八葉さんにも電話をかけず、私に電話するっていうことは特別な事情でも?」
それとも、オーバーワールドが私に狙いを定めたか? 今まで何もしていなかったから、後回しにしていたけど昼に密会をした。
そこで私は特級特異点という単語や使徒、ワンダーワールドとかの知識を得た。
『そうだね、その2人と連絡が取れないんだ』
おk
落ち着け。
なんだって?
使徒が2人とも連絡取れない?
いきなり、こちらの戦力半分落とされているんだけど。
《突然の事態に頭が追いつかない探索者。現実逃避したくなったところでSAN値チェックです》
始まったところで悪いけど、推奨技能は?
《不明。強いて言うなら聞き耳と目星かな?》
『ユリアに携帯の位置情報を探ってもらったら、どうやら松村が通っている高校の中で消えたみたいなんだ。一番近いのが近衛さんだから、様子を見てきてほしい』
そういえば大学生組は東京在住だ。それに対して私たちJK(男の娘と年齢詐欺含む)組は神奈川県。隣ではあるが、東京までは列車で1時間はかかる。
アリス、様子を見に行くけど良き?
《良いけど、ここで見に行ったら、恐らく戦いからは逃れられないよ》
アリス、私の一番のお気に入りのオリキャラ。作中最強の力を持つわけではないけど、バリスをこの世界で操縦できたらしい。
バリスは俺とアリスが住んでいた街を、外敵から守る為に建造された巨大ロボット。基本的にレーザービームとか出して攻撃し、状況によってはミサイルも放つことができる。
空は飛べない。
それでも、バリスでダメだった。
対して俺のノーネームロボットは、強化スーツで人間兵の域から出ない。
ルナフが弩ジョウに撃った、魔導砲の火力には到底及ばない。
戦力としてはカウントできない。
だったら、尚更、私たちが行くべきだ。
消えたって問題ない奴が。
そこまで自己犠牲の塊じゃないけど。
初めて松村と会った時に話していたことを思うと。
《警察署でのこと?》
* *
「俺は起きた時びっくりして夢かと思っていたんだよ。まあ、お気に入りのキャラだったからちょっと良かったけど」
そう戸惑いながらも、松村は楽しげに自分のキャラについて語り始める。
ただ、設定を語るだけじゃない。
名前に込められた意味。
将来の夢。
まるで、大好きな家族を、親友を紹介するかのように。
ルナフだけじゃなく、Nのことも。
正直、引くぐらい熱く語られた。それに負けじと、私も話していた。松村も引いていた。
大輔のこと、アリスのこと、私が想像した要塞都市のこと。
私と松村は、オリキャラたちが好きだ。
自分の物語が、そこで生きるキャラたちが好きだ。
勉強、部活、私生活よりも、物語を書くことに熱中するほど好きだ。
私たちは、なによりもオリキャラたちが好きだ。
* *
だからこそ。
だからこそNが消えた苦しみが、想像できないほど辛く悲しく苦しいことだと理解できる。全てを注ぎ込んで、大切に紡いだ物語の主人公。何度も夢見た、想像の世界の住民。
それが消えた、オーバーワールドによって。
そして、私と松村の境遇は少し似ている。
アリスが消える可能性がある。
私だって、アリスが消えるのは耐えられない。
私に戦う力はない。
だけど、戦える人を、あの3人の使徒の助けになれば。
「行きます。松村たちの助けに」
『ありがとう。和也も少ししたら送る。それまでお願い』
「了解です」
電話はブツリと途切れる。リーダーなのだから忙しいのだろう 。別れの言葉も言わずに電話を切るなんて。
《それじゃあ、私も本格的に助言をしよう。松村を支えるのは私の仕事だったから》
アリスが片足を鳴らすと、ホログラムが出現しコンピュータ群が登場する。
バリスの艦橋。
それを模した作戦本部。
《遅れてだけど、私も戦うよ。N》
助けに行くよ、松村。
大輔には、ルナフのように隠された才能とかありません。
だから、彼女が手を貸すのです。




